2-11 違法建築注意報。狂気の産物につき①
――彼らは歩いた。うだるような暑さ……を錯覚させるような太陽の下、見慣れぬハワイらしき街並みを楽しみながら歩き続けた。ふと、タンマツを確認していたウルトがその動かない口を開く。
「さて、反応はこの先から来ているんだが……少し気になることがある」
「いや、まあ言わずとも気になっていることはわかる」
ジョンが見つめているその視線の先、そこにはあったのは人、人、人……様々な方向から現れる数多の人間らしき存在の姿だった。接触を試みたノストラダムスが戻り、その結果を共有した。
「やはりと言うべきか本物の人間ではないらしい、話しかけたり干渉しても一切の反応を示さないまま、変わらず一定方向へと歩き続けている。この人らしき何かが、我々の向かう先へと集結しているようだな」
「彼らの目的地も、オレ達と同じなのだろう、ノストラダムス。しかも近づくにつれて段々と数を増やしている。流石にそろそろ見えてくるはずだがな」
突如として先頭を歩いていたジョンがその足を止めた。彼は困惑した表情でただ一点を見つめたままその場に固まる。
「……おいウルト。もしかして、アレのことか?」
「アレ、らしいな……なぜ、こんなことになってしまっているんだ……?」
2人が見ているものを見つけたのか、ノストラダムスが腹を抱えて笑い出す。
「ワハハハハハハハ!!! 何だアレ!? 凄いぞヴァン兄貴!」
「バカじゃねぇの!? バカじゃねぇの!??!? 誰だよあんな違法建築を考えたの!」
彼らの視線の先、はっきりと波の音が響く海岸沿いに、それはあった。おそらくは元々山間にあったのだろうか、見事だったであろう古びた石造りの城塞。それを押しつぶすかのごとく上に鎮座する逆四角錐型らしき巨大建造物。その滑らかな表面は陽光を反射してきらきらと輝いていた。そして更にその上、逆四角錐の天面に円形の石像建築が乗せられている。無数の柱とアーチによって装飾されたそれは、あたかも狂気的な建造物に王冠を被せているようにも錯覚させた。キレー牧師が困惑を隠さないままつぶやく。
「……流石に絶句するなこれは」
「遠目でみるとわっかんねぇけど、なーんか見覚えある気がするな……土台になってる城、ありゃあ……ブラン城、か? 写真でしか見たことがないから確信はないけど」
「オレも詳しくはないが、ヴァン兄貴に見せてもらった写真と似た意匠はあると思う、その意見に同意しよう。上に乗っているのは……まあローマのコロッセオ、だろうな」
「アレに関してはウルトの言うとおりだろう。真ん中のやつは逆さになったエジプトのピラミッドかな? いやぁ、本当に凄いものが出てきたな! 見ているだけでワクワクしてくるよ!」
「いや……違うぞノストラダムス! よく見ればピラミッドにきちんと柱が繋がっているし先端部分が空間になっている。アレは――東京ビッグサイトだ!」
「つまり何だ、我々の目の前に鎮座するアレはブラン城ビッグサイトコロッセオ、ということかジョン!? 凄いな! いや本当に凄いぞこれ!」
「少し興奮しすぎだ、落ち着きたまえノストラダムス君。先程から語彙力が段々と無くなってきているぞ。しかし、改めて近づいて見てみると……ハハハ、素晴らしいな。それなりにダンジョンへは潜っているつもりだが、こんな正気を疑うものは見たことがない」
「だよねぇ!? 流石にねぇ!? もし2度目3度目だとか言い出したら俺はアンタの正気を疑うところだったよぉ!?」
ヴァン兄貴のツッコミをキレー牧師は乾いた笑いで受け流す。彼らが話しながら歩いている内に目的地へと到着していたようであった。ジョンが辺りを見渡す。
「さて、あれこれと騒いでいる内に下部の城へと到着したわけだが……やはり、あの人らしき何かでごった返しているな」
ウルトが自らのスカウトタンマツを使って辺りの情報を確認した。
「なるほど、これだけの人混みに紛れる形だが、城の入り口に特異個体の反応が2体ある。コスプレイヤーのてい、なんだろうな。恐らくは門番の役割か」
「ならば、ここは私の出番ということだろう」
キレー牧師は自らのタンマツを確認し、一つ頷いた。




