遥か東より来た騎士11
ヨシタカ卿、ラムロック卿、ガレス卿は、それぞれ3名ずつ従騎士を従えていた。つまり総勢12騎の騎馬隊が、土煙を上げて西へと駆けて行く。やがて目的地のトマスグリーンまで半分も来たかというところで、道に人が倒れているのが見えた。
「あれはもしやトマスグリーンの者では?」
「確かめた方がよさそうだな」
ヨシタカ卿とラムロック卿が手綱を絞るのに合わせ、皆が速度を落とす。行き倒れの様子を確かめようと、他の従騎士に先んじてメローラが馬を降りた。
「もし、大丈夫ですか」
「おお、お優しいですな、メローラ王女」
「えっ」
名前を呼ばれて驚くメローラ。
「そう驚かれずともよろしい」
むくりと起き上がったのは老年の男だった。
「……地べたに這いつくばって何をしておるのだ、マーリン」
ラムロック卿が怪訝そうに眉をしかめた。
「なに、ガレス卿をお引き留めするにはこうするのが最善かと思いましてな」
マーリンと呼ばれた老人が、衣に付いた土を払いつつ答えた。
「私を引き留めるとはどういうことです?」
「卿らの兄君、アグラヴェイン卿が、ここから北に10リーグほど進んだリンドウェルに囚われております。助けに行かれた方がよろしいでしょう」
「なぜそのようなことに!」
メローラが驚きの声を上げる。
「アグラヴェイン卿は、ガーエリス卿探索に疲労困憊して帰って来たところを強盗騎士どもに襲われたのですな」
「なんということだ! しかし、それならばガーエリスに助けに行かせればよいのでは? 兄はまだ城におりましょう」
「助けに行って虜囚を増やしては仕方がありますまい」
ガレス卿が天を仰ぐ。
「それに、ご自分が囚われている間にガレス卿がラムロック卿との冒険に興じていたと後々アグラヴェイン卿に知れますと、いささかよろしくないことになりますのでな」
ガレス卿が眉を寄せて深く息を吐いた。
「行かれよ、ガレス卿」
ラムロック卿が短く言った。
「しかし、王命を差し置いて行くなどと」
「王はご存知なかったのであろう。ご存じであれば卿にはアグラヴェイン卿救出をお命じになったはずだ」
マーリンが頷いた。
「わかりました。では兄を救い出したらすぐに戻って参ります」
「我らの方が加勢に参じることになるかもしれませんぞ」
ヨシタカ卿がにやりとすると、ガレス卿も小さく笑った。
「兄上……」
「案ずるな、メローラ。ではヨシタカ卿、ラムロック卿、私はこれにて。行くぞ!」
配下の従騎士3名を連れて、ガレス卿は北へと向かって行った。
「では我らも行くか」
ラムロック卿の言葉に、ヨシタカ卿が頷く。それを尻目に、マーリンがメローラに話しかけていた。
「メローラ王女、これをお持ちなさい」
「これは……紐、ですか?」
「左様。女の髭や熊の腱を縒り合せた、大層丈夫な紐でしてな。生半なことでは切れませぬ。普通の者には扱えませんが、王女ならば使いこなせるはず。きっとお役に立ちましょう」
「私ならば……ですか。……わかりました、ありがたく頂戴いたします」
「話は済んだのか?」
ラムロック卿の問いに、マーリンが答えた。
「ええ、お引き留めしまして申し訳ありませんでしたな」
「行くぞ!」
メローラが馬にまたがると、騎士たちは馬に拍車をかける。マーリンをその場に残し、8人に数を減らした騎馬隊は再び西へと駆け出して行った。




