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2-14 違法建築注意報。狂気の産物につき④

機動戦士月神部屋の配信に特異個体が、それも見た目麗しい少女の姿で現れたことで閲覧数が跳ね上がる。それに伴い配信によってプールされた余剰魔力も一気に増加した。手元のアイドルタンマツでそれを確認したヴァン兄貴がライバーのメンツに向かって叫ぶ。


「よーしよしよし第1段階はクリアだ! 前提条件は整った、いけるぞ!」


「ひとまずは狙い通りか。ここから先程立てた作戦通りに行くかどうか、だな」


そう言ってウルトはストレージから手元に【パワーポーション】を呼び出すべくタンマツを操作する。彼らが立てた作戦はシンプル。ノストラダムスへ【Re:サイクル】で消費を帳消しにした【パワーポーション】を使用したあと、本来の仕様通りに【懐中時計】と【パワーポーション】を消費して使用すること。【パワーポーション】の2回使用による火力増強に【居合】による威力倍化をかけ合わせた上で、更に配信による余剰魔力をつぎ込み火力を増強、それを【拡大】によって広範囲に攻撃範囲を広げて強化された敵を一気に叩く、というものであった。


モンスターの中には緊急時の回復を可能とする【ポーション】や【ハイポーション】を持った個体が存在し、更にレギオンには元々から復活を可能とする【再生】の性質もあった。そしてレギオンの特異個体としての権能はレギオン自身とその眷属を守る呆れ返るほどに分厚い肉の壁。これを突破しないことには延々とレギオンが【再生】し、泥試合の末に危機的状況へと持ち込まれることが予想されていた。


この作戦の最も重要な点は、先にウルトが動いてノストラダムスへ【パワーポーション】を供給してからノストラダムスが攻撃し、残ったモンスターを後詰めのジョンが仕留める、という行動順を取ることにあった。それゆえ彼らは、事前の情報収集によって得られたアドバンテージを土台としつつ、ノストラダムスが【リモートアクセス】によって【追加詠唱】をジョンへと共有し、その効果で比較的素早く動けるジョンの足並みをノストラダムスに揃えつつ火力増強を計った。その上で行動を加速させられる【クイックポーション】をウルトとノストラダムスの2人がかりでノストラダムスへ適用し、彼の行動を早めることでタイミングを合わせようとしたのである。が、このタイミングでイレギュラーが発生した。タンマツ操作量が増えたことが祟ったのであろう、ウルトは【クイックポーション】使用後にストレージから呼び出した【パワーポーション】をその手から取り落としてしまう。


「な、なにィ……!? しまった、ぬかったか!」


幸いにもその瓶は地面へ落下しても割れることなく転がったが、それを拾いに走った結果ウルトの行動は明確にノストラダムスより遅れてしまっていた。仮にこの状況下で一度待機してから行動しようにも、敵味方共に極めて素早い動きをしている以上、一連の戦闘行動が終わった後にようやく行動を差し込む隙が生まれることが予想された。そのタイミングで【パワーポーション】を使用した所で、もはや手遅れでしかないのである。転がる【パワーポーション】の瓶を拾いながらウルトが叫ぶ。


「すまない、ノストラダムス! 出遅れてしまった! これはジョンに投げる、オレの援護はナシで動いてくれ!」


「さて……どうしたものかな……!」


ノストラダムスは【居合】を起動し、【賢い魔法計画】のアシスト機能である思考加速を使用しながら、敵を見据えて考えをまとめていく。


(参ったね、どうにも……この作戦はウルト――青本の援護ありきで組み立てた作戦だ。青本自身はさっき彼が自分で言った通り支援をジョン――藤倉クンへと回せばそれでいい。彼は2回行動ができるから、私の火力倍化と同等の強化量となる、火力ロスは発生しない。問題は私自身の火力だ。確かに強化したことで十分戦闘に耐えうる能力にはなった。だがそれでも、今の私と藤倉クンの戦闘能力とは比べるべくもない。ウルトの支援を得た上で配信のプールされている余剰魔力をつぎ込み、更に【居合】をクリーンヒットさせることによる威力倍化。これだけのことを積み上げてようやく強化された眷属の首手がかかるかどうか程度の戦闘能力しかない。要は、欠けた分の火力をどうにかして補う必要がある、というわけだな。……どうする?)


ノストラダムス一瞬口に手を当てるものの、すぐさま小さく首を横に振った。


(ダメだ、最初から私の手札に無かったからこそウルトの強化を頼ったんだ。今更解決策自分の内に求めても仕方がない。つまり求めるべきは、外部要因、ということだ……!)


ノストラダムスは辺りを見渡し、ふと一点を注視した。そこにはレギオンの肉壁に紛れて『偽聖杯』がヨタヨタと歩いていた。完全にレギオンの手からは離れている。


(あの【偽聖杯】、レギオンのためにステージを用意したと言っていたが……なぜ、コロッセオの形にした? そもそも、熱帯雨林のピラミッド、ハワイにブラン城とコミケとコロッセオとあまりに構成がチグハグ過ぎる。如何にダンジョン内部の空間が現実では考えられない構成をしているからと言っても、認知の影響を受ける以上は何かしらの関連性が生まれるはずだ。ましてやこのダンジョンが生成された場所は都内の路地裏、そこにこんなダンジョンが出来上がった理由は何だ……?)


思考加速を使用してから0.1秒が経過。

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