1-26 帰還。そして日常へ…… ①
東京タワーダンジョン探索者ギルド。日々多くのライバー達を送り出し、彼らの帰還を出迎えるこの場所の受付に、機動戦士月神部屋の4人は来ていた。ダンジョン探索の初配信から無事に帰還した彼らを、東京タワーダンジョンの受付嬢が出迎えた。
「おかえりなさい。皆様の帰還を、歓迎します。いい探索でしたか?」
彼女の問いかけに対して桐谷が配信用のノストラダムスの格好をしたままで答える。
「ああ! 存分に楽しませてもらったよ!」
「それは何よりです。是非また探索にいらしてください。ああ、それと……その格好のままダンジョンの外をうろつくのはご遠慮願います。あなた方は今や多くの人々に知られるライバーなのですから、そのままあちこちに行ってしまうと容易に個人が特定できてしまうのです」
「おっと、それは気をつけないといけないね、ありがとう。とは言っても、我々はついさっき初配信を終えたばっかりだ。そんなに知られるようなこともないんじゃないかな?」
「一般の視聴者に関してはそれほどでは無いかもしれませんが、私達職員の間では噂になっていますよ? 初配信でありながら特異個体との遭遇、更には撃破まで達成できるライバーチームはそうそうありませんから。――随分こってりと絞られたと聞いていますよ?」
「勝算もちゃんとあってやったことなんだけどね……」
桐谷はいそいそと更衣室へと向かい、他の3人は彼の着替えをこの場で待つこととなった。桐谷と受付嬢が話をしている間、自分のタンマツを操作していた青本は、少し難しい顔をしてタンマツをしまうと受付嬢に話しかけた。
「ああ、すまない。少し頼みたいことがあるのだが……世界探索者教会のキレー牧師に連絡を取れないだろうか? ダンジョンで世話になった礼がしたい、と伝えてほしい」
「……ああ、彼ですね。わかりました、伝えておきましょう。ですが彼もまた、牧師とライバー、更にはラーメン屋の店主までもを兼ねている身です。多忙な方ですからすぐに連絡が取れるとも限りません」
「ああ、もちろん構わない。よろしく頼む」
「ちなみに……どのような礼、を彼にするつもりなのでしょう? 彼に対するその……お礼参りはことごとく失敗して、代わりにラーメンをお見舞いされる事例が相次いでいるのですが……」
「実際に、戦闘後現れた追撃のモンスターから助けてもらったから、その礼をしたいだけなのだが……それほどまでに彼は恨みを買っているのか?」
「先程のあなた方の配信は、私もざっくりとですが確認しています。食べたのでしょう? 彼のラーメンを。あの外道ぼ……いえ、極めて極端な物好きの彼は度々あのように新人のライバーへあのラーメンを提供しては、彼らの苦しみ悶える姿を見て愉悦に浸っているのです。無論親切心もあってのことではあるはずなのですが……恨みを買う行為であるのも事実です。彼自身は食べることを強制してはいないので、逆恨みといえば逆恨みなのでしょう。かの牧師はダンジョン外での身分を晒したうえでライバーをしていますから、そうして彼にお礼参りをしては……返り討ちにあって再びラーメンをお見舞いされてギルドに泣きつく、という事例が後を絶たないのです。本当に」
「気持ちはわからないでもないが……流石に自己責任だろう、それは。あの様子だと、もし我々が食べなければ、キレー牧師が自分で喜んで食べていたに違いない。ともかく、我々はそういうつもりはない。あのラーメンだって、味は別として配信と探索の両方で助けられたことは間違いないからな、味は別として」
「悪意はあれど、人の助けにはなっていますから……まあいいでしょう、お話は承りました。我々から彼の方に連絡はしておきます。連絡がついたら、あなた方の連絡先を渡しておく形になりますが、構いませんね?」
「それでいい、手間をかける」
「ええ、本当ですよ……実を言うと、私もアレを食べさせられそうになったので、それなりに気持ちはわかるのです。あまり話をしたい相手では無いのですよ」
そう言って受付嬢はカウンターの裏から500mlの缶を取り出し、プルタブを引いてごくごくと呑み始める。
「ストマク……ストロングマックス21%500mlです。あなたもいかがですか?」
「ああ……あいにくオレ達は全員未成年、19と18だ。遠慮しておく」
「えっ、あのおいしそ……失礼、年若い子はともかく他の皆様も未成年……? さっき仮面をしていた彼も……?」
「作画が違うとはよく言われる」
青本が受付嬢との話に興じている内に桐谷は戻ってきていた。4人は荷物をまとめると、受付嬢に会釈をしながらギルドを出る。受付嬢も会釈を返すと再び缶の中身を呑みながら、改めて仕事に戻った。




