三人寄れば文殊の知恵、六人いたら大作戦
「さて、俺をコソコソつけるのはやめてもらおうか」
時は遡ってクロマ大爆発の後
街を走っていたらタヌピスは気配に気が付き
足を止めた
まるで幽霊のようにそいつは出てきた
「俺の気配に気がつくとは、お前只者ではないな」
「これでも一応チームのリーダー務めてるわけで、これくらい出来ておかないとな」
その姿格好からしてタヌピスは魔王と確信していた
「ハデスのヤツとは違う感じがするが、これはまた凄い冷気だな。氷を操る魔王かなんかかな?」
「魔王とわかっても恐怖する事はないのか、これはとんでもない強者と当たってしまったようだ俺も」
そしてそいつは口を開いた
「俺の名はコキュートス、タヌピスとお見受けしたが間違いないか」
「そうだが魔王さんが何の用で?」
「簡潔に言おう、タヌピス俺らの傘下に加われ」
その言葉を聞く前にタヌピスは行動を起こしていた
「その答えはこれだ」
コキュートスの腹にはタヌピスの拳が突き刺さっていた
その拳には灼熱の力が宿っていた
「悪いな氷は火で溶かすに限るんだ、相性を恨まないでくれよ」
「あ…ぐ…あ…?」
コキュートスがその場に倒れ込んだ
それを見たタヌピスはコキュートスの頭を掴んで無理やり立たせた
「おい、まだ終わりじゃねぇぞ」
そのままタヌピスはコキュートスを上に飛ばして
地面に叩きつけるように拳を入れた
「ガハッ!?」
空中から地面に降りたタヌピスは呆れた顔をしていた
「魔王相手でもこれじゃ話にならないな、もう殺すか」
拳の力がさらに強まりそのまま吹き飛ばそうとした
次の瞬間
「ぐっ!?う、動けない…?」
タヌピスが時間を止められたように動けなくなった
その足元には魔法陣が浮き出ている
「タヌピス、お前は油断しすぎだ…ガハッ!」
コキュートスがヨロヨロと立ち上がった
そしてそのままタヌピスの体に近づき
心臓に手を当てた
「おい…このまま俺がゲームオーバーとかゲームだったらクソゲーでしかねぇぜ…」
「残念ながら俺にはそんな力がないわけでな…」
コキュートスの手から紫のオーラが出始めた
「なっ!?この技は!」
その紫のオーラがタヌピスの体を包んだ時
「タヌピス」が目の前にいた
「やっぱりか…ガハッ…」
「これが最強の力か…悪くない…」
身体逆転他者の体と自分の体を入れ替える魔法で
入れ替わったらその人の記憶と能力を引き継いで
自分で使えるようになるという魔法だ
コキュートスが記憶を覗いている時に
ある出来事が浮かんできた
「もし。だ俺に何かあって体が乗っ取られたりコピーされたりしたとするよ。」
「いきなりどうしたタヌピス」
それは何気ない日常の話
アジトでみんな揃ってる時の会話である
「いやな?ペンはそんな事ないって思うけどこの世界ではありえることだからな?」
「まぁ…その可能性は否定しないが」
「そんな話を僕達にしてどうするの?タヌピス」
ぺるしぃがそう聞くと
「もしもの時のために合言葉を決めようと思う、お前らが一瞬でも怪しいと思ったら『お前の中に眠る魔王の名前は?』と聞く」
「ふむ」「うん」
「そしたら俺は『ーーーーーー』と答える」
(ん?ここだけ聞かれないようにしてあるな…)
「おいタヌピス、合言葉の答えを言え」
「んなもん知らねぇよ…」
コキュートスはタヌピスの首を掴みそのまま
持ち上げた
「しらばっくれるなら殺す」
「グアッ…こ…答えは…『イクリプス』…」
コキュートスはタヌピスを降ろした
「今からこの体を使ってお前の大事な仲間を殺しに行く、その後に傘下になるかならないかを聞いてやるよ」
「残念だが…それは無理だ…」
何?
