第四話「奇跡の力」
レッドアラートの花火が上がった。
打ち上がった場所で誰かが戦ってる。
急いで向かおう。
1秒でも速く。
「レクターはノヴァさんを探してくれ。
応援は俺とメイガで行く。」
「俺も行きます!」
「ダメだ。今から戦う相手は多分めっちゃ強い。
油断したら死ぬ可能性だってある。」
「それでも、僕は行きます。
僕も、仲間を助けたいんです。」
レクターの目には助けたいっていう意思が伝わってくる。
でも……本当にいいのかな。
また、失ったりしないかな……。
「大丈夫だよ!
リテルが不安がるほどレクターくんは弱くないしさ。
それにさっきの戦いも2人息ぴったりだったし!」
「でも……。」
「リテルさん、お願いします。」
家族を失って、大切な人を失うのが怖くなった。
本当は連れて行ってやりたいけど、もしも死んでしまったらどうする。
また俺は1人になってしまうのかな。
不安に不安が重なって判断を迷ってた時、メイガに背中を強く叩かれた。
「らしくないなぁ。
大丈夫!なんだかんだうまくやっていけたじゃん!
私たちは世界を変えるトリオなんでしょ?
このくらいのピンチ乗り越えなきゃ世界なんて変えられないよ!」
「僕だって革命軍です。
仲間のピンチに駆けつけられないほど、僕はビビリじゃありません。
一刻でも早く助けに行きたいんです。」
……俺と一緒だ。
仲間を失いたくない。
仲間と死ぬまで楽しく過ごしたい。
その為に助けに行くんだろ。
そうだ、失いたくないから戦うんだ。
「それに、どうせピンチになったら守ってくれるんでしょ!」
メイガの笑顔が眩しいほど輝いてる。
レクターも俺を見ながら、任せてくださいと言わんばかりの顔だ。
そうだよな。
俺は怖がってばかりで信じるってことをしなかった。
「わかった。
でも、本当にやばかったら逃げたりするんだぞ。」
「……ありがとうございます!」
「なんだかんだ私たちなら、生きて帰れそうだけどね!」
「あぁ俺もそんな気がする。」
「さて、話はこのぐらいにしようか。」
「はい、行きましょう。」
「私はいつでもオーケーだよ!」
「じゃあ行くぞ。
仲間を助けに。」
花火が打ち上がったところに3人で高速移動をする。
移動してる最中に違和感に気づいた。
みんなあの花火は見たはず。
なのに周りには俺たちしかいない。
ターゲットを撃破したバディならすぐに向かうはずなのに誰もいない。
何かおかしい。
考えられるパターンは3つ。
1つ目は、まだターゲットの撃破ができていないケース。
でも、これの可能性は低い。
ターゲットの撃破にこんな時間がかかったことはないし、クライシスバンドは緑色にしか光ってなかった。
応援要請の対応にここまで遅れることはまずないだろう。
2つ目は、目的地からは距離がありすぎるから街の人たちの避難誘導をしたケース。
これはもっとない。
俺たちの避難誘導を街の人たちが素直に聞くのはありえないからな。
……となると最後の3つ目の可能性が高いな。
だとしたら最悪だ。
「リテル、レクター!
見て!」
「これは……どういうことですか。」
目的地についた先に待っていた光景は、すでに血まみれのまま倒れた仲間。
近くには薄い茶色の髪色に、全身が黒い服に包まれた男が立っていた。
そう、3つ目はすでに全滅しているケース。
仲間の中には腕が切り落とされていた仲間もいる。
悲しみよりも怒りの感情が一気に込み上げてきた。
体がこいつを倒せと訴えかけている。
それはメイガとレクターも同じだろう。
怒りが頂点に達したその時−–−
–−–黒服の男がこちらを睨んできた。
その瞬間、体中に強烈な寒気が俺たちを襲った。
怖い。
殺される。
戦いたくない。
逃げたほうがいいんじゃないか?
勝てる未来が見えない。
ネガティブな思考でいっぱいになった時、メイガが俺の頬を引っ張ってきた。
「何ビビってんのさ!
大丈夫!
いつも通りサポートは任せて!」
「僕も、覚悟はできています。」
……何ビビってんだよ。
俺は毎度毎度……悪いことばっかり想像して。
俺たちは負けない。
仲間の仇を俺たちが取らなきゃ、誰が取るんだよ!
「2人とも、殺すつもりで倒そう。」
「もちろん、仲間殺したやつなんか生かしたくないし。」
「僕もあいつだけは許したくありません。」
覚悟はすでにできてるな。
「戦闘用意。」
絶対に勝つ。
勝って仇を取る!
