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ミツルとミチルとミクニとミコロ 〜 Romance Trium Regnorum et nobilis gladius 〜  作者: 硝酸塩硫化水素


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19/93

Ep18 Chapter“1” Scene“5” Cut“1” Take“1” 軽快なステップは唐突に

 ――ある日、古ぼけた神社の鳥居にぶら下がる、一人の首吊り死体が発見された――


 ――目撃者は大学生カップル。彼らは日頃から誰もいないその神社で逢瀬を重ねていた。その日もその神社の境内を勝手に使う事で、ラブホ代を浮かせようとしていた事が後の供述から明らかにされている――


 ――通報から十数分後、真っ先に臨場したのは隣町の駐在勤務、本木ハジメ巡査だった。だが、彼は臨場後、通報者はもとより鳥居にぶら下がっていたとされる首吊り死体も発見出来ず、所轄に対して「異常ナシ」とだけ報告していた――


 ――翌朝、その町を流れる川のほとりで、水死体が発見される。首には細いロープのような物で締められた痕跡があり、司法解剖の結果、死後一週間程度の経過が見られると報告があった――


 ――警察の捜査の末、容疑者として挙がったのは神社の鳥居で首吊り死体を発見し通報したカップルだった。殺人及び死体遺棄容疑で捕まったのは地元の大学生、真智(まとも)ノリトシと正門(まさかど)チエの二人――



「おいアンタ!名探偵なんだろ?オヤジから聞いてる。なぁ助けてくれるんだよなぁ?オヤジがアンタに高い金を払ってやってるんだろうから、絶対に助けてくれよッ!ここから出してくれよ?」


「えぇ確かに。そんな風に呼ばれる事もありますね。ですが、如何に名探偵と雖も神ではありません。調べてみなければ真相は闇の中です。

 それにボクは弁護士ではありません。ただの名探偵です。だから貴方から話しを聞かなければ何も始まりません」


 ここは所轄の留置場の中。容疑者として捕まったノリトシの父親が、名探偵として知られるドイル・ランポーに泣き付いたのだろう。

 しかし高圧的なノリトシの態度にドイル・ランポーは辟易としていた。


 しかし依頼があった以上、「名探偵」としての矜持を捨てるワケにはいかない。拠って留置場での面会後、ドイル・ランポーは独自に調査を進めていった。

 だが調べれば調べる程、ノリトシとチエの小悪党っぷりが明るみに出てくる。そればかりか留置場で(ノリトシ)が話していた内容が、現実と食い違う事実ばかりだった始末。


 流石に困り果てたドイル・ランポーは、立ち入り禁止(キープアウト)が解かれた神社へと足を踏み入れる事にした――



名探偵ドイル・ランポー エキハホロニナチテ殺人事件 〜後編に続く〜



『みなさんこんばんは、NEWS18のお時間です。本日は先ず、先日のSNSに投稿されたこちらの映像をご覧下さい。これは『自然科学総合高等学校』に謎の戦隊ヒーローが登場した時の映像でs――』

 ――ピッ



「あぁ面白かったー!それにしてもあのノリトシってヤツ、嫌なヤツ過ぎない?ランポーくんが困り果ててたじゃん!ランポーくんが困るくらい悪いヤツなら犯人でいいよ!いや、むしろ犯人にするべきだよッ!

 それにしてもこのアニメって、いっつもサブタイが意味不明なんだよねー。絶対(ずえったい)にタイトルバレ出来ないだろって、ミチルに対して挑戦してる気がする!

 ってそう言えば、時間ないからテレビ消しちゃったけど、さっきミチルの高校が出てたような?まぁいっか!」


 リアタイで推しアニメを見られたミチルはハッピーだった。ミチルからしたら、サブスクの恩恵でリアタイを逃しても見る事が出来るスマホの小さな画面より、テレビの大画面て見ていた方が臨場感があると思っているのだろう。

 しかし推しアニメ(ランポーくん)以外にはやはり興味がない様子だった。だから自分が通う高校の話題が流れて来ても、ニュースキャスターのセリフは耳を素通りしてどこかへと行ってしまったようである。

 蓋を開ければ自分(ミチル)に関係がないとは言えない結果なのだが、そこは「知らぬが仏、言わぬが花」というヤツだ――



 「いっけなーい!忘れてたッ!今日は違うお仕事(バイト)だったんだ!いつもの“業スムーパー”じゃないから、早めに出る予定にしてたんだー!」


 ミチルはバイト(バ先)を掛け持ちしている。メインは家から近い“業スムーパー”だがもう一軒、“ばすまいけっと”というコンビニ風スーパーにも籍を置いている。

 その割り合い的には“業スムーパー”と“ばすまいけっと”が“4:1”くらいだ。


 そんな“ばすまいけっと”は“業スムーパー”よりも少しだけ遠い。だから、推しアニメ(ランポーくん)を見てからでも余裕で間に合う“業スムーパー”とは異なり、今からの時間だと走らなきゃならなくなる。

 だが、今のミチルには「筋肉痛」という重りはない。それは小学生と同じように無限の体力を持っていた証拠だったのかはたまた、見逃した推しアニメ(ランポーくん)を(サブスクで)見る事が出来た喜びから得られた回復力だったのかは定かではない。

 だから今から走れば余裕でバイトに間に合う(バ先に着く)公算だった――



 筋肉痛という「絶望」から解放された今のミチルに怖いものはない。

 玄関を開ければ、そこは夜の帳が下りる街。軽快なステップで走り出したミチルの背中は、夜の闇に溶け込んでいくが、頭の中は推しアニメ(ランポーくん)の後編の事でいっぱいだった――



 ―― To the Next Cut ――

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