Ep30 Chapter“1” Scene“7” Cut“1” Take“1” 安っっっっっすい挑発は唐突に
彼女は夜の街を歩いていた。ざっくりと胸元が空いたオフショルニット。風のイタズラが起これば直ぐにでも中身が見えてしまいそうな短いスカート。更にはニーハイソックスとの絶妙な“絶対領域”がすれ違う男達の理性を焼き切っていく。
彼女の桃色に染まったショートボブのふわっとした髪と、手のひらから余裕で溢れ落ちそうなバストが、歩くたびに特徴的なビートを刻む。その目は多少の吊り目だが睫毛は長く、スラッとした目鼻立ちは非常にバランスが良い。
そんな彼女に声を掛けない男はいない。欲情が迸る熱い視線でその肢体を舐め回し、鼻息荒く鼻の下を伸ばしながら誘い、ワンナイトの欲望を満たそうとしたのだろう。
その度に彼女は「ホントにウケる、マジウケる。アタシ、安いオンナじゃないし。高いオンナだし。これくらい払えるなら、考えてあげなくもないっしょ」と、馬鹿にしたような声色で、両手の指を大きく開いて掌をその男へと見せ付けていた。それで大抵の男は諦める。
しかし中には、「十万くらいなら」と太っ腹な野郎もいた。……が、「あ゛ぁ?それでいいワケないっしょ?アンタの場合は十万の十倍。アンタがイケメンなら十万でイイってコト。アンタは、鏡見てから産まれ直すくらいのレベルだし。産まれ直したら考えたげる」と、相手の心を無自覚の無慈悲にバッキバキのボッキボキに砕いていった。
しかしそんなフラレ方をすれば逆上する輩がいないハズもない。だが、肩に触れようモンなら“にたぁ”と嗤い、「正当防衛成立だしッ!にへら」と、意味深な事を宣いながら強力な金的を喰らわせていく。
男はそんなコトをされればたまったモンではない。結果、悶絶し意識が朦朧とする中、「慰謝料」と称して金銭を巻き上げられていった。だが、「慰謝料」と手を差し出す彼女はしゃがみ込んでおり、男の視線はそんな時でも一点を見詰めている。触れるほどの近くに禁断の園があるような夢見心地。
傍から見ればお金を巻き上げられ、気絶する程の悶絶状況を有する“悲劇”にしか映らない。可哀想な目に合ってるの男達だ。
それは分かるが、その顔は何故か幸せそうという“喜劇”の主演だったのかもしれない――
そんな彼女はプリプリしていた。それは男達がひっきりなしに言い寄って来るからではない。どこへ行けばいいか分からなかったからだった。
そんな絶世の美女とも言える彼女にちょっかいを掛けようとした連中がいた。
ソイツらは彼女のその脚に自分の足を引っ掛けて転ばせようと画策する。その目的は言わずとも知れた、短過ぎるスカートの“中身”だろう。
ボキッ――
不意になる鈍い音。その直後、周囲には聞くに耐えないノイズが響き渡っていく。連中はみるみるうちに色めき立っていった。
「アタシ、イケメン以外に用はないの。それにどう見ても金もなさそうなアンタらが、気安く声を掛けようとすんなし。かまってちゃんやって転ばして、スカートの中身をタダ見しようなんてマジウケるんですけどー!」
そんな安っっっっっすい挑発に、ガラの悪い不良達のどうしようもなく低い沸点では冷静でいられるハズもない。
よって、彼女の周囲を取り囲むように不良達はゾロゾロと集まって来たのだった。
「あちゃあ、人数が多いなマジウケるんですけど。それにしてもこれも全部、アイツが悪い!だから、少〜しだけ、遊んじゃっても問題ないわよね?にへら」
「このクソアマ!ダチの足を折りやがって!覚悟しやがれ!痛い目見せてやる」
普通の女性ならこれから自分の身に及ぶ危険と、今後の不安で心が圧しつぶされそうになるだろう。だが狂気の嗤いを作った彼女は違った。
頭が沸騰している不良達に今度は、自慢の胸を寄せて上げ、オフショルダーニットからはみ出さんばかりに見せびらかし色仕掛けを行ったのだ。「そんなコトよりも、アタシとヤらない?」……と。
少なくとも周りに十人近くのサカッた不良がいる。そんな若者達に輪姦されれば精神は下手すれば崩壊。極度の男性不信に陥り、正常ではいられないだろう。
不良達はそれに乗った。足を折られた仲間は、その場に置き去りにし、自分達だけいい思いをするべく、彼女を廃墟街の方へと連れていったのだった――
「へぇ、いい場所知り過ぎてた超ウケるし。じゃあいいわ。さっそくヤりましょ?」
ぱさッ――
不良達から歓声の声が漏れていった。彼女は着ているオフショルダーとミニスカートを脱ぎ始めたからだ。しかし次の瞬間にはどよめきが奔る。セクシーな下着姿とは完全に場違いなモノが、彼女のお腹にあったからだ。
「人前で見せちゃダぁメって言われてるけど、ここにスポンサーはいないから平気よね?
それにこれはれっきとした強姦未遂。セイギはどっちにあるか一目瞭然っしょ!」
――ぽちッ
次の瞬間、 しゃららららーんっと音が周囲に木霊していった。彼女のお腹の場違いなモノから流れ出た場違いな効果音である――
―― To the Next Take ――