黒服の男に向かって高速移動しつつ、一気に切り掛かる。
レクターも後に続いて攻撃を仕掛ける。
男の首を目掛けて剣を全力で振った時だった−−–
–−–男を中心に暴風が弾け、俺たちの体は後方に吹き飛ばされた。
その衝撃で家に激突して背中に激痛が走る。
敵は風を操る能力者か。
多分その風で体を切り刻むことができるんだろう。
じゃなきゃ風だけで腕を切り落とすなんて無理だからな。
体勢を立て直した瞬間、男は俺に距離を詰めて、同時に風の刃で俺を攻撃してきた。
瞬発的に避けたあと、さらに攻撃してくる。
一つ一つの攻撃が速い。
避けるのが精一杯だ。
そう思っている時、
「パシュ」という音と同時に男が俺から距離をとった。
音が鳴った先にはメイガが男に向かって発砲している。
男がメイガの発砲を避けた先で今度はレクターが攻撃を仕掛ける。
さっきの俺と男の状態がひっくり返ったように、レクターが攻撃をし続けている。
後に続いて俺も攻撃に参加をする。
絶好のチャンス……絶対ここで仕留める!
その時、また男を中心に暴風が弾けた。
でも、流石に二度目は喰らわないぜ。
今度は全員無事だ。
よし、戦えてる。
この3人なら勝てる!
「君、名前は?」
男が俺に向かって口を開いた。
「……リテル・ブリンガー」
「……そうか、成功したんだね。」
「さっきから何言ってんだ。
俺の仲間を殺しておいて、生きて帰れると思うなよ!」
「仲間?あーさっき僕に戦いを仕掛けてきた人たちのこと?
すごく弱かったよ?
まぁ僕を相手に勇気を振り絞って向かってきたんだ。
その敬意を評して、一撃で楽にさせてあげたよ。」
「それ以上喋らないで!」
メイガが今まで聞いたことがない声で怒鳴る。
「殺したみんなに謝ってください。
今なら楽に殺してあげますから。」
レクターも怒鳴ってはないけど、怒りで満ち溢れているのがわかる。
「何を謝るんだい?
むしろ楽に殺してあげたんだから、感謝すべきだよ。
ありがとうも言わず死ぬなんて……とんだ無礼者だね。」
……やっぱりこいつは生かしちゃダメだ。
「2人とも!
一気に勝負を終わらせる!」
「うん!」
「はい!」
「そろそろ終わらせよう、リテルとその仲間たち。」
「終わりはお前だ!」
男が立っていた足元が急に凍り始める。
「これは?」
「“アイストラップ“?!」
「最初に吹き飛ばされた時に仕掛けておいたんだよ!」
アイストラップは地面に“アイストラップの種“を叩きつけると3分後、その場所に足元が凍るトラップを仕掛けるアビリティアイテムだ。
あまり実用性はなくて、もしもの為に持ってきたものがまさか役立つとはね。
「今だ!
確実に仕留めろ!」
3人がそれぞれ最高の一撃を込める。
俺は首を。
メイガは心臓を。
レクターは体を真っ二つにして、確実に殺せる一撃を男に向かって攻撃する。
剣を振った瞬間だった。
俺の剣は綺麗に折れてしまった。
メイガの銃弾は弾けとんで、レクターの双短剣は刃先が折れた。
男の体は鉄みたいに硬かった。
「一旦退避!」
男から距離をとりつつ、3人で囲みながら様子を伺う。
男はアイストラップの氷を簡単に砕いた。
「リテル、これどういうこと?」
「……わからない。」
どうなっている?あいつは風の能力者のはずだ。
体を硬化させることなんてできない。
「お前、何をした?」
「そういえば、自己紹介がまだだったね。
僕は“八天災禍“の第4位、クロウ・ウィルフィン。」
八天災禍?なんだそれ、聞いたことない。
「茶番は終わりだ。
終わらせてあげるよ。」
次は何がくる?
わからない。
なんなんだこいつは。
「2人とも、警戒しろ!」
「……奇跡の力って知ってる?」
「なんだそれ、意味わかんねぇ。」
「奇跡の力っていうのは、この世界の理から外れた現象を起こす力。
何ができるかじゃない、“何が起きてもおかしくない“ ……そういう力の事だよ。」
そう言いながらクロウと名乗る男は片手を挙げる。
その瞬間、上空から妙な音がした。
でも、空を見上げた時にはもう遅かった。
空には無数の炎が街に降り注いでいた。
「メイガ!レクター!
逃げろ!!!」
「−空の奇跡– –星降る灯火−」
〈八天災禍〉
80年前の能力者戦争を終わらせ、無差別に人間を殺害した8人の能力者。
それぞれ強力な能力を持っており第1〜8位までいる。
今も生存していおり日々人間を殺している。




