1-4 ダンジョンライバーに、なりにいこう。④
「とりあえず互いのタンマツ構築は把握したことだし、今度はライバーとしての設定を共有しておこう」
そう言って門楠は自分のタンマツを操作し、彼が配信で使用するアバターを表示した。画面にはゴシック調の衣服を身に着けた細身の男が映っていた。
「僕はあのドラキュラ伯爵を仕留めたヴァンパイアハンター、ヴァン・ヘルシングという設定で行こうと思う。理由は……特にないかな、単純にコンセプトを考えてる時、その名前が目に入ったからだ。まあ古典だしな、名前を借用しても怒られやしないだろう。僕はこのくらいかな、次は藤倉の紹介にしよう。確かさっき設定画面のままにしてただろ?」
「わかった、じゃあ俺のライバーとしての設定だね。ダンジョンに飲み込まれて外部との連絡が繋がらないまま数年間経過したダンジョン都市で交渉人をやってた、って設定で行こうと思う。名前はジョン・ドウ、ダンジョンで過ごしすぎて本来の名前や記憶を失ったから、名前がないのが名前って感じかな。本人は失った記憶に未練は無いから今生きていければいいや、ってスタンスで行くからよろしく!」
「中々凝った設定だね、配信中のロールプレイが楽しそうだ。じゃあ次は私の紹介でいいかな?」
「ああ構わない、桐谷。オレの紹介は最後でいい」
「じゃあ遠慮なくやらせてもらおうか。私は現代に蘇ったノストラダムスを自称しようと思う。ダンジョン事変のきっかけとなったあの大預言者の復活、ということだ」
「その設定自体はまあいいとして、ファッションアプリは入れてないのか?」
「ああ、私は衣装も髪型も何もかも自前のものでやろうと思っている」
「アホか! それで身バレしたらどうするんだよ! ダンジョン講習でも教わっただろ!」
【ファッションアプリ】とはあらゆるタンマツで使用可能な、ダンジョン内での外見変更用のアプリである。その幅は凄まじいの一言に尽きるものであり、老若男女や人種を問わないどころか、生物非生物すら問わずあらゆる姿形に使用者を変身させることができる。このアプリの存在により、あらゆるライバーはダンジョン探索中に外部での素性を悟られること無く配信を行うことができるのである。
「多分そこまで心配することじゃないよ、門楠。ファッションアプリは導入していて当たり前、これが共通認識さ。つまりは、例え素顔を晒していようと、それがファッションアプリによって作られた顔であると誰もが思っている。だから、これで身バレすることもありえないのさ」
「本当にそうならいいんだけどな……まあ、これ以上は何か問題が起こってから考えればいいか。後は青本の設定だな。何か考えているのか?」
「もちろん考えている。オレは配信だとウルティメイテッド・マンを名乗るつもりだ。ウルトとでも短縮して呼んでくれたらいい。設定としてはそうだな、ダンジョンに発生した超常存在がたまたまそこにいた探索者と事故によって接触、融合して超人となったというものだ」
「オイちょっと待て! 青本、その設定はお前が好きなあの空想特撮番組そのまんまだろ!まさか3分配信したら帰るとかやらないよな!?」
「安心しろ、オレの設定だと3分しかない活動時間はダンジョンの外での話であって、エーテルをエネルギー源とするウルトはダンジョン内だと無制限に活動できる」
「まるきりアレの話だろ! 流石に怒られろ青本!」
「大丈夫だ門楠、オレも怒られたら大人しく引き下がって諸々の設定を変えるつもりだ。ただ、こういうあくまでそれらしい設定の類ならまだ目くじらを立てられはしないだろう。お前だって似たようなライバーの一人や二人見たことあるんじゃないか?」
「まあ確かにあるな、じゃあいいのか。本当にいいのか?」
「私と同じ考え方でいいだろう。好きにやって、問題が起きた時はその時になって改めて考えよう」
「わかったよ桐谷、それで行こう。そうだよな、せっかくのライバー活動なんだ、目一杯楽しんでやるとするか。後は配信につかうチャンネルを作って……あっ、しまった」
「どうしたの?」
「どうしたもこうしたも、チャンネルの名前自体決めてなかっただろ藤倉」
「あーそっか、名前がないとチャンネルが作れないもんね。それじゃあさ、今この場で俺達4人がそれぞれ適当な単語を挙げてそのまま繋げたらそれっぽくなるんじゃないかな」
「いいのか? そんな適当な決め方で」
「あんまりここで凝りすぎていつまでも配信できなくなったらそれはそれで本末転倒じゃん。それにこういう決め方の方が俺達らしい名前になると思うんだよね」
「私はそれに賛成だ! その方が絶対に面白そうだからね!」
「オレとしても異論はない。そうやって決めた特徴的な名前のほうが、視聴者の印象にも残りやすいだろう」
「じゃあ一発勝負で決めちゃおう! 順番は門楠、青本、桐谷、で最後に俺でいこっか。みんなもう単語は決めたよね?」
藤倉の問いかけに対し、他の3人は微笑みながら頷く。それを確認した藤倉が音頭を取った。
「それじゃあ行くよ、せーの!」
「機動戦士」
「月」
「神」
「部屋」
「ちょっと門楠!? 何だよ機動戦士って!?」
「いやいやいや、藤倉お前こそ部屋ってなんだよ部屋って! 他2人はまあいい……か?いや、いいとしても部屋はいきなり雰囲気が変わってくるだろ! でももうさっき決めたからな……いいか、僕達4人は今から――――機動戦士月神部屋だ!」




