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ミツルとミチルとミクニとミコロ 〜 Romance Trium Regnorum et nobilis gladius 〜  作者: 硝酸塩硫化水素


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20/93

Ep19 Chapter“1” Scene“5” Cut“2” Take“1” 戦隊ヒーローは唐突に

「結局、ミチル先輩とお近付きになれませんでしたぁ。まさかこんな事になるだなんて、散々ですぅ」


 今朝の(ミコロ)登校風景は瞬く間にメガトン級爆弾の爆風のように、瞬く間に学校中に知れ渡っていた。その結果、職員室にも呼び出されるに至る。

 きっちりみっちりと担任からお説教を頂いた事実は、いくら超前向き思考(ポジティブシンキング)の塊と言える(ミコロ)にもグサリと響いた。

 だが話しはそれだけで終わらない。二度に渡る“計略”の暴発があったのだ――



 クラスに戻ればクラスメイト達が、廊下を歩けば他クラスの同学年や上級生達が、こぞって(ミコロ)に、今朝の一件を根掘り葉掘り聞いて来た。

 終いにはSNSに投稿された動画が発端で、教師連中総動員でその対応に追われる事となり、本日の授業は自習となる始末。

 これはまるで、ミチルとお近付き作戦で行った「駆虎呑狼(離間第二計)」が、(ミコロ)に意図せずその規模を大きくして“暴発”し、襲い掛かったかのようだった――



 結局この日、授業は全て失くなった。更には自習となり、今朝同様の“囲み”が(ミコロ)の周囲に形成されていったのだ。

 それでは寝落ちしてまで考えた「自分(ミコロ)流十面埋伏」が陽の目を見ない。そして次から次へとやってくる“囲み(伏兵)”はまるで「十面埋伏」の如くであり、自分でそれ(十面埋伏)を味わったかのようだった。

 因ってこれが二度目の暴発だ。



 斯くして放課後、(ミコロ)()()()()()歩いていた。その背中は丸まり、凛とした清楚な姿は微塵もない。

 視線は落ち、前を向いて歩く気力もなかった。よほど疲れていたのだろう。


 ――ドんッ

「キャッ!」


 偏に既視感(デジャヴ)というヤツだ。今朝起きた“衝突事故”と同じ展開にも思える。だが、今回ぶつかった相手は違った。


「なんだぁネェちゃん!(いて)ぇじゃねえか!」


「あ……あ……ご、ごめんなさい」


 ここは(ミコロ)の家の最寄り駅近く。下を向きながら歩いていた彼女は、駅前に()()()()()()()ガラの悪い不良達の中に無意識に突っ込んでしまったのだ。

 よって蛇に睨まれた蛙の如く(ミコロ)の足はガクガク震え、その震えは全身を揺らしていた。


「おぅネェちゃん。いい(チチ)してんじゃねぇか。そんなカッコで揺らしてるなんて、誘ってるってコトだよなぁ?」


 (ミコロ)は身体の震えを止めるべく自分を抱き締めるように腕を回したが、その事が逆に仇となっていく。


「い……イヤです。や……やめて、下さい」


 下卑た視線が(ミコロ)を舐め回し、口から()()()()()這い出た舌が(ミコロ)の恐怖を駆り立てていった。


「イヤでもなんでも構いやしねぇんだよ!いいからこっちに来いよ!それとも、ぶつかって「ごめんなさい」だけで許してもらえるなんて思ってねぇだろうなぁ?」


 脚が産まれたての小鹿のように震える。イヤラシイ視線が胸に刺さり呼吸が苦しい。周囲にいる大人達は、目を背け足早に去っていく。自分を助けてくれる人間は誰もいない。(ミコロ)の中に絶望感がひしめいていく。

 どうしよう助けて助けて、声にならない声は恐怖によって、口から先には出てこない。助けを求めなければ誰も助けてくれない。助けを求めても、誰も助けてくれないかもしれない。

 そうこうしているうちに不良の手は眼前に迫っていた――


(ミコロ)、走るのです。そこから左に。振り向かず、ただひたすら前だけを見て走るのです』


 声が聞こえた気がした。「お兄ちゃん」が教えてくれた『三国志』の中で(ミコロ)が憧れた天才軍師。その人の“声”が聞こえた気がした。


 気付けば(ミコロ)は駆け出していた。不思議と震えは止まっていた。だから()()()()()()()前を向いて一心不乱に走った――



 ――ガシッ

「いい加減に待ちやがれ!逃げられると思ってんのかぁ?」


「痛ッ!ヤメて離して!」


 暫く走ったあと、結果的にその腕を掴まれてしまった。日頃の運動不足や、二つの大きな重りが災いしたのだろう。そんな(ミコロ)は“声”を信じて走ったのに……と、絶望感に苛まれそうになっていた。

 ……が、“声”に勇気をもらった以上、ブルブル震える小鹿ではなくなっていた。だから必死に助けを求めた――



 しかし(ミコロ)が住んでいるこの周辺は、戦争の爆撃で原型を留めている家はほとんどない。だからこそ、()()()()()()()()のだ。因って、叫んだところで助けてくれる人は最初から()()()()()


「へっ!こんな()()()()()()()の場所まで逃げてくるなんざ、やっぱり誘ってたんじゃねぇか!」


「キャーーーーッ!ヤだ、ヤメてッ!」


 手を捕まれた(ミコロ)は半壊した空き家に連れ込まれ、強引に押し倒された。彼女の背中に鈍い痛みが奔り、その痛みは小さな勇気を消し飛ばすには充分だった。


「お願い……します……から。ひっくえっく……」


 ぞろぞろと集まってきた不良達の下卑た笑いが木霊していく。(ミコロ)は抵抗する勇気を完全に失っていた――



「やめないかオマエ達ッ、とうッ!」


「んだテメェは!」


「俺か?俺達は“セイギノミカタ”多分戦隊ジャスティスファイブッ!悪事はこの俺、チノイロレッドが許さないぜッ!!」


 それは場の空気感が瞬間的に冷え固まった決めゼリフだった――



 ―― To the Next Take ――

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