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ミツルとミチルとミクニとミコロ 〜 Romance Trium Regnorum et nobilis gladius 〜  作者: 硝酸塩硫化水素


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12/93

Ep11 Chapter“1” Scene“3” Cut“1” Take“1” 完全迷子は唐突に

 ――それは三年程前に遡る。ミチルは当時14歳。

 「中学生になれば身長が伸びるはずだから」という言葉を信じて大きめの制服を買った一年後。未だにどこのサイズにも変化が見られず、自分を追い抜いていく級友(クラスメイト)達を恨めしげに見ていた、そんな中学二年生。

 そんな中である日突然、自分の両目に“違和感”を覚えた――


 ――その“違和感”を感じた瞬間、ミチルは恐れた。その“違和感”を認めてしまえば、「()()()()()()

 かつてテレビの向こう側で見た、自分たちとは異なる「力」を持った者たちの末路――


 ――それがバレたら、仲の良い友達とサヨナラしなくちゃならなくなる。そしてそうなったら、多分もう二度と会えなくなる。

 一生の別れなんてイヤだ――


 ――だからミチルは、幼い知恵を必死に絞って抗った。どうすれば一生の別れにならないか?その方法を。

 そして考え付いた。高校受験を機に県外に出て、ほとぼりが冷めたらまた戻ってくればいい――


 ――ミチルは中学三年生になり、高校受験に際して親に相談した。結果は猛反対。だからミチルは盛大に反発した。それはもう「思春期だから」で済ます事が出来ないくらいの反抗期になった――


 ――それから親とは一切連絡を取っていない。連絡を絶った両親に代わり、住む部屋を見付けてくれたのも、高校の入学金を払ってくれたのも、その制服を用意してくれたのも全部、おばあちゃんだ。

 だから尚更、「普通の高校生」としてこの学校を卒業すると決めていた――



 ―― Return to Previous Scene ――



「待ちなさあぁぁぁぁい!」


「さっき自分で言ってたじゃないですかあぁぁぁぁ」


 「全力ダッシュリアル鬼ごっこ」が始まってから、どれくらいの時間が経過しただろう。

 バイト帰りで疲れているとはいえ、捕まればどうなるか分かっているからこそ、疾走(はし)って逃げる以外の選択肢はない。

 逆にOL風の女性の執念も凄まじい。履いてるのはハイヒールにも拘わらず、全力疾走しているミチルとの距離は開いていない。これが走りに特化したスポーツシューズであれば、ミチルは難無く捕まっていたことだろう。


 そして、(見た目)小学生とOL“風”の全力ダッシュに()()()()()()()()()()()、閑静な住宅街に残響音となって()()()()()長く木霊していた――



「逃げていいなんて言ってなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁいッ」


「待てと言われて「はい」と言うなら、最初から逃げませんんんんんんんんッだ」


 完全に近所迷惑な二人である。まだ真夜中(ミッドナイト)にはなってないが、深夜帯(レイトナイト)には変わりはない。そんな時間帯に叫びながら全力疾走しているのだから、これは至って普通の通報案件であって、普通の高校生が行う事ではない。

 そしてその内容も()()()子供じみているような気がしなくもない。よって、この光景を住民が見届けてしまったら、『髪を振り乱し、小学生を追いかけ回す怪異』として都市伝説になっていたかもしれない。



「あぁ、もう!走りながらじゃ私の『近眼』が使えないじゃない!こんな事なら拘束を解くんじゃなかったわ。

 次こそは絶対に捕まえてやるんだからッ!」


 そんなこんなで第一回「全力ダッシュリアル鬼ごっこ」はミチルの勝利に終わった。途中まではいい勝負だったが、()()()()()()()差は広がりを見せ、気付けばOL風の女性の視界から、ミチルの姿は完全に消え失せていた。

 こうしてOL風の女性は負け犬の遠吠えを以て踵を返し、その姿を宵闇の中に溶け込ませていった。


「やったぁ、逃げ切れたぁ。それにしてもあぁ、疲れた。こんなに走ったの久し振りだぁ。

 ってか、ここはどこ?わたしはミチル!ってそうじゃない!どうしよ?ミチル、ここから家まで無事に帰れるかなぁ?」


 方向も考えずに爆走していたミチルは、気付けば完全なる「迷子」になっていた。これが長年住んでいる地元であれば、電信柱に書いてある地名やら、風変わりな建物をランドマークにして家路につく事は可能だろう。しかし、ミチルは“地元民二年生”だ。

 日頃から自宅と学校、自宅と“業スムーパー”の往復しかして来ていない。


 更に今が昼間なら、遠くの空に目立つ建物を発見出来たかもしれないが、今はもう真夜中(ミッドナイト)に片足を突っ込んだ深夜(レイトナイト)。いくら見回してみても、空に輝く星と月以外に光っている灯りはない。

 そう、この周辺の住居に灯りは点っていない。いくら閑静な住宅街とは言っても、大抵一軒くらいは煌煌とした明かりが(とも)っていてもおかしくはない。しかしここにはそれ(灯り)が一切ない。


 不思議な感覚と底知れぬ孤独に囚われながらも、ミチルは自分のスマホを取り出し、“gougle(ゴウグル)”マップを手慣れた感じで開いていく。そして、()()()()()()自宅までの経路を検索。

 ()()()()()家路を急いだのである。


「やっぱり迷子になったら“gougle(ゴウグル)”先生がイっチバン!」


 斯くして日付が変わる頃、彼女はようやく「普通」の拠点である自宅へと帰り着いたのだった――



 ―― To the Next Cut ――

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