Ep31 Chapter“1” Scene“7” Cut“1” Take“2” セイギの執行は唐突に
「な、何モンだてめぇッ!」
「アタシ?アタシは可憐でビューティー。清純派正統ピンク系ヒロイン!多分戦隊ジャスティスファイブの“アタマピンク”。さぁ、アナタ達の“セイギ”を見せて?にへらッ」
怯える不良達は“悪夢”を思い出していた。そう、「ジャスティスファイブ」という名前と、目の前にいる“アタマピンク”の姿から、思い出したくなくても思い出さざるを得ないあの日の夜のチノイロレッドだ。
「ひ、ひえぇぇぇぇ!死にたくねぇッ」
「あ……れれ?あっれー?普通なら清純可憐なピンクちゃんを手籠めにしようと向かってくるバメンじゃない?それなのに逃げ出しちゃうなんて、超ウケる。
でも、逃してあ〜ッげないっと!」
不良達は命の危険が二度目となると、舐めプはしない。暴力に生きるモノ達は、自分以上の暴力を味わうと急に小心者になるからだ。故に、本能に従って脱兎の如く、廃墟から飛び出そうとしていた。
この中には、あの日の夜にチノイロレッドからの制裁を受けていない不良も混じってはいたが、仲間が逃げ出せば心理的には自然と足が外を向く。
しかしそんな状況をアタマピンクは愉しんでいた。鎧に阻まれて見えない、その美しい顔では舌なめずりしていた事だろう――
「セット!アタシの可愛いリボン」
――しゃららららーん
ぼわんッ――
――しゅるるるる〜
それは意思を持つ触手のように伸びる“リボン”だった。そのリボンは一人、また一人と蜘蛛の子を散らすが如くに逃げ惑う不良達を捕らえ、獲物を口に運び入れるように廃墟の中へと連れ戻していく。
連れ戻された不良達は恐怖に怯え、完全に戦意もヤる気も喪失していた――
――じゅん……
――にたぁぁぁぁぁぁぁ――
「ねぇ、アタシとヤりたいんでしょ?いいわよ?今なら事故を装ってアタシの胸を揉みしだいても、ここに顔を埋めても、何でもし放題よぉん。それにもしも、この鎧の中に、熱っつくなったモノを捩じ込んでこれるなら、拒否せず全力で感じてア・ゲ・ル。
特別大サービスでアンアン声を出してあげてもいいわぁ」
にたぁと嗤ったアタマピンクの口調は明らかに変わっていった。そればかりか声色すら別人のようだ。先程の小馬鹿にしているかのような声色から、ムワっと匂い強烈に甘ったるく媚びるように変化したソレは、死の恐怖に怯えていなければ不良達をイキり立たせていただろう。
それは偏に、彼女の高揚感から“キタ”変化なのか、はたまた演者が本当に入れ替わったかのような錯覚に陥る事くらいの変化だった。
一方で不良達は完全に恐慌状態に陥っていた。逃げ出したはずなのに、しゅるると音がした途端に身体が浮き上がり、気付けば命の危険が再び目の前に現れるのだから、どうしようもない。
ここで彼らは知る。関わってはいけない者達に関わり過ぎた……と。
「ねぇ、来ないのぉ?本当はこの鎧も一般人に使っちゃダメって言われてるけどぉ、さっき、“あの子”も言ってた通り、この世界にはスポンサーも、止めるヤツらもいないから、死なない程度に使ってア・ゲ・ル。
一般人が死んじゃったら、“この身体”に迷惑が掛かるし、“ブラック”にも怒られるからや殺らないけどね。
だから死なない程度にいっぱい、いいぃぃぃぃッぱい、感じてねぇん」
斯くしてアタマピンクは、リボンを縦横無尽に張り巡らせ、不良達と自分を閉じ込める“檻”を構築した。
それは人気のない廃墟で踊る死の舞踊。命までは取らないと宣ったアタマピンクが手加減しながら示す“セイギ”の舞踏。妖艶に艶やかにセクシーにエロティックに降り注ぐ拳の雨。
最後の一人が倒れたのは檻が出来てから五分も経っていない。そんな短い時間で絶頂に至れる程、このアタマピンクという女は生半可な肉体ではない。
「はぁ、残念。ま、期待はしてなかったけど。それにアタシもイケメン以外に興味はないの。“あの子”みたいにね。まぁ、あっちの方が悪食だけど。
それにしても良かったわね、さっきよりは顔が変形してイケメンになれたんじゃない?」
アタマピンクは山になった不良達の上に腰を掛け、皮肉を紡いでいた。彼女にとっては余興にもならなかった児戯。それも高揚感の余り、愉しめた時間は極わずか。完全に不完全燃焼だった。
「この姿になったワケだし、今日はもう少し愉しまないと損よね?どこかにいるイケメンか、可愛い子を攫ってでも愉しまないと。にたぁッ」
――ッ?! だッ――
戦隊ヒーローでありながら不遜な考えを抱いた瞬間の事。異様な気配を感じ取り、空が見える場所まで跳び上がった彼女は周囲に目を凝らしていった。だが鎧でもソレは観測出来ないようだった。
「これだけの強力な力の奔流なのに見えないなんて。この世界には面白い相手なんていないと思ってたけど、なかなか面白そうじゃなぁい。
この身体には悪いけど……ね?」
斯くして何かを探るべく、アタマピンクは再び特等席に着席したのである――
―― To the Next Scene ――