コキュートスがタヌピスを睨んでそう言った
「お前ごときに負けるような…俺の仲間は弱くねぇ…」
「だがお前の体だ、そんなもの結果がわかりきっている」
そう言ってコキュートスはクロマの家へ向かった
「ガハッ…とりあえずこの体をどうにかしねぇと…」
壁を使って起き上がり
そのまま歩きだそうとする
けれどダメージの蓄積が大きくまともに歩くことができない
『タヌピス、俺が力を貸してやりたいがそうもいかないらしい』
「魔王…お前いたのか…」
『魂だけな、本体はあっちだ』
「大丈夫だ…これくらいなんともない…」
ヨロヨロと立ち上がりそのまま歩き始めた
真っ先にタヌピスが向かったのは玄武の城
北の守護者のところだ
1番ありえないと思う所なのだが
不思議とタヌピスにはここは行ける
という謎の安心感があった
「おい!お前!魔王の1人だな!こんなところに何しに来た!」
門の前の兵士がタヌピスに向かって武器を向けた
ざっと20人位はいるだろうか
タヌピスは今にも倒れそうな体を無理にでも立たせて
兵士に話しかけた
「ガハッ…頼む…玄武に会わせてくれ…」
「魔王の言うことなど聞くか!死ぬがいい!」
「ヒマコレ…X...」
その言葉を聞いた瞬間兵士の武器がタヌピスの体に当たる寸前で止まった
「こ、これは…」
「待つんじゃ皆の衆」
金縛りで兵士の動きが止まった
そして城の奥の方から声が聞こえた
老人の声である
「今…ヒマコレXと聞いたが…もしやタヌピスさんですかな?」
「あ、あぁ…じいさん…なんで俺がタヌピスだと…?」
「人の心を見るのは守護者なら当然のこと君は善の方に傾いている…同じ魔王のオーラなのにな」
そうして城の奥の方から姿を表した
杖をついていて身長はかなり低いそして長いひげのおじいさんが出てきた
「朱雀から話はよく聞いていたからな、とりあえず事情を話してくれまいか?ワシの部屋に来るといい」
「で、ですが玄武様!」
「黙れ!お主らには善の心が見えないくせに見た目だけで判断しただろうに!恥をしれ!」
玄武の怒号がその場に響き渡った
そして玄武はタヌピスを担いだ
「じいさん…強いんだな…」
「いいや、君には負けるよ。まずはゆっくり話を聞こうか」
「それで?君は何故その体にいるのだ?」
「あぁじいさん、その話なんだが・・・」
そうしてタヌピスはここまでの経路を話した
コキュートスと戦い体を入れ替える魔法を使い自分と魔王の体を入れ替えられた
そうしてヒマコレのみんなの元へ行った
「ふむ、なるほど。災難であったな」
「じいさん、イマイチ驚かないんだな」
「当たり前じゃ、いちいち驚いていては気が疲れてしょうがない」
しかしと玄武のじいさんはヒゲを撫でながら唸っていた
「ワシもなんとかヤツを退治したいと思っていたんじゃが・・・君の体に入ってる以上手を出しにくいな」
「俺の油断が招いたことだ、この際俺の体がどうなろうと構わねぇ」
それもそうだ
今まで自分が最強負けなしの男だと自信をもっていたのだが
ここにきてその自信が裏目に出てしまうとは思ってなかった
それも自分の体を乗っ取られることになるとは
「クソ・・・俺がもっとちゃんとしていれば・・・」
「そう自分を責めるでない、君はまだ若い先があるのだから」
玄武がタヌピスの肩にそっと手を当てて微笑んでいる
「けど・・・ガハッ!この傷はどうも・・・」
「むぅ、治してやりたいのだがその体は・・・」
「それはいいじいさん・・・この体でみんなの元へ向かう・・・」
しかしそう簡単に動けるわけではない
自分の全力で殴ったダメージが予想以上に残っているのである
まともに動こうとすると激痛が走る
そんな痛みに耐えながらここまで来たのだ
「なぁじいさん・・・1つ頼みがある・・・」
「なんじゃ、言ってみてくれ」
「もし俺が・・・俺の体で悪さしてたとしたらなんとか弁明を頼みたいんだが・・・」
「それなら心配はいらん、ワシが全力で君の無罪を主張しよう」
「助かるぜ・・・じいさん・・・」
「もう行くのか?」
「あぁ、少しの間だが世話になった、ありがとうじいさん」
門の前で玄武が見送りに来てくれた
去り際に渡されたのが10分間の特効薬
その間ならドーピングが効いたように動き回れるらしい
その豆のような物を口に放り込んだ
「うげっ・・・マッズ・・・」
しかし体は軽い
「これならッ・・・!」
自分の体を動かすように
足を動かし
手を振り
地を駆ける
その動作1つ1つに魂を込めるように全力で街を駆ける
(絶対に生き残れよ・・・!お前ら・・・!)
