2-4 ピラミッド遺跡、熱帯雨林にて
彼らが暗く狭い通路を抜け広い空間へと出るとそこは一面の熱帯雨林が広がっていた。
「うわっ、あっちぃなココ……一応【ファッション】アプリのおかげか、この暑さの中厚着しててもそこそこ快適だから熱中症で倒れたりはしないだろうけど、にしたって雰囲気だけでもスゲー暑いぞ」
「見渡す限り灼熱の森、森、森と来たか。嫌になるな、全く」
【ファッション】アプリでおよそ熱帯雨林の探索には似つかわしくない格好をしているヴァン兄貴とジョンの2人がぼやく中、ウルトがタンマツを確認し、現在値と向かうべき方向を確かめる。
「よし、敵の反応はこっちだな、案内しよう」
「私は離れたところで配信するとしよう。その代わり先導は頼む」
「視聴者の認知を奪い合わないための処置か、配慮に感謝する、キレー牧師」
「さて、鬼が出るか蛇が出るかだな……」
ノストラダムスは顔に吹き出す汗を拭いながら、あたかも暑さを感じていないようなそぶりでつぶやいた。
一行がしばらく足場が悪い中をどうにか進んでいると、唐突に開けた場所に出る。彼らの目の前には石造りのピラミッドがそびえ立っていた。
ウルトが手元のスカウトタンマツと目の前の建造物を見比べ、他の4人へと振り返った。
「あの遺跡だな、間違いない。敵性反応は2グループともあそこに集中している」
「早く殺そうぜ! 気が滅入ッちまうよ!」
「ヴァン兄貴はダンジョンに入ると元気になるなぁ……」
ジョンがぼやく中、一行はウルトの案内に従ってピラミッドの遺跡の中へと入っていった。
ピラミッドの入口を抜け、人が1人分ようやく入る程度の狭い石造りの通路を進んでいくと、彼らは広い空間へとたどり着く。中央の祭壇には高位の天使らしき様子のモンスターが3体、そしてそれを崇めるように囲むモンスターが4体居た。モンスター達は侵入者に気がつくと、まず祭壇の下に居たモンスター達が集まって戦闘態勢に入る。その内2体は人間そのものの姿を、1体はツタを自在に操る植物の姿を、そして1体は人とトカゲを間の子にしたような姿をしていた。人型のモンスターが武器を構えて威嚇するかのように声を上げる。
「ナンオラー! ザッケンナコラー! スッゾコラー! スッゾスッゾコラー!」
「僕は正義のカメラマンだ……誰が何と言おうと正義のカメラマンなんだ……!」
彼らの姿と手元のタンマツを照らし合わせながら、ノストラダムスがつぶやいた。
「ダンジョンチンピラが1、ダンジョンマスゴミが1、それとローパーにリザードマンが1ずつ。ウルトのくれた情報通りだな……しかしどうにも、人間の姿をした敵というのはやり辛いな」
「そうは言うがな、ノストラダムス。モンスターにも色々あるだろう、当然、人間にもだ。極論、モンスター相手に対話が成り立つこともあれば、人間相手に敵対するしか無い場合もある。つまりはそういうことだ」
そう言ったジョンが辺りを見回しキレー牧師を探すと、彼は既に祭壇の上で天使らしきモンスター達と相対していた。
「ふむ、君達も接敵したな。事前の話通り、こちらは私が請け負うとしよう。君達にはいささか、荷が勝ちすぎる。何より、『偽天使』狩りは私の本業なのでな」
そう言ってキレー牧師は指に挟むことにより両手で爪のように6本もの剣を構える。祭壇の上のモンスターの心配が無くなったとわかり、ジョンは改めて目の前の敵を見据え、戦闘態勢に入った。左腕に付けているタンマツ連動デバイスを口元に寄せ、力強く叫ぶ。
「では、こちらも始めるとしようか! ブラックオー、アークション!」




