第十六話
大変、大変遅くなりました。
スランプです。もとに戻すだけの作業なのに全然かけず進みませんでした.........。
とりあえず、アップです。
楽しんでいただけたらいいんですが.........。
どうぞー
闘技場を外から見たら、球体が地面に埋まっているように見える。だから中も丸いのかって言われるとそうでもなくて、弧を繋げて出来た四角になってるんだよね。建築とか全くわからないけど、魔術の併用を考えると一番耐久性がある形らしい。中身は普通の体育館が近いかな。二階相当の高さの壁面に通路が作ってあって、ぐるっと回れるようになってる。外から直接的ここに入れる入り口もあって、私はケーン先輩にそこまで送ってもらったんだと思ってたんだけど。
開いた扉の向こうには、通路なんて存在しなかった。
というより、壁や床は結界で守られてて無事だっただけで、闘技場のなかは爆発事故でもあったのかと思うくらい。たぶん通路だったであろう粉々になった石とか、手すりっぽい棒とかが見える範囲に散らばっている。あれ、着いてるのって血だよねえ.........。試験中だと思われる辺りは砂ぼこり.........何で室内でそんなことになるのか謎だけど、それが各結界ごとにもうもうとたって何が起こってるのかさえ見えない。参考にするなんて出来そうにないねえ.........いや、それどころか何してるのかさえわかんないしな。
「一年のキーディア君だね。降りられるなら降りておいで。ああ、悪いけど扉は閉めてくれるかい」
右斜め下から渋い男性の声がして、私はそれにしたがって飛び降りた。2属性の同時撃ちで補助したかあら、着地と同時に扉がきちんと閉まったかも確認する。うん、2属性までなら実戦でももう大丈夫そう。
声をかけてきたのは老師って呼ばれてる実技の先生だった。.........あれ、確か孫が生まれて引退したって聞いてたけど違った?
飛び降りた私ににっこり笑って、老師は私に向かってちょいちょいと手招きした。うーん、執事さんの服、それかスリーピースのスーツをかっちり着るのが似合いそう。雰囲気だけなら和服もありだけど、顔が北欧系だからちょっとないかなあ。
ちょこちょこと寄っていくと、イメージより背が高かった。2メートル近くありそう。見上げると首が痛くなりそうだな。私、そこまで小さくはないのに。
「遅くなってすみません。魔術科1年、キーディアです」
「聞いているよ。突然で大変だったろうね。2属性は同時に使えるんだね?」
「はい」
「他には何が出来るのかな」
「そうですね、3年次修得予定魔術に関しては、上級魔術は基本5属性と派生属性のいくつか。同時撃ちなら実戦に足るのは2属性まで、というところです」
「派生属性は具体的には?」
「水属性と風属性、土属性の単独派生はそれぞれ1,2種類使えます。複合属性になりますと.........」
「ふむ、ありがとう。大体分かったからもういいよ」
魔術の属性の基本は、火水風土光の5つ。大体は読んで字のごとくの魔術で、闇は光の派生属性になるから存在しない。ひとつの属性につき初級から上級までの3種類、それが魔術式の数だけ存在するんだけど、技名とかないからどれとどれが使えますって説明しにくい。
派生属性っていうのは、基本属性の状態変化させたものなんだけど。
液体、固体、気体だとそれぞれ基本水属性、水の単独派生属性の氷属性、気属性ってことになる。雪とかも水の派生属性になるし、魔術式が微妙に違うだけで属性が変わったりするから、単独派生でテキストに載っているようなものだけでもかなり多い。
加えてそれに複合派生っていう、数属性を掛け合わせた魔術もあってそれが数えきれないんだ。例えば土、水、光の複合派生は植物属性なんだけど、掛け合わせる種類、数の違いの分だけ複合派生は存在する。ちなみに気属性は水の単独派生であり、水と火の複合派生でもあり、風属性に入るとも言われてる。.........もっと分かりやすくまとめてほしいよね。もう突き詰めていったらキリがない。たぶん、全ての魔術を修得してるひとって存在しないと思う。計算ミスで変な属性が生まれたりもするらしいしね。
何か言われると思って待ってるんだけど、老師は私を止めてからずっと黙りこんでて居心地が悪い。
反応を窺いながら無駄に魔術について考えたりとかしてたら、崩れ落ちるような激しい音がして一番近くの結界が綻んできて、ヒビがって、はああ!?
