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遥か東より来た騎士7

なるほど、これは単純なようでいて奥が深い。馬場に大の字になって青空に浮かぶ雲を眺めながら、ヨシタカ卿は思った。メローラとローランが駆け寄ってくる。

「ヨシタカ卿!」

「大事ない」

メローラの差し出した手を掴み、ヨシタカ卿が身を起こす。馬首を巡らせて戻って来たガレス卿が、兜を脱いで言った。

「これで1試合が終わりです。どこを突けば相手のバランスを崩せるか、瞬時に見極めるのが肝要です」

ヨシタカ卿は既に3度、ガレス卿によって馬から突き落とされていた。3回勝負で、選手の間を仕切る直線の柵に沿って馬を走らせる。すれ違いざまにランスで相手を突き落とせば加点。ランスを折ったり、相手の盾以外の部分を突いたり、馬を減速させたら減点。馬を減速させると減点されるのは、互いの馬の突進力を利用して相手を突き落とすからであった。確かにランスを持ち続けるだけの腕力は必要ではあるが、人間の腕力など馬の突進力には及ぶべくもなく、ランスを通して馬の突進力をうまく相手にぶつける技術が重要なように思われた。

「これはランスの替えがたくさん必要な競技ですな」

「ええ。ですので、今朝お持ちしたわけです」

相手を突き殺すことがないよう、競技用のランスは折れやすく作ってあった。だがそれでも、重い甲冑をまとって落馬すれば骨折、打ち所が悪ければ死ぬこともあったし、過去には折れたランスの破片が兜に入り込み、目に刺さって死んだ騎士もいるということだった。

「ご配慮感謝いたします」

「どういたしまして。しかし、筋はよろしいようですよ。3度目は、私もバランスを崩しましたから」

「いやいや」

口では謙遜したヨシタカ卿ではあったが、確かに手応えを感じていた。世界を旅してわかったのは、自分より体の大きな者など山ほどいるということである。畢竟、小兵が大男と渡り合うには技術を磨くしかないのだ。力任せでなく、突き落とす技が重要な馬上槍試合は、ヨシタカ卿向きであった。

「もう一手ご指南いただけますか」

「ええ、一手と言わず何度でも。妹を預ける騎士には強くあっていただきたいですからね」

望むところとばかりにヨシタカ卿が笑みを浮かべる。こうしてブリテン有数の騎士から直接武技を習うことができるとは、望外の幸運であった。

「がんばってください」

心配げに見つめながら騎乗を手伝うメローラが、ずいぶんかわいらしく見える。

「任せておけ」

エレンからランスを受け取り、スタートラインへ馬を寄せる。次こそは! 馬に拍車を掛けながら、血が滾るのを感じていた。

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