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2-6 ピラミッド遺跡、熱帯雨林にて③

彼らが気を抜いて会話をしている隙にダンジョンマスゴミとダンジョンチンピラが攻撃を仕掛けるものの、その攻撃は察知していたのか、ウルトは片手間にアプリでその2体の攻撃を不発にさせた。その隙を逃さず、ヴァン兄貴がダンジョンチンピラへと躍りかかる


「お・ま・た・せ……じゃあ死ねぇい!」


彼はダンジョンチンピラの目前に長い棒を突き立て、そこで【ポールダンス】を踊り始める。ポールの周りを回りながら、時にダンジョンチンピラをビンタし、時に遠心力を活かすように蹴り飛ばしながら彼は踊った。既に深手を負っていたダンジョンチンピラはその一撃で倒れかける中、踊ったのが男でありながらもその高い芸術性でヴァン兄貴の【ポールダンス】はかなりの閲覧数を増やすことに成功していた。倒れ伏す直前、ダンジョンチンピラは手にしていた【ポーション】を自分に使用し、ギリギリのところで持ちこたえることができた。それを見てヴァン兄貴がニタニタと薄ら笑いを浮かべる。


「ねぇ、その【ポーション】をさっきあのトカゲ野郎に使っておけばアイツ俺達のことぶん殴れてたよね? お前のミス一つで形成がだいぶ変わってんだけど、ねぇ今どんな気持ちぃ?」


「ヤメッコラー! ナンオラー! ザッケンナコラー!」


ダンジョンチンピラが言葉になっているようでなっていない叫び声を上げる。その攻防の裏でローパーがそのツタをノストラダムスめがけて伸ばし、その魔力を吸い取ろうと襲いかかったが、その攻撃は虚しくぺちんという乾いた音を響かせるのみであった。


「……哀れな」


「そう言ってやるなよノストラダムス。あー、えー……我々の圧倒的優位であります。他の言いようなんてありませんね、ええ」


【戦闘実況】アプリを使用して戦況をまとめたヴァン兄貴もまた、遠い目をしていた。結論としては、後の戦いはまさに消化試合であった。敵のモンスターに有効打がない上、ウルトが新しく導入した【エリアヒール】アプリと【懐中時計】ツール及び【Re:サイクル】アプリをフル稼働させることによる味方全体へ2回の回復を可能とする構築により、戦闘が長引けば長引くほどに機動戦士月神部屋の面々のリソースが回復するというある種の逆転現象が起きていた。彼らは半ばいたぶるような形で敵をあえて低火力ながらも閲覧数を稼げるような形で攻撃し続け、ウルトのアプリでリソースを回復しきった後、最終的にジョンがブラックオーで放った光線により敵は跡形もなく消し去られた。人間型の敵も予想通りダンジョンによって生み出された存在であったらしく、彼らが攻撃を受けて倒れた後その肉体は光の粒子となってダンジョンのエーテルに溶けて消えた。


戦闘を終えた彼らがふと祭壇の上を確認すると、そこでは猛スピードで跳ね回りながら手にした剣を同時に何本も投擲して『偽天使』と渡り合うキレー牧師が居た。既に敵方の『偽天使』は残り1体となっていた。『偽天使』はその剣を構え、上空から加速を加えてキレー牧師めがけて打ち下ろす。キレー牧師は両手に構えた剣を全て一度に投げつけるものの、『偽天使』はその手に握った盾で全てを弾き、剣をキレー牧師に叩きつける。衝撃によって辺りに地面の破片や土煙が舞う。視界が晴れるとキレー牧師の姿はなく、『偽天使』のみがその場に残されていた。『偽天使』のその背後、敵の攻撃を回避したキレー牧師がロケットランチャーを構えていた。そのまま彼はロケットランチャーを『偽天使』の背中めがけて撃ち込み、爆破した。爆風が収まるとその場には黒焦げになり、光の粒子となってエーテルに溶けゆく『偽天使』と、無傷で佇むキレー牧師の姿があった。戦闘の終了を確認し、ジョンがブラックオーの装備を解除する。


「一気にパワーを出すと流石に消耗が激しいな。だが、【パワーポーション】の強化分も相まっていい火力になった」


「流石だな、ジョン。今回はまさに鬼神のような働きだ。前回苦戦した得意個体も楽に倒せるんじゃないか?」


「今はまだ使うつもりはないが、実は隠し玉があるんだ、ノストラダムス。それを使えば仮にあの特異個体が相手であっても十分正面から叩き潰せるだろう。1度のダンジョン探索に付き1回切りしか使えないから、そうそうやすやすとは使えないんだがね」


「最後の一撃で消耗した分の魔力はオレが後で回復させよう。さっきの戦いだとお前が最初に強敵を倒してくれたおかげでかなりの余裕があったからな。もっと消耗が激しい戦いになったとしても、今のオレなら十分保たせることができるはずだ」


タンマツを操作して先の戦闘での動きを確認しているウルトに、戦闘を終えて合流したキレー牧師が話しかける。


「ふむ、無事のようだね。消耗が軽いところ申し訳ないが、一度キャンプを張らせてもらえないかね? こちらのほうはいささか手こずらされてしまってな、少しばかり魔力供給の時間を貰いたい」


「私は構わないが、皆はどうかな?」


「まあいいんじゃねーの、ノストラダムス。俺も俺で一曲歌って配信の数字稼ぎたいしさ」


「ヴァン兄貴はオレ達の生命線だ、彼に歌ってもらわなければ我々が困る。そもそも一度安全地帯を確保しないことには、こちらも安心して情報収集に向かえないからな。そうして貰えるのはオレとしてもありがたい」

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