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2-15 違法建築注意報。狂気の産物につき⑤

ノストラダムスは更に思考を重ねていく。


(熱帯雨林のピラミッド、ハワイ、ブラン城、コミケ、コロッセオ……どこかで聞いた覚えがある。アレは確か……そうだ、昨日タマリバでしていた話か! 全部私達4人が行きたいと話していた場所だ。――ということは、だ。どうやって私達の願いを知ったのかはともかくとして、あの『偽聖杯』はモンスターのみならず、私達の願いをも叶える意志がある、ということだ。そして『偽聖杯』があのレギオンの手から離れた今ならば、もしかすると私にも使えるかもしれない? 試す価値はある、叶える願いは――決まっている!)


「結局のところ、やれることをやってみるしかない、か! あのレギオンに出来たことだ、私に出来ないはずがない……! 『偽聖杯』よ、もしお前にその意志があると言うのならば、我が願いに応えよ!」


ノストラダムスが叫び、それに反応してか、『偽聖杯』がその脚を激しくバタつかせながら跳ね上がる。空中で止まった『偽聖杯』が強い光を放ち、それが粒子となってノストラダムスを包みこんだ。


「フッ……フハハハ! やれる、やれるぞ! 今の私ならば!」


ノストラダムスは辺りを見渡し、何かを見つけたのか敵モンスターとは見当違いの方向へと駆け出す。そしてそのまま【居合】のモーションで彼は切りつけた、何もない空中を。ヴァン兄貴が叫び声を上げる。


「オイちょっと待て! 何やってるんだノストラダムス! 流石に遊びを挟む余裕はないんだぞ!?」


「何、問題はない。全ては私の計画――いいや、予言どおりだ。そうなるに決まっている!」


ノストラダムスがそう言って振り向くと、彼の後ろ――つまりは先程彼が切りつけた空間に大きな裂け目が生まれた。彼が探して切りつけたのはダンジョンを形成する空間の切れ目、【居合】のシステム補助によって初めて目視できるものである。彼はフワリとその場に浮き、生まれた空間の切れ目を背に高らかに声を上げる。


「1999年7の月、空から恐怖の大王が来るだろう。アンゴルモアの大王を蘇らせ、マルスの前後に首尾よく支配するために――果たして予言は現実となり、ダンジョンが世界に溢れかえった。見よ! 歴史が世界に示した真実を! 畏れよ! 全てを見通す存在を! 讃えよ! 私こそが予言者ノストラダムス! 故に私の言葉は絶対のものである!」


「あれは……まさか空想魔術をやるつもりか!」


「はぁ!? そりゃタンマツの出力じゃ無理なヤツだろウルト! そっからそんなリソースを――さっきの『偽聖杯』がそれか!」


「そういうことだろう、ヴァン兄貴。これは賭けだな、大きな賭けだ。これが成立するかどうかはお前にもかかっている、わかっているな?」


「――そんなの、当たり前だろ!」


ヴァン兄貴はアイドルタンマツを操作し、ノストラダムスの一挙手一投足を余さず配信へ映す。その姿がより偉大に映るように、誰が見てもそれが本物であると断言できるように。ノストラダムスはヴァン兄貴の動きに気がつくと、ニヤリと目に見えて口角を上げ、更に朗々とその口上を配信へ向けて謳い上げる。


「今日! 今! この時を以て! 新たなる予言を示す! 誰もが知るだろう、運命には抗えないということを! 我が敵対者とは即ち運命の敵対者! しかるにそれらにはあるべき裁きが下される! 予言者ノストラダムスがここに断言する! 偽りの王はその望みを果たすこと無く、その信奉者の頭上には星が降り注ぐであろう!」


その言葉を聞いてダンジョンマスゴミがノストラダムスに向かって吠える。


「恐れ多くも陛下に向かって何たる口を利く! 貴様のような輩など、燃えてしまえぃ!」


ダンジョンマスゴミが何かをしようとしたその時、彼の顔面に【特効薬】の瓶が叩きつけられた。その瓶は粉々に砕け、ダンジョンマスゴミはずぶ濡れになり、彼の行動は不発に終わった。


「彼はああ見えて一世一代の賭けに出ている。無粋な邪魔はやめてもらおうか」


ウルトはそう言って再びノストラダムスの方へ目線を向ける。中空に浮かぶノストラダムスの背後、空間の切れ目は【拡大】し、裂け目となったその中にはまばゆき星々が光り輝く宇宙空間と言うべき光景が広がっていた。


「第五元素の神よ――今ここに、人類の勝利を宣言する。人は新たな眼を得て、エーテルの世界を踏破し、絶えず叡智を積み上げる。全てを見通す者として、人類を絶やさんとする試みは不可能であると断じよう! この一撃を以て、人類が更なる一歩を踏み出すための狼煙とする! さあ! これを証明とするがいい、世界よ!」


ノストラダムスは高らかに宣言し、その両手高く天に向かって掲げる。その動作に合わせて配信よってプールされていた余剰魔力が彼の背後、空間の裂け目の中へと吸い込まれていく。


余剰魔力を扱う場合、通常はタンマツによって保証される各ライバーの存在強度によって、各々が扱える量は決まっている。配信によってより認知され、存在強度を強化しているライバーであっても、一度に扱える量には間違いなく限界が存在する。だが、今のノストラダムスが集めている魔力は、とても1個人程度には扱える規模にはない。むしろ限界など今の彼に存在するのかと疑問に思わせる迫力さえあった。当の本人は、その仮面の裏に冷や汗をかいていた。


(危なかった、ウルトがああして『炎上』を防いでくれなければ、こうして魔力を集めることすらままならなかった。だが、ここからが勝負だ!)


裂け目の中で魔力が寄り集まり、固まり、燃え上がり、何かを形成してゆく。果たしてそれは、赤く輝く隕石であった。


「受けるがいい、我らが全身全霊の最大火力を! 讃えよ! 何度でも! 私こそが予言者ノストラダムスである!」


その言葉と共に、静止していた隕石が動き始め、ぽかんと口を開けたレギオンや、その眷属の頭上へと落ちていく。呆けた顔でチカアイドルがつぶやいた。


「あっ、一発で死んじゃう……」

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