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ミツルとミチルとミクニとミコロ 〜 Romance Trium Regnorum et nobilis gladius 〜  作者: 硝酸塩硫化水素


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Ep13 Chapter“1” Scene“3” Cut“3” Take“1” 心の洗濯は唐突に

 ――あの事件から数年後——


 ――彼女達はあのあと、一度も山に挑む事はなく、誰しもが記憶の蓋を閉ざし、関わりすら断っていた――


 ――そんな彼女らは無事に卒業して、それぞれ就職。順風満帆な生活を送っていた。そこに当時のワンダーフォーゲル部の皆の元へ、不穏な手紙が送られて来たのである——


 ――『犯人に告ぐ。あの雪山でお前達が犯した非道を絶対に許さない』――


 ――その手紙を境に一人、また一人と元ワンダーフォーゲル部の変死体が発見されていった——


 ――次第に「次は自分かもしれない」と疑心暗鬼に陥ったマコトは、生き残っている二人の部員を監禁した——



「マコトどういう事!なんで監禁なんて(こんな事を)するの?」


「うるさいッ!あの時のメンバーで残ったのはもう、この三人だけ。どうせあんた達のどっちかが犯人なんでしょ?

 ミソラを殺したのもそう。なんで……なんでッ!こんな事をするのよッ!だから()られるくらいなら、いっその事、()ってやるッ!」


「待って!話し合お?話せば解決するわ」


 手足を縛られ監禁されている二人は、必死にマコトを説得しようとしている。だが完全に逆上したマコトは手に握っているナイフは二人に向けた。

 もう一刻の猶予も無かった。


「じゃあ、早く名乗り出なさいよ!「アタシが犯人です」って!」


「それは無理な言い分ではありませんか?」


「誰よッ?!」


「少なくとも、そのお二人は犯人ではありませんからね」


 今まさに凶刃が二人に襲い掛かろうとしたその時、天から降り立ったのは名探偵ドイル・ランポーその人だった。


「何を?! それじゃ、アタシが犯人だとでも言うの?」


「えぇ、間宮ミソラさんの殺害を実行したのは、妹紅(もこう)マコトさん。貴女だッ!」


「う……そ?マコトが部長(ミソラ)を?なん……で?それに、ミウやモエカまでマコトが殺したの?」


 縛られているうちの一人が声を震わせ、恐怖に怯えた目でマコトを見詰めていた。その瞳には疑念が浮かんでいる。


「それは違います。あの山以外で殺された、武藤ミウさん、御堂モエカさんのお二人は妹紅(もこう)マコトさんの手に掛かった訳ではありません。そうでしょう?向井マエさん」


 名探偵の告発に四つの驚いた瞳が向けられていく。そして、告発された本人には動揺の表情が浮かんでいた。


「アンタ何者にゃー!そもそもアンタは誰にゃー?」


「ボクは貴女達の人間関係がどんなだったのかは知りませんし、興味もありません。ただ、あの雪山で発見してしまったんです。これを」


 “にゃーにゃー言葉”を話す向井マエの質問に、自分が誰であるかを明かす事はない名探偵(ドイル・ランポー)だが、代わりにその手の内に握っていたシュラフの内張りを高々と挙げたのだった。


「オトカマーニンナー?それが一体なんだって言うのよッ!どうせ、ミソラが苦し紛れに書いただけでしょッ!」


「これは、間宮ミソラさんのシュラフの内側に書かれていたダイイングメッセージです。これを解読すると「ハンニンハマコト」になる。

 貴女達はこのメッセージが書かれていた事を知らずに下山したのでしょう?

 ちなみにあの雪山から間宮ミソラさんの遺体は下山させました。今は司法解剖で詳細な死因が判別される頃だと思いますよ」


「えっ?部長(ミソラ)の遺体が、まだ残ってたの?」


「さてここからは何故、今になってこんな事件を起こしたのか、本人(向井マエさん)に話してもらうとしましょうか?」


 ――それはミソラの死後、向井マエが間宮ミソラの日記を発見した事が起因だった。その日記には()()()()()()()()()()()()()()()()と書かれていた。だが、犯人特定には至らなかった——


 ――だからこそマエは、犯人を殺そうと決意した。だが、マエは愛おしいミソラの遺体をあの雪山に一人置いて来た事で罪悪感にも苛まれていた。その結果、あの場に居合た者達(部員)全てに殺意を向ける事にした——


 ――その後、ミソラとマエの爛れた濃厚百合関係が名探偵の口から暴かれると、マエを除く二人は目を泳がせていた――


名探偵ドイル・ランポー オトカマーニンナー殺人事件 〜 Fin 〜



「あぁ、面白かったーーーッ!やっぱランポーくんカッコ良過ぎるッ!

 それにしてもランポーくんは()()()あの雪山に行ったんだろ?でも、いつもあのカッコだったら凄過ぎじゃない?きっと、ホッカイロをたくさん持ってったんだろーねッ」


 ミチルはご満悦だ。いつの間にやら昨日の学校での「先輩(?)遭遇未遂事件」も、深夜の「リアル鬼ごっこ」も、全身を襲う「バキバキの筋肉痛」も、今のミチルの心からは綺麗さっぱり洗い流されていた。


「よぉーし、今日はもう寝る! 嫌なことは寝て全部忘れちゃお!」


 名探偵に救われたのは部員たちではなく、現実で迷子になっていたミチルの精神だったのかもしれない。

 こうして彼女は「普通の女子高生」としての平穏を取り戻し、幸せな眠りへと落ちていった。

 唯一、今回推しアニメを見る為だけにサブスク契約した事だけは覚えていなければならない事実なのだが――



 ―― To the Next Scene ――

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