「そんなことがあったのか」
「そういうことだペン、おいクロマもう少し乗り心地をよくしろ」
「んなこと言われても俺は走るので精一杯だわ・・・」
街を走る異様な車は魔王を探して走り回る
そんななか空に浮かぶ人を見つけた
「いた!」
車から降りクロマを元に戻し空を見上げる
「フフフ・・・ハハハハハハハハハ!!!!!素晴らしい・・・素晴らしい力だ・・・!」
そこには傍から見たら高笑いしているタヌピスがいた
周りでは大パニック住人が逃げ回っている
「おいてめぇ、よくもまぁ俺の体で好き勝手やってくれたな・・・」
街をみると半壊状態
タヌピスの力をつかって街で大暴れしていたらしい
「これで貴様の信頼もなくなったも同然!このまま消えてしまうがいい!ヒマコレX!」
その場にいた全員がいつものように
自分の戦闘前のルーティーンをするかのように動き始めた
ぺるしぃは屈伸
ペンは腕回し
きょっけは刀を背中に回し
しょまうは指をならし
クロマは手をぶらぶらさせて
そしてタヌピスは拳と拳を叩き合わせた
「こんなもんで終わるような軍団じゃねぇんだよ俺たちは」
「ほざけ!俺達魔王軍の傘下に入れるためにも!俺はこの力でお前の株を下げるまでだ!」
コキュートスは剣を作り出し
作った剣をこちらに投げてきた
「そら!自分の能力でくたばれ!」
ギィン!
土煙が舞い金属音が鳴り響いた
煙が晴れて目の前に現れたのは
槍を持ったペンと太刀を持ったきょっけだった
「てめぇが使っていい能力じゃねぇんだ、力ずくでも返してもらうぜ」
「俺の太刀で切り落とすまで」
「そらぁ!まだいくぞぉ!」
無限に作り出せる剣を
掴んでは投げ、掴んでは投げ
まるで剣の雨だった
しかし前にいる2人は涼しい顔で剣を落としていた
「ぬるいな、能力を使うまでもない」
「バカな!この力は最強のはずじゃ!?」
そう言ってコキュートスは巨大な炎の玉を作り出し
ペン達に向かって飛ばしてきた
それをペンは
『避けなかった』
ペンを中心に大爆発が起きる
きょっけは前の剣を落としていて巻き込まれなかった
「フフフ…バカなヤツだ…避ければいいものを…」
煙が立ち込めていたものが晴れて
倒れているペンの姿はなかった
槍を持ち仁王立ちしているペンの姿だった
「ぬるいって言ってんだろ」
「貴様!直撃したはずじゃ!?」
「あ?なんでかって?」
んなもん決まってるじゃねぇか
そう言って槍を構え直す
「お前にその力は使えないからだ」
「そんなはずはない!この力は最強!負けるはずはないんだぁぁぁぁあ!!!!」
再度降り注ぐ剣の雨
ギィン!キィン!
それを打ち落とす2人
何度投げても落とされる
「なぜだ!?なぜなんだ!」
「決まってるだ…ろっ!お前が使うものに…はっ!…足りないものがあるんだよ」
「何…?」
「その技に必要なのは信念と気持ち、お前の投げる剣には想いが足りない。ただの武器だ」
「あるべき場所に帰るべきだなお前」
そう言いきょっけは刀の構えを変えた
下段の構えから上段の構えに切り替え
気を高め集中力を研ぎ澄ませた
「飛翔斬!」
剣を振り下ろすと
斬撃が飛んだ
その斬撃はコキュートスめがけて一直線だった
「チッ!完全防御壁!」
バリアを展開するが
斬撃が止まる事はなかった
「なんだと!?」
そのままコキュートスが斬られるが真っ二つにはならない
「さすがタヌピスの体は頑丈だな」
「関心してる場合かきょっけ、敵としては死ぬほど厄介だぞそれ」
コキュートスの額には血筋が浮き出ていた
「ふざけるな…ふざけるな!なぜ…なぜこうもうまくいかない!?」
コキュートスの体から大量の魔力が出てきたのが見えた
「怒りでタヌピスの魔力が暴走してるな」
「おい!お前らそろそろいいか!?俺らもこれ以上はやばい!」
「あぁペン、おかげで準備は万端だ」
ぺるしぃがクロマを担いでそのクロマの上にタヌピスが乗り後ろにはしょまうがいる
「頼むぜしょまう!目一杯飛ばしてくれ!」
「おう!任され…たっ!!」
クロマの足裏が殴り飛ばされクロマが飛ぶ
「タヌピス!このままコキュートスまで飛んでいく!パワーを溜めといてくれ!」
「頼んだぜクロマ!」
タヌピスが拳に力を込め始めた
するとタヌピスの拳が輝き始めた
「貴様ら!そうはさせん!」
コキュートスがそれに気がつき
クロマロケットを撃ち落とそうとする
だが
「竜巻防壁!」
ぺるしぃが竜巻を起こして
剣を弾き飛ばす
「なぜだ!なぜ俺はいつもうまくいかない!」
「今だタヌピス!この距離なら!」
「サンキュー!クロマ!」
タヌピスはクロマの背中から降りて浮いてる
コキュートスめがけて降下した
「きょっけ久しぶりに見るなあいつのオリジナル」
「まさかコキュートスの体でも使えるとは何者だよ」
タヌピスの最初から持っている固有魔法
『破邪』
どの属性にも属さない
まさに悪を討ち滅ぼす正義の力
タヌピスの拳に宿る光には見るものを魅力する
暖かい光
「俺の体を返しやがれ!『破邪閃光拳』!」
その技がコキュートスにクリーンヒットすると
ピキピキと何かが割れる音がした
「まさか!俺の魔法が!」
パリン!
