1-5 ダンジョンライバーに、なりにいこう。⑤
門楠がチャンネルの立ち上げ作業をしている間に桐谷がワクワクしている様子を隠しもせずに、皆へと提案した。
「チャンネルを立ち上げたことだし、ダンジョンへ向かう前の配信準備のための拠点も、どこかいい感じの所に用意しないかい?」
「この大学のラウンジではダメなのか?」
「いや、ダメじゃないさ。でもね青本、せっかくの夏休みに足しげく大学へ通うというのも、ちょっとアレだろう? それに私の理想としているのはなんと言うかな……別に配信だとか関係なく適当に集まってだべっていられる私達だけの秘密基地……いや、たまり場のような場所があればいいなと思ったんだ。どこか心当たりは無いかな?」
桐谷の提案は相応に魅力的だったらしく、それぞれが頭をひねって心当たりを探り始めた。いくつか候補が上がった中で、門楠の考えが桐谷は気に入ったようだった。
「そうだ、確かこの近くに廃校があっただろう。そこの食堂辺りならスペースもあるし椅子やテーブルも揃ってるだろ」
「ああ、なるほどその手があったな門楠! 確かあそこは廃校になってそこそこ経ってたな。なら変に誰かに見つかって咎められるもないだろう。それに準備していたものも広げられそうだ」
「準備していたものって何?」
「ふっふっふ……よくぞ聞いてくれたね、藤倉クン。実はこんなこともあろうかと自作の段ボール製配信部屋を用意してあるんだ!」
「「「アホ!」」」
三人が声を揃えて突っ込むものの、桐谷はまるで気にしている様子もなく、満面の笑みを浮かべるばかりだった。
「いやー、すまないすまない。せっかく作ったのに日の目を見ないのはもったいないからね、自分から話を振らせてもらったよ」
「そんなことだろうと思ったよ! ったく……ほら、話してる間にチャンネルの設定は終わったぞ。立ち上げたはいいけど実際の配信は明日だろうな。今日はさっき言った廃校に段ボール配信室を持ち込んでたら終わるだろ」
「門楠の見立ては合ってるだろうな。桐谷のことだ、どうせ段ボールと言っても凝りに凝って作っているに決まっている。むしろ早速移送を始めないと今日中に終わらない可能性もある。車はオレが出そう。門楠は場所の確保をしてくれ、藤倉と桐谷は積み込みを手伝え」
「ああ、もちろんだ。自分で言うのも何だが、結構凄いのが出来たぞ!」
「んもーキリちゃまってばこういうことするんだから、しょうがないなぁ」
翌日のこと。晴れて『機動戦士月神部屋』のタマリバとなった廃校の食堂に4人は集まっている。その一角はテーブルや椅子が部屋の隅に追いやられ、段ボール製ながらも本格的な配信室が広げられていた。それを満足気に確かめながら、桐谷は門楠に話しかけた。
「さて、場所も確保できたわけだし、これからどうしようか?」
「どうするってそりゃあ……まずはこれから行くダンジョンの選定と、それについての情報収集とか配信の告知をしなくちゃいけないだろ。本当なら昨日の内にその話を済ませておきたかったんだけどな! ともかく、ダンジョンは近場で鉄板の東京タワーダンジョンにするぞ。あれこれ考えてまたヘンに時間を取られるのもバカらしいし、その方が僕達にも視聴者にもわかりやすい」
「オレとしても異論はない。門楠の判断なら、間違いなく信用できるだろう」
東京タワーダンジョンは日本で最も有名な固定ダンジョンである。入口はギルドが管理しており、中には探索者登録会場や探索者向けの各種ショップ及びラウンジ、更には一般向けに解放された土産屋すら存在する程に設備が充実している。その規模は極めて広大で常に変化を続けている一方、低層では弱いモンスターのみが出現し、奥へと進めば進むほどより敵が強くなるという性質が確立されている。それゆえに利便性が高く、十分な稼ぎも得られるため、初心者から上級者まで多くの探索者が利用しているダンジョンであった。
「門楠、今日の配信準備はここでやるつもりか? それならオレは一度入口の下見がてら今日のダンジョンの様子を調べてくる」
「ああ、わかった。偵察は任せた、青本」




