遥か東より来た騎士17
トマスグリーン村への道中、ヨシタカ卿がメローラに訊ねた。
「オークニー一族とラムロック卿の間には、何かわだかまりがあるのか?」
ローランとエレンが気まずそうに視線を合わせる。
「そうですね……私たちの父、ロット王は、ラムロック卿のお父上であるペリノア王と戦って死んでしまったのです」
「……なるほど」
「とはいえ、父とペリノア王はいがみ合っていたというわけではなく、馬上槍試合の結果だったと聞いています。私は幼かったので、覚えていないのですが」
「ロット王とペリノア王は、集団戦の中、馬を降りて一騎打ちされたと聞いています。剣は刃引きしてあったのですが、ペリノア王の剣がロット王の兜を強く打ったと」
エレンが口を挟んだ。
「それは事故ではないのか?」
「はい。ですから、父の記憶が薄い私やモードレッド、養子に出されていたガレスはさほど恨みには思っていないのです。ですが、アグラヴェインたちは割り切れないようで……」
「ペリノア王がガウェイン卿たちとの対戦を避けているのもご不興の一因なのです」
ローランが付け加える。
「気持ちはわからんでもないが……うまくいかんものだな」
「はい……加えて、ラムロック卿はその……お父上のことを詫びて慰めるうちに、母と想い合う仲になったようで……それがまた兄たちの怒りに油を注いでいるのです」
「……失礼ながら、ガウェイン卿のお歳からするに、モルゴース妃はそれなりにお歳を召しておられるのでは?」
「はい……ただ母は妖精の血を引いておりますので、見た目は大変若々しいのです」
「妖精?」
「はい。なぜ私が魔法の紐を使えるのかとお訊きになりましたね。それは、私にも妖精の血が流れているからなのです」
言葉を失うヨシタカ卿。
「母の母、つまり私の祖母に当たるイグレーヌ妃は、妖精との取り替え子だったのです。妖精であるイグレーヌ妃は大変美しく、コーンウォール公ゴルロイスのみならず、イングランド王ユーサーをも虜にしました。妖精には魔法の力が備わっており、愛する者に加護を与えます。イグレーヌ妃の御子であるアーサー王は魔法の剣と鞘をお持ちですし、ガウェインは母が作った力を3倍にする帯を持っています。やはり取り替え子として妖精に育てられたランスロット卿や、母の恋人となったラムロック卿も、何らかの加護を受けた品をお持ちなのではと思っています」
「つまり強さの源は、妖精の力なのか」
「もちろん、魔法の品がなくても十二分に力をお持ちなのでしょう。でなければ妖精たちは愛しませんから」
ヨシタカ卿が深く息を吐いた。
「そなたも魔法の品を作れるのか?」
「どうでしょうか……。私は人の血の方が濃いですから、先ほどのように魔法の力を引き出すのが精一杯な気がします」
「ふうむ」
「どうか今の話は胸の内に仕舞っておいてください。他人に吹聴することでもありませんので」
「あいわかった」
そうこうするうちに、トマスグリーンの村が見えて来た。