とっさに身を固くして対面に結界を張る。
読み取れる限りでは結界のなかで光の派生魔術を使ったんだと思う。ちらちら見える黄色は光属性を使ったときの陣の色だ。たぶん。爆煙でどんな陣なのかは見えないけど。
壊れた結界から高速で飛び出してきたらしい何かは、バキッて硬質な音を立てて、私の結界にぶつかった。
あ、これって的.........だよね。もう原型なんてないくらいぼろぼろなんだけど。
崩れながら滑り落ちる的を視界の端に納めながら、まだ霞む壊れた結界の中を見る。このレベルでなきゃ壊せないとか言われたら、私には無理なんですけど。ルフェダオスの寵児とか呼ばれて、せめて恥ずかしくないようにとも思ってたけど実は、私って調子に乗ってた?絶対無理って門前払いされたような気分だよ。3年の実技に出られたからってナメてたのかなあ。 やっぱり、進級は諦めて.........痛っ。
「はーい、ディア。戻っておいでね」
「.........っ!ルーセル先輩っ!?痛いです。本気ででこぴんしましたね、今」
「何となく現実逃避してるような気がしたからね」
「逃避なんてしてませんっ」
むしろ無情な現実を噛み締めてました。
「まあ何でもいいんだけどね。何でディアはここにいるの?連絡事項でも任されたの?」
「え?」
「ん?」
「ルーセル先輩が何かしたんじゃないんですか?」
「え、僕に伝言があるってこと?」
あれ?
「違うよ、ルーセル君。彼女は試験を受けるためにここにきたんだよ」
「.........それは、彼女を飛び級させるということですか?」
「悪いけれど、詳しくは私も知らないのだよ。人が足りないからと駆り出されただけだから」
「ルーセル先輩じゃなかったんですね」
「どういう意味かな?」
「イエ。とりあえず今日いきなり言われて急いできたんですけど、勉強してないし、先輩はレベル高いし、もうこれは落ちたかなって、進級無理かなって.........」
目の前で結界壊すくらい魔力込めた魔術見せられたら、ねえ。
先輩は私の視線を追って振り向くと、納得したようにああ、と苦笑いした。苦笑いですむレベルじゃないよね。少なくとも今試験受けてる人たちは誰も結界壊してないし。
「いや、あまりにも逃げ回るからつい」
「張り直すのは私なのだが」
「すみません、つい」
「ルーセル先輩だったんですね.........」
「ごめんね?」
「謝らないで下さいっ」
うう、これだから規格外は!!
まあ、実力がいくらけた違いだからって学年が上のひとに劣等感なんて感じないけどね。先輩すごーいですむ話だし、この人をライバルとしてみようと思ったら私は遺書を書いておくとか、色々覚悟をしなきゃならない。
私の順番は最後になるみたいで、それまでに試験の概要を聞いておくようにと言い置いて老師は結界の修復に向かった。なんか、うちの先輩がすみません。
「.........」
「どうしました?」
「うーん、ちょっとね。ディアは大体分かってるよね。大丈夫そう?」
「結界タイプなら動きませんよね。時間かければなんとかなりそうなんですけど.........」
地味にこつこつこつこつ、観察して作業をすることは得意なんだよね。ちまちました作業も苦にならないから、細かく編まれた結界でもなんとかなると思う。
「あれ?前に追跡魔術勉強してるって言わなかった?たしか、年明けくらいに」
「一応、努力はしたんですけども」
あれは独学じゃ無理だって思って諦めた。
いやあ、あれはほんと無理だよ。今まで算数やってたのにいきなり高校数学の教科書読まされた感じ。じっくり腰を据えれば出来ないこともないだろうけど、そもそもすぐ必要じゃないなら時間があるときに教えてもらおうって思うのが普通だよね。
ルーセル先輩はあれは難しいからねとか言いつつ、瓦礫に腰掛けた。今も試験中の先輩方の方を向いたまま隣の瓦礫をぽんぽん叩く。.........これは座れってことだよね?めっちゃとんがってるけど。
