表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/12

「それを口にしてしまわれましたのね。もう、お傍にいられない」

一刹那、ウンディーネに

躊躇いの表情が浮かんだ。



「かしこまりました」


ベルタルダに手をかざすと

眠りに落ち入る。



「ベルタルダにはみられたくないのです。

どうぞあなたもみないでくださいまし」


「そのような指図うけぬ」



ウンディーネは項垂れた。



彼女の衣裳も体も色をなくし、

水のような透明になっていく。


その身は夜光虫の光を宿していた。

髪が蔓草のように延び足下を這う。



本体は髪へと移り、

身体は消え失せる。


髪は水流となって、

舷側を流れ落ちる。



流れ落ちた水は蛇の形をとり、

ゆらめく月のように川を泳ぐ。



光の蛇の頭が沈んで、

水の竜が身を擡げる。



うねりくねり浮いては沈む、

ほっそりとした優美な蛇体。



この刹那、世界から音が呑み込まれて、

水を伝わるルーンの韻律に満たされた。



魚達が白い骨になって溶解する。


拠りどころをもたない、

水霊はただ消えるのみ。



水の竜は鳥に形を変えた。

鳥は舟の上に舞い降りて、

ウンディーネの姿となる。



白鳥の頚のような繊手には

燦然と宝石を鏤めた首飾り。





「許してくださいまし、あなた。


首飾りは引き千切られて散らばり、

全部はみつかりませんでした。


代りにはならないだろうけれど

欠けた処をおぎなっております」



「寄るな、化け物。

我にさわるな。


そのようなものいらぬ。

水底に持ち帰るがよい」



口にしてはならない

言葉を口にさせたのは、


己が従わせていると

思っていた力への恐怖ゆえ。



「それを口になさって

しまわれましたのね」


瞠った瞳に涙が

ヴェールをかけた。



「恨んではいません、ただ


――辛いのです」



抱きとめようとさしのべた

腕にはなにも残らず、


胸に残るのは、

自責と悔恨、

そして喪失感。


膝がくずお


肺腑が破れ

血を吐くほどに


長く、長く

絶叫した――。

20:00 ラスト

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