#最終話 私と店長の他愛もない話。
ラストです。
「店長!起きてくださあーい!!」
「んん、ん?まだ7時半じゃないか。開店まで30分もある。バイトの分際で僕の生活リズムを崩さないでくれるかい?」
どーせ客は来ないんだし。と、店長は眠たそうに付け加えた。
「店長。 お客さんは来るようになったじゃないですか。 いつまでも寝ボケてちゃダメですよ!」
「え、あれ、そうだっけ? なんか夢を見てたような……」
「店長。 流石に夢オチじゃ笑えません」
「そ、そうだね。 準備してくるよ」
そう言うと店長は店の奥へと消えていった。
○
今日から新学期。
少しだけど常連の客も増えた我が喫茶店は、今日もひっそりと営業している。
「はい、いつもの」
──いつもの。
そう言って目の前に置かれたホットサンドを手に取り、夢中で頬張る。
このホットサンドは常連のお客さんにも好評なようで、モーニングでは未だホットサンド以外のメニューが頼まれているのを見たことがない。
いわゆる当店No.1商品だ。
ちなみに、私はまだコーヒーが飲めない。
店長に子供扱いされるのが癪なので毎日無糖コーヒーに挑戦するのだが、未だに飲めない。
私にもいつかコーヒーが飲める時が来るのだろうか。
「くっ、アイツ、俺が苦手なの知っててまた送りつけてきやがった!」
店の奥から現れた店長の手には、中味がぎゅうぎゅうに詰まったダンボールが。
箱には『温州みかん』と書いてある。 ……妹さんか。
店長は忌々しげにダンボールを床に置くと、こっちを見て顔をしかめた。
謎に鋭いんだよな、この男は。
「どうしたの? なんか体調悪そうだけど」
「いやぁ、少し考え事を」
「考え事?」
相変わらず、おせっかい野郎である。
「コーヒー、いつか飲めるのかなぁって」
「……ふっ」
私の深刻な悩みを店長は鼻で笑うと、言った。
「いいじゃない、飲めなくても。 毎日懲りずに君が苦そうな顔してるの、見てる分には面白いからね」
むむっ、聞き捨てならん。
でも、店長がそう言うのなら──
「確かに、このままの方がいいかもですね!」
「だろ!おっと、時間大丈夫?」
現在、8時15分。
ここから学校まで徒歩10分だから……
「ちょっと、ヤバいかも!」
私は急いで苦いホットコーヒーを飲み干すと、店のドアへと向かう。
「行ってらっしゃーい、彩音ちゃん」
「ごちそうさまでした!行ってきます!」
カランカラン♪
喫茶店特有の、ドアを開ける心地よい鈴の音と共に。
いつもより少しだけ歩くスピードを上げて、私は学校へと向かった。
──『私と店長の他愛もない話。』 終
ここまで読んで下さった方。
更新を待っていて下さった方。
本当にありがとうございます。
更新、とても遅くなりました。
やっと、完結です。
こんな仮『どん』の小説に、お気に入り登録してくれた方、ポイントを入れてくれた方、感想をくれた方……何より、目を通して下さった方全てに感謝です。
本当にありがとうございました。
後日談などの予定はありませんが、万が一ご希望なら感想欄まで……
今後も新作は出すつもりなのでまた何処かでお会いするかもです。
ではまた。




