79 後悔なのか、本気なのか (1)
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い、言ってしまった・・・。
よそ様の、それもお庭で・・・。
本来ならこんな大事な話、お座敷できちんと正座して話すべき重要案件なのに!
本気?本気だったの?
本当に本気だったのか、わたしは!?
どうしよう
とんでもないことを言ってしまった気がする
一時的な感情で言ってしまったのではないか?
もっとよく考えるべきだったのでは?!
きっと雰囲気にのまれて気持ちがたかぶっただけだったんだ!
そんな時ほど冷静に落ち着いていったん一歩引いてから物事を考えなくてはいけないのに!
どうしよう、
後悔の波が押し寄せている・・・
溺れそうな気分だが今ならまだ間に合う・・!
『引き返すなら今だぞ』と誰かが囁いている。
「組長先生、あの!」
「そうか!決めてくれたか!嬉しいぜ!こりゃ目出てえじゃねぇか!!祝いだ祝い!!」
「え、あ、組長先生・・」
組長先生はわたしの両手を握って力の限り上下にぶんぶん振っている。
空に飛ばされそうな勢いだ。
「京司朗!京司朗!!」
大声で若頭を呼びつける。
若頭が急いでこちらに駆けつけた。
「どうしましたか、会長?」
「弁護士によ、例の手続き進めてくれって伝えてくれ」
「わかりました」
「手続き・・って」
「なーに、お前は心配することはねえ。こっちで全部やるからよ。ああ、そうだ部屋は藤の間をしばらくそのまま使ってくれ。何回か使ってるから慣れてて安心だろう?そのあとでまた別の部屋をみてまわろうな。好きな部屋があったらそっちにしよう。必要なもんがあったら何でも言ってくれよ。そうだ黒岩に電話していまから」
「く、組長先生・・・」
あわわわわわわわ
組長先生のテンションが高くて止めようがない
一体どうすれば・・!
「まあ、会長、そんな矢継ぎ早に・・。みふゆちゃんの目が回ってしまいますよ。少し落ち着いてくださいな」
楚々とした 胡蝶さんが組長先生に声をかけた。組長先生にあんな風に睨まれても全く萎縮しない胡蝶さんの精神性が羨ましい。
「俺はいつだって落ち着いてるぜ。でもよ、やっと俺に娘ができたんだ。嬉しいじゃねえか!なあ!みふゆ!」
「は、・・はい・・・」
だめだ、今さらもう少し考えたいなんて言えない
「お前の両親にも挨拶に行かねえとなぁ。墓はどこにあるんだ?」
「あい、さつ・・?」
「親御さんの青木の名から惣領に変えさせちまうのは俺だ。たとえこの世にいなくても、けじめはつけなきゃなんねえからな」
「・・あの・・・、無いんです、お墓・・・」
「・・無い?」
「母が・・作らないって。うちは共同墓地なんです」
「共同墓地?」
う、なんか注目浴びてる?
やっぱりドン引き・・?
「はい、・・遺骨を粉砕して土に返す共同墓地があって、そこに・・。母は自分が亡くなった時も同じようしてくれって言ってたので同じにしました」
「・・・そうか、まあ、考え方は色々あるわな。それじゃあ、その共同墓地に一緒に報告に行くぞ。な?」
組長先生の手がわたしの頭を撫でた。
胡蝶さんがクスクス笑いながら、
「さあ、それじゃあバラを選びましょう。移植は冬の休眠期ですから、いま実際咲いてる花を見て選べばイメージもつきやすいわ。台風で散ってしまったのもあるけれど、まだまだ美しく咲いてましてよ。ベルばらのオスカル・フランソワやアンドレ・グランディエもあるのよ」
と言った。
「ほんとですか?!」
ベルばらシリーズはいつか見たいと思っていたバラだったが・・。
「ええ、この前は全部をお見せできなかったわね。ハウスにあるわ。さあ、どうぞ」
わたしは胡蝶さんに招かれバラのハウスに向かった。
バラ選び楽しみにしてたのに、考え無しの自分のせいで、心に暗い陰が落ちてしまった。
口にしてしまった言葉はもう引っ込めることはできない。
責任はとらなくてはいけない。
「会長、佐藤先生が直接話したいと言っています」
若頭が組長先生に電話を渡した。組長先生は受け取りながら、わたしと胡蝶さんに「先に行っててくれ」と言った。
「おー!佐藤先生よ、手続きは全部任せるぜ。あと必要な・・・」
組長先生の話し声が途中まで聞こえた。
わたしは後ろを振り返った。
動き出してしまった。
人生を大きく左右する事柄が。
わたしのせいで。




