#35 私と店長達の他愛もない話。
……久しぶりです。仮『どん』です。
ごめんなさい。
ここまで更新が途切れるとは……。
こんな仮『どん』の小説ですが、遂に完結しましたので残り2話をお楽しみください。
「店長日記?」
シャワー浴びてくる、と言って店の奥へと消えてしまった店長。
それなら暇つぶしにでもと久しぶりの店内を掃除していたら、キッチンの奥で妙なモノを見つけた。
『店長日記』
学校で使う物より一回りほど小さいノートの表紙に、その四文字は刻まれていた。
うーん、店長日記ねぇ。
ーーこの日記を巡り古今東西あらゆる職の店長達がバトルロワイアル!
……なんてことはないですよね、さすがに。
うん。 どーやら最近読んだマンガに影響されてしまったみたいだ。 ちゃんとしないと。
よし、今度こそ読んでみよう、店長日記。
彼の意外な一面が見れるかもしれないんだし。 まあ今更何見ても驚かないけど。
私は持っていた箒を壁に立て掛けると、その小さいノートの1ページ目を捲った。
◇
・4月○日
新年度だし、何か始めようと思う。
日記とかどうだろうか。
返事がない。 当たり前か。
寂しいなぁ。
・4月□日
驚いた。 久々にお客さんが来た。
可愛らしい女の子だった。
中学生かな?
・5月△日
この日記の存在をすっかり忘れていた。
というのも、僕の毎日は退屈ではなくなったのだ。
彼女に感謝しなくては。
・5月20日(月)
昨日起こったことを書く。
美久が訪ねてきた。 謝らないといけないと思いつつ、なかなか話を切り出せない。
それはそうと、そのあと彩音ちゃんと居酒屋に行った。
彼女は酔い潰れた僕を店まで運んでくれたらしい。 ありがたい話だ。
・5月21日(火)
二日連続で日記を書くのは初めてかもしれない。
今日は高校生の恋愛相談を受けた。
色々あって、次の土曜日に彩音ちゃんの彼氏役になることになった。
年の差カップルというやつだろうか。
・5月24日(金)
久し振りにお墓参りに行ってきた。
漫画、読んでくれただろうか?
その後、彩音ちゃんと店でカップルになる為の特訓をした。
黒歴史だ。
思い出したくない。
・6月26日(日)
長らく放置していた。 放置はダメだ。 数少ない読者を困らせてしまう。
というかこの日記は書いていて意味があるのだろうか? 疑問だ。
今日は野生の妹が現れた。
と思ったら逃げ出した。 何なんだアイツは。
その後は彩音ちゃんと夜更かしをした。
途中、将棋やしりとりを楽しんだ。
彼女は寝てしまったのでさっき部屋へと連れて行った。 幸せそうで何より。
・7月◎日
明日から旅行だ。
そろそろ僕も過去と向き合わなくては。
◇
日記はそこで終わっていた。
店長も店長で色々考えているようだ。
知ってたけど。
「ふーん、店長こんなの書いてたんだ」
「えっ」
「えっ?」
「えっ??」
後ろを振り向くと、風呂上がりの店長が立っていた。
持っていた荷物を派手に落とすというおまけ付きで。
「「……………………」」
気まずい沈黙。
知らない誰かにクスクスと笑われているような気がする。
「えっ、えーと、あの……」
ダメだ、なんて言ったらいいか分からない!
でも、この状況を作ったのは私なんだ。
あのノートを見つけてなかったらこんなことにはなってなかったのだ。
なんとかしないと。
店長はすごい恥ずかしそうに俯いている。
これは相当なダメージを受けてるはずだ。
「あ、あの、店長……?」
えーと、こんな時はどうしたらいいんだっけ?
と、とりあえず謝ろうか。 うん。
せーのっ!
「店長、すいま──」
──ガッシャアアン!!
私の謝罪会見は最後まで行われなかった。 何者かによる妨害が起こったのだ。
「泥棒か?!」
店長は俯いていた顔を上げると、そそくさと玄関へ逃げ出した。
まさかこのまま誤魔化すつもりなんだろうか。
にしても誰だ?
本当に泥棒だとしたら店長が心配だけど……。
『うわっ、なんでお前ら! ってか全部見てたの?!』
店長が珍しい大声を発する。
心配して損した。 やっぱりさっきのアレは泥棒なんかじゃなくて──
「やあ、彩音ちゃん久し振りだね」
「フフフ、全部見てたわよ?」
莉那ちゃんに美久さん。
後ろには慧くんと刑事さん、居酒屋の井上さんまでこっちを見ている。
さっき笑われていた気がしたのは本当だったのか!
「まあ最終回ということだし全員集まった方が、ね?」
「井上さん、そんなこと言ったら後で消されますよ?」
「まあまあ彩音ちゃん。 そんなことより秘密の旅行で二人の距離は縮まったんですか? あんなことやこんなことは──」
「貴様はまたその話か!!」
○
「……騒がしいなぁ」
「まあ子供はああでなきゃね。 で、どうだったの旅行は」
「まあ、想像に任せる」
「そう。 よかったわね」
「…………」
「…………」
「ごめん」
「もういいわよ。 分かったんなら」
「……うん」
──『私と店長達の他愛もない話。』




