遥か東より来た騎士2
夜になって宴が始まった。多くの騎士が冒険へ出ていたが、それでもキャメロット城には100人近い騎士や貴婦人が集まっている。ワインや豪華な肉料理が振る舞われる中、歓談の中心はやはりガーエリス卿とヨシタカ卿であった。
「……そこで私は百騎王の騎士4人に取り囲まれました。どうにか包囲を切り抜け、1人打ち倒したところまでは覚えているのですが……そこから先はヨシタカ卿に語っていただきましょう」
ガーエリス卿の冒険譚を、ヨシタカ卿が引き継いだ。
「私が馬を進めていると、ガーエリス卿がお話しされていた通り、4人に囲まれた卿が1人を打ち倒したのが遠目に見えました。しかし、直後に卿は後ろから頭を一撃されたのです」
ヨシタカ卿の言葉に、周囲がおお、とどよめいた。なんと卑怯な。
「その瞬間、私はガーエリス卿に味方することに決め、馬に拍車を掛けたのです。首こそ落とされなかったものの、ガーエリス卿は気を失われたのか、落馬されました。そこへ卑怯者の1人が近づいていきましたが、まだ私の剣はおろか声も届く距離ではありません。そこで私は弓で射倒しました」
ほう、馬上から弓で、と驚きの声。
「残る2人は私の方へ向き直ると、弓を警戒して盾を構えました。その間に私は間合いを詰め、名乗りを上げたのです。しかし、敵は見慣れぬ私の姿を見て侮ったのか、名乗ることをしませんでした。卑怯なうえに礼儀も知らぬとあっては、最早遠慮する理由もありません。生憎私には従騎士がおらず槍の持ち合わせもありませんでしたが、不幸中の幸い、敵の得物は槍ではなく剣でしたので、私も刀で相手をすることにしたのです」
カタナ?という貴婦人たちの疑問に、私の国では片刃の剣のことを刀と呼ぶのです、とヨシタカ卿が付け加えた。
「敵は戦い慣れていたようで、特に合図しあうでなく私を挟み込もうとしました。背後から襲われては私に勝ち目はありません。そこで私もさらに敵を囲むように回り込み、一時的に一対一の状況を作りました。そうして、1騎ずつ倒して行ったのです」
戦いのくだりが語られ終わると、おおーという称賛とともに、拍手が巻き起こった。
「その後、私はガーエリス卿の従者に命じて卿の手当てをさせました。幸い、すぐに卿は気付かれました」
ヨシタカ卿が視線を送ると、ガーエリス卿が話を引き取った。
「かくして私はお礼をすべく、ヨシタカ卿をキャメロットにお連れしたというわけです。どうか皆さん、私のためにもヨシタカ卿をよしなにお願い申し上げます」
ガーエリス卿の言葉に、一度は収まった拍手が再び大きくなった。
「あいわかった。そういう事情であればヨシタカ卿をもてなさぬわけにはいくまい。どうか好きなだけここへ留まってほしい。それにもし必要な物があれば、何でも提供しよう」
拍手を手で制して王が言うと、ヨシタカ卿が答えた。
「ありがとうございます、王よ。では1つだけお願いがございます」
「何か」
「どうか私がこの地を旅することをお許しください。武芸の腕を磨くことが、私の望みにございますれば」
「許すも許さぬもない、もとより旅人を縛る法など私は持たぬ」
「ありがとうございます」
「では再度乾杯といこうか!」
宮廷道化師のダゴネット卿が叫ぶと、皆が盃を掲げる。
「ガーエリス卿の無事とブリテンに!」
「ガーエリス卿の無事とブリテンに!」
王の言葉を皆が唱和し、宴が再開された。




