遥か東より来た騎士10
ヨシタカ卿たちは、助けを求めに来たトマスグリーンの村娘から事情を訊きつつ、武装を済ませていた。今は、従騎士たちが馬を引いてくるのをエントランスホールで待っている。
「トマスグリーンはここから西に6リーグほどです。馬を四半刻も飛ばせば着くでしょう」
「なるほど」
ガレス卿の説明を聞いて、ヨシタカ卿は頷いた。ブリテンの地理には全く疎いので、ガレス卿が同行を買って出てくれたのは幸いであった。
「巨人というのはその辺にいるものなのですか?」
ヨシタカ卿がガレス卿に訊ねる。
「大抵は冬に食料を求めて森からさまよい出てくるのですが……ヨシタカ卿のお国に巨人はいないのですか?」
「人食いの大入道の噂は耳にしたことがありまするが……この目で見たことはありませぬ」
「聖職者の怪物とはなんという冒涜!」
ガレス卿が驚きと呆れの入り混じった声を上げた。
「ということは、巨人と戦ったこともないわけだな」
話に入って来たラムロック卿に、ヨシタカ卿とガレス卿がかぶりを振る。
「ありませぬ」
「実は私もありません」
「ふむ。では私の話を聞いておかれよ。人を相手にするのとは勝手が異なるゆえな。巨人は背丈がある分、当然腕も長い。得物を持っておれば尚更のこと。蹴りがあることも留め置かれるがよい。盾で受けようとは思われぬことだ、受けたところで吹き飛ばされるか潰されるだけゆえな。必ず避けられよ」
「なるほど」
「大股で動き回る巨人に近寄るのは難しい。よって、まずはこちらも長さのあるランスで足を突いて膝を着かせる。そうすれば、あとは振り回す腕を気に掛けるだけでよい」
「承知」
「ただし、ランスで突こうとするとこちらの動きも直線的になる。動きを読まれれば簡単に薙ぎ払われるゆえ、こちらの狙いを悟られてはならぬ」
「巨人は賢いのですか?」
「私も何度かまみえただけだが、童より知恵が回るということはなかった。ただ先ほどの村娘の話によれば、今度の巨人は頭が2つということゆえ、その分だけ視野も広い。それに、両の頭を潰さねば動きを止めぬ。重々心されよ」
ラムロック卿の講釈が終わると、ドアを開けて入って来たローランが声高に告げた。
「馬の用意が整いました!」
「では参りましょう」
ヨシタカ卿の言葉に、ラムロック卿とガレス卿がおう、と応じる。各々の軍馬に跨る騎士たちに、トマスグリーンの村娘を始め、見送りに来た人々が励ましの声をかけた。