さすがにそんなに苦行みたいな場所に座りたくはないので、瓦礫を背もたれにして地面に体育座りする。懐かしいなあ。三角座りともいうけど、地面にこういう座り方するって懐かしい。こっちは椅子文化だから直接地面にって演習のときくらいしかないんだよね。結界とか瓦礫とかそういうの無視すれば体育してるのとそう変わんないなあ。
そう言えば私、本気でどうしよう。ちょっぴりほのぼのしてる場合じゃないんだって。
本格的に頭が逃避を始めそうだから、まず試験を見える範囲で参考にしてみよう。
眺めた結果、的のタイプは結界張るタイプが一番多いみたいだった。この試験って自分が作った術具であれば持ち込みOKで、研究者タイプの魔術師はそれを使って的を破壊にかかるみたい。逃げ回るタイプだと結構な速度で術者に向かって飛んでくることもあるから、身を守る程度の魔術を即座に使えないと危険なんだって。生徒に合わせて老師が指定してるらしい。
「うーん。さっき全部説明して良かったかも」
「ん?何が?」
「老師が的を決めるんですよね?私、さっきどのくらい使えるのかって聞かれたんですけど」
「確認されたんだね。老師って優しい顔して無茶させるからなあ」
一気に不安になるなあ。
「ルーセル先輩はどんなのだったんですか?」
「結界張って逃げ回るやつだったよ」
「はい?」
「老師は特別にね、とかいっていたけど.........」
そりゃつい結界破壊したくもなるわな。
的を壊した、つまり合格者は結界を出て、さらに闘技場からも出ていった。どんどんひとが減っていって残っているのは結界のなかにいるひと達と私たち、それから老師だけ。あのなかの誰かが合格したら次は私の番だ。
「対策は出来た?」
立ち上がって埃を払い、屈伸し始めた私に向かって、ルーセル先輩が聞いてくる。似非王子様は心配そうな表情を作ってるけど、たぶん面白がってる。先輩達は私を過大評価している節があるから、この程度なら楽勝で通ると思ってるんだろう。
「特別仕様じゃなければなんとか」
私にも出来ると思う。楽勝は無理だけど、ね。
理を解し式を解き、解を導き陣と成す。魔術師に求められるのはこれが出来るくらいの冷静さと、状況を読み解く力だ。少なくとも、他の3年生の試験を見学出来たのは私にとって幸運だった。ルーセル先輩のを最初に見て無理だと思ったけど、普通があのレベルなら私にだって出来ないこともない、ような気がする。
動くっていったって魔獣よりは速くないし、結界だってルーセル先輩のやつほど強固でもない。動きに至っては規則性があるみたいで、強度だって私の結界でも耐えれそうだからじっくり観察できる時間くらい確保できる。.........正直、目が慣れちゃってるような気がするんだよね。キュリーとケーン先輩の動きを見てたから。
ひとつ、結界が空いた。
学生が出ていくと入れ替わりに老師が入っていって、何も見えなくなる。
「落ち着いて。そうしたらディアならイケるから」
ぽんぽんって、さっきのケーン先輩と同じように頭を撫でられる。
私ってすごい子供扱いされてるのかな。セルマ先生にも撫でられたし、キュリーなんてときどき抱き上げられるし。.........いいんだけどね、嬉しいから。
老師の呼ぶ声がして、私は振り返った。後ろからいってらっしゃいってルーセル先輩が声をかけてくれる。
「僕はキュリーたちと食堂にいるね。頑張って」
「ありがとうございます。いってきますね」
こういう笑顔だけなら似非を外してもいいんだけどな、王子様。
老師は、好好爺然とした笑顔で私を迎えると、結界に招き入れた。基本的な規則を説明して、質問がないのを確認すると、無言で頷く。
「では開始しようか」
「はい。よろしくお願いします」
結界が閉じる直前、老師は私に声をかけた。
「君はどちらかと言えば実戦的な魔術師のようだから、ちょっとだけ特別にしたからね」
「は、い?」
それは、私が1年だからとかそういうのですよね?
的に込められた魔術が起動し始める。
老師はさっきと同じ笑顔のまま、開始の合図を出した。
仕事の休憩中に隙を見て。
誤字脱字、感想などご意見お聞かせください。
スランプ脱却には自分一人では力不足で.........。
皆さまよろしくお願いします!




