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番外編 プレゼント 5

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惣領家門前━━━━


一台の黒のベンツが止まっている。後部席窓が開いており、車中の男に常駐組を統率している瀬尾が応対している。

「申し訳ありませんが、ご予定に無い場合はお通しできません」

瀬尾が表情無く言うと、

「本当はもっと早く持ってくるはずだったんだが、帰国の予定が遅れて今日になってしまってね。この土産は急いだ方がいいと思って立ち寄ったんだが。そうか、急ぐあまり連絡を怠ってしまっていたな」

と、後部席の男、北山組組長の北山武が言った。

瀬尾は話しの内容に違和感を持ち、「失礼ですが、会長か代表を訪ねておいでになられたのでは?」と北山に尋ねた。



リビングでは海斗が訪問者の北山の解説を始めていた。


「北山組長は牧会長の柏槙会(びゃくしんかい)側の人だよ。柏槙会の金庫番って言われてる。温厚な人で娘さんがドイツで結婚して住んでて、たしかドイツに行ってたはずだ」


「金庫番って、すごく頭がよさそう」

みふゆが感心していると、

「実際すげー頭のいい人だよ。俺、数学の勉強見てもらったことあってさ、あの人に教えてもらうと数学の点数上がるんだ。教え方がうまいんだよね」

永斗がクッキーを空中に放ってパクリと食べた。

「ああ、あの点数悪すぎてかーちゃんに叱られて泣いたやつか」

山斗がからかい気味に暴露すると、

「泣いてねーよ!!」

と永斗がムキになって反論した。

「でもあの人が連絡もせずに突然来るってめずらしいな。いつもキッチリしてるのに。会長か京にぃに会いにきたんだろ?」

海斗が戸口で警護にあたっている御園尾に尋ねると、

「なんか土産を持ってきたとか言ってましたけど」

「土産??」

海斗が聞き返した。

「・・・土産・・・。・・・・・あーーーっ!!俺だ!!」

永斗が突然叫んで立ちあがり、猛スピードでリビングから出て行った。


永斗は先週、北山と約束をしていた。

北山は成田空港に向かう途中永斗に会い、ドイツに行くことを告げていた。そして永斗は土産を頼んだのだ。帰国したら届けに行くと北山は言った。

永斗はそのことをすっかり忘れて誰にも教えていなかった。 



永斗は報告を忘れていたことを、奈良から帰ってきた貴之と父の黒岩正吾にこっぴどく怒られ、けっきょく貴之の剣の稽古を受けることになってしまったのだった。


「永斗!今度同じことを繰り返したらこんなもんじゃすまねえぞ!!わかったか!!」

貴之の怒鳴り声が道場に響いた。

わずかな行き違いが命に関わる。それが惣領家なのだから。


ヘトヘトになって倒れた永斗は、

━━━こんなもんって・・まだこの上があるのかよ

と思ってゾッとした。


倒れて動けない永斗のもとに、海斗が近寄った。

海斗はしゃがんで、

「会長に挑む願いが叶ってよかったなあ、永斗」

と静かに言った。




翌日、クリスマスイブ。朝から断続的に雪がちらつき、今年はホワイトクリスマスだ。


北山がドイツから買ってきてくれたお土産は、クリスマスツリーのオーナメントだ。日本では売ってないものもあり、みふゆと楓は喜んでツリーに加えた。


「うちはクリスマスプレゼントのやりとりはしないだろ?でも今年はみふゆさんが家族になったし、何かちょっといつもと違うクリスマスにしたいなって思ってサ」

永斗が新たに追加されたクリスマスオーナメントのサンタを突っついた。

「その割には忘れてたってどーゆーことだよ」

海斗が指摘した。

「永斗は鳥頭だからしょーがないんだよ」

山斗が答えた。

「だからさー!」

永斗が言い訳に走る。


兄弟のやりとりが微笑ましい。そして永斗の気持ちが嬉しい。


兄と弟におちょくられていじける永斗に、

「永斗君、ありがとう。すごく嬉しい」

と、みふゆが言うと、永斗は「うん」と照れ笑いをした。


新しい家族と過ごす初めてのクリスマスだ。

京司朗がいないのが残念だが、今夜は松田一家も来る。にぎやかなクリスマスになるだろう。 



午後六時、食事の準備が始まった。

大皿に盛られた料理が次々と運ばれてくる。どれも豪華だ。


貴之がいつもの席で、「七面鳥の丸焼きもでるぞ」と教えてくれた。


みふゆは七面鳥が初めてだ。今までの一人のクリスマスはケンタッキーかスーパーのフライドチキンだった。

ケーキは母の礼夏が好きだったチーズケーキとチョコレートケーキを買って仏壇に供えてから食べていた。


「ケーキは最後のお楽しみだ」

貴之が言った。


「今年はどんなケーキかしらね」

胡蝶が淑やかに微笑んだ。

「イチゴのデコレーションは定番だろ?」

海斗が言った。

「私、ブランデーケーキを頼んだわよ」

楓が言った。

「俺もなんか頼めばよかったなー」

隆聖が言うと、隣の松田家次男誠矢が

「僕は頼んだよ。オレンジタルト」

と、すました顔で言った。

「お前、いつの間に!?」

黒岩三兄弟と隆聖が声をあげた。



「さあ、七面鳥が焼けましたよ」

本橋の声がして、七面鳥を持った厨房スタッフが現れた。七面鳥用のソースも一緒だ。


テーブルの上に並べられる七面鳥。

人数が多いからか3羽の七面鳥が並べられた。


「すごい、3羽も?!」

みふゆが驚いていると、


「いや、4羽だ」


聞き慣れた声がしてみふゆは開けっぱなしのドアを見た。


京司朗がいた。 


みふゆは目を見開いた。幻かと思って目をパチパチさせた。


「間に合ったな」

貴之がみふゆを見てニヤリと笑った。


「仕事は・・」

まだ信じられない様子のみふゆに京司朗は

「正月明けに変更になったんだ」

と答えた。


「きっと神様の粋な計らいね。だって結婚最初のクリスマスなんだもの!」

楓が明るく言うと、胡蝶が

「さあ、七面鳥を切り分けてくださいな。家長の仕事ですわよ」

と淑やかに男達に号令をかけた。


食後は、チーズケーキ、オレンジタルト、ブランデーケーキ、定番・イチゴのデコレーションケーキがホールで登場した。みふゆはチーズケーキとオレンジタルトをもらい、さすが京司朗のレシピは絶品!と、心で賛辞した。みふゆの心を読んだかのように京司朗は微笑んでいる。


楽しいクリスマスイブの夜だった。






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