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私と店長の他愛もない話。  作者: 仮『どん』
最終章 いついつまでも他愛ない話。
36/41

#33 彼と彼女にも夏休み。


遅れてしまい本当に申し訳ありません。

あと、お気に入りの方ありがとうございましたです。

8ー2。


相手のピッチャー越しに見える球場の電光掲示板には、そんな数字が夏の暑さで揺らいでいた。

6点を追う最終回の攻撃、それもツーアウトランナーなし。


目の前に立ちはだかるこのプロ注目の投手から、ここで俺がホームランを打ったとしてもこの試合がひっくり返ることはないだろう。


ーーそれでも、諦めるワケにはいかない。


不安と緊張で、今にも引きちぎれそうな俺の心を、奮い立たせる声があるから。


「けいー! 打たないとぶっ飛ばすからねぃー!!」


アルプスから聞こえる地響きのようなブラスバンドの音も、ベンチから届く大きな声も。

とてもうるさい、そのあまりにも場違いな声援の前では霞んでしまう。


「聞こえてる?! 聞こえてんなら返事しろぉー!」


どうするんだ、コレ。

俺は、本当にこんな奴のことが好き、だったんだろうか? いや、現在形でどうなんだろうか?


……それは、愚問だ。

そんなことは、自分が一番分かっている。


分かっているからこうして、審判にタイムをかけて集中して、一瞬だけ声の主の方向を見つめるのだ。


これまでもずっと一緒だったし、多分これからもずっと一緒なんだろう。

アイツが前に言ってたように、この毎日に終わりが来るのは俺だって確かに怖い。

だけど。 だからこそ。


前に会った喫茶店の店長さんの、あの独特の淡い声が蘇る。


いつか終わりが来ても、来なくても。

いや、いつか終わりが来るからこそ。


大事なのは、今この時。

アイツのうるさい声が真後ろで響く、今この時。


そうだ、ホームラン打って、そんで告白しよう。 そうだ、それがいい。


「プレイ!」


マウンド上の相手投手が、ゆったりしたフォームで腕を振りかぶる。


俺は短く持ったバットをぎゅっと握り直して、迫ってくるボールに向かって無我夢中で振り抜いた。


ーーガッッ!


打った手がしびれるほどの速球は、バットの根元に当たり高々と舞い上がった。


ただの、平凡なレフトフライ。

球場を悲鳴とため息が支配する。


……やっぱり、ホームランはまだ先か。


でも、俺の耳には確かに聞こえた。

この球場でただ一人、まだ諦めてない奴の声を。


「おっちろぉおぉーー!」


アイツが野球のルールを理解しているとは思えない。

何しろ体育のソフトボールで三塁に走った奴だから。


それでも、本能的に叫んでいたのだろう。


落ちたら、ヒットになる。 この際、ヒットじゃなくてもエラーでもなんでもいい。


「「おっちろぉおぉーー!!」」


ただ俺達二人は叫んだ。


そして、無意味と分かりながらも、全力でダイヤモンドを駆けた。



ここまで読んで下さった方。

更新を待っていて下さった方。


本当にありがとうございます。


どんどん間隔が広がっていってる気がしますが、最後まで続けるのは続けるのでご安心ください。



はい。

彼らにも夏休みはあるのです。


そして高校野球、地方予選は公立校だと案外こんな話はあるものなのです。

ホントですよ?


次こそ更新を早めに……出来たらなぁ。


だらだらしっぱなしで本当に申し訳ありませんがまた次回です。


ではまたです。

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