遥か東より来た騎士12
キャメロットを出立してから四半刻余り。ヨシタカ卿たち巨人討伐隊8名は、トマスグリーン村間近までやって来た。
「あれがトマスグリーン村かと」
メローラの言葉に頷くと、ヨシタカ卿は馬の脚を止めた。
「火の手が上がっている様子はないな」
「私が中を見て参りましょう」
「重々気を付けるのだぞ」
こうして斥候に出したローランが、間もなく戻って来た。
「巨人はいませんでした。村人によると、南へ去ったそうです」
「南へ? 巣にでも戻ったのか」
「いや、南にはペルシーの町がある」
「近いのですか?」
「巨人の足であればそうかからぬはずだ」
ヨシタカ卿の質問に、眉をしかめてラムロック卿が答えた。
「では急いで巨人を追わねば!」
「うむ。だが神のご加護があったかもしれぬ」
「どういうことです?」
「ここから南は開けていてな。8騎で戦うには村は狭過ぎるが、平野となれば話は別だ」
「なるほど! では参りましょう!」
こちらです、と先導するローランに付いて、集落の中へ入る。壁が破れたり屋根が陥没した家、倒れた柵、加えて、ところどころに血の跡が見えた。それを目にしたメローラが眉をひそめる。
「犠牲者が出たのでしょうか……」
「人の味を覚えたとなると面倒なことになるな。村長! 村長はおるか!」
村の広場でラムロック卿が声を張り上げると、老年の男が姿を現した。
「はい、騎士様、ここに」
「みどもはアーサー王より遣わされし騎士、ラムロックと申す者。火急の任ゆえ、馬上からの無礼を許されたい」
「ははっ、ご高名はかねがね耳にしております」
「して村長、誰ぞ神の御許へ召された者などあったのか?」
「いいえ、騎士様、村人は皆首尾よく逃げましたので、食われたのは繋いでおいた家畜だけでした」
それを聞いて、メローラの表情が少し晴れる。
「そうか、それは不幸中の幸いであった。これは王よりの見舞金である。不幸のあった者で分け合い、余った分は教会へ寄進するがよい」
ラムロック卿が、腰に下げていた革袋を村長に渡して言った。
「慈悲深き王に神の御恵みがありますように……!」
感極まった様子で村長が革袋を捧げ持つ。
「巨人が去ってよりどれほど経ちますか?」
ヨシタカ卿が訊ねる。
「四半刻も過ぎておらぬと思います。恐らく馬の脚であればすぐに追いつけるかと」
村長の答えを聞いて、ヨシタカ卿とラムロック卿は頷き合った。
「では我らは巨人を追います。これにて御免!」
騎士たちは、巨人の後を追い始めた。