ガラスが割れるような音がすると
タヌピスの意識は
「この感じ!戻ったぜぇ!俺の体!」
「ガハッ…怪我を負ってる状態で放ったのか…今の攻撃を…」
そのままコキュートスは地面に落ちた
「よくもまぁ俺の体で色々やってくれたから、落とし前をつけてもらわねぇとな…」
そう言ってタヌピスは剣を作り出した
「フン…そんな偽物の剣などさっき力を知った、そんなものは…ガハッ…ダメージにならん…」
「お前のは偽物だが、俺のはどうかなッ!」
全力で投げた1本の剣は
コキュートスめがけて飛んでいく
地面に突き刺さった瞬間
その地点から30mは亀裂が入った
「バ…バカな…お前は…バケモノか…」
「外しちまったなぁ…じゃあ次は外さないように炎で焼いてやる…」
タヌピスが作り出した火の玉は
確実にコキュートスが作り出したものよりも大きい
「お前とはな!想像力と信念が違うんだよ!死んで出直せやオラァァァァァァア!!!」
巨大な火の玉をコキュートスに向かって投げつけ
その地点から大爆発が起きる
だが
「吸収されている?んなことできるヤツいるのか」
炎が吸収されているのだ
「まったく世話が焼けるなコキュートス」
「シ、シヴァか…」
爆心地にいたのは
紫の肌で角が生えて
龍の鱗のようなぴったりフィットしたタイツのような
不思議な服魔王特有の服を着てそこに立っていたのは
少し違う感じのヤツがいた
1番他のヤツらと違うのは
シヴァは女
性別が違うところだ
「まずいな…分が悪い…」
ペンが苦虫を噛むようにそう言った
「どうしてだ?ペン」
「きょっけ…タヌピスの唯一の弱点を言ってみろ…」
「なるほど、女性か」
ヒマコレ勢は誰一人として構えを解くものはいなかった
「ヒマコレXよ私の名前はシヴァ、魔王軍火の長だ」
「これはご丁寧にどうも、ヒマコレXリーダーのタヌピスだ」
「お前がタヌピスとやらか、自分の目で見に来て正解だったな強さが図れる」
シヴァはそう言ってコキュートスを担いだ
「このまま退却…させてはくれなさそうだな…」
「当たり前だ!お前ら!絶対に逃がすなよ!」
そのタヌピスの指示を聞き
全員はシヴァに向かって走り出した
「ペン!この風に乗って!」
「おう!」
ペンはぺるしぃが作り出した風に乗り
シヴァに突っ込んでいく
「ペン式槍術!太刀魚!」
風に乗った状態で槍を突き出し貫く形になる
しかしその場からシヴァが消えた
「なっ!?」
ペンはそのまま地面に突き刺さり停止した
「その動き捉えられないと思ったか!」
「さすが朱雀だなだがまだ遅い」
屋根の上でしょまうがシヴァの瞬間移動にかろうじて追いついていた
「きょっけ!」
「任せろ、一線!」
きょっけが太刀を横に振り抜き
シヴァの移動地点を予測して斬った
だが
「かすっただけか…」
「惜しいなスサノオ」
それでもからかうようにシヴァが瞬間移動を続ける
次の瞬間
ガシッとなにかに掴まれた
「捕まえた!」
その足元を見ると
完全に屋根色と同じ生物
というかクロマがそこから現れた
「なんだお前は!気配を感じ取れないとは一体何者だ!」
「無になるのが俺の力なんでな!タヌピス!」
「しまった!」
「よくやったクロマ!『破邪閃光拳』!」
再度タヌピスは破邪閃光拳を繰り出す
しかしシヴァに届く前に光が消えた
というかパンチが体に届いてない
「クソォオオォォォオオオ!!!可愛いのが腹立つゥウウウゥウ!!!」
やはりタヌピスは女を殴る事はできなかった
その一瞬できたスキを見て
シヴァは距離を取った
「次ぐ次ぐ甘いなタヌピス今回私がやられなかったのはお前のおかげだ。今度胸でも揉ませてやろう」
そう言ってシヴァとコキュートスは闇の中に消えていった
「タヌピス…」
ヒマコレ勢からのジト目がひどく痛かった
「いや…なんか…マジごめん…」
今回の戦いは痛み分けということで幕を閉じた




