1-25 輝く星の下で ⑤
ゴーレムは力なくその場に横たわり、その身体をビクつかせていた。既に戦闘はおろか、まともにその四肢を動かせない様子であったが、意識ははっきりとしていた。
「ガガガガガ……負けてしまったであります。これではニンゲンさんのお世話ができない……であります」
「私達の作戦勝ち、というやつだな。危うい場面もあったが、うまく行ってよかった」
「しかしなノストラダムス、私が1体仕留め損なった時は正直、どうなることかと思ったぞ?」
「ジョンだけが危うかったわけじゃない。どこかでもう少しうまく行かなかったところがあれば、そこから一気に崩されて全滅していただろうな。恐らくは見た目以上の、薄氷の勝利だった」
「なぁに、勝ちゃ官軍よぉ! 勝者の権利として手持ちのアイテム剥ぎ取りさせてもらおうか!」
そう言ってヴァン兄貴がゴーレムのパーツを外しながら戦利品を漁り始める。
「ああっ! あまり変なところはまさぐらないで欲しいのであります! 関節が外れちゃう――のであります!」
戦利品を集めながら、ノストラダムスが他の3人へと話しかける。
「流石にそろそろ引き際だろう。特異個体相手に突っ込むという時点で中々の無茶だった。これ以上の探索は命が危なくなりかねない」
「賛成だね。私もヴァン兄貴も随分と魔力リソースを消費してしまった。ウルトも先程のダメージで随分と魔力を削られたことだろう。これ以上奥に踏み込んでみたとしても、まともに戦闘できるとは、とても思えないな」
「オレも帰還に賛成だ。ジョンの言う通り、オレのリソースも心もとないからな。帰り道はこれまで通ってきたルートを使えばいいだろう。既に一度掃討してあるから、安全は確保されているはずだ」
「まあいいんじゃねーの? 数字だけ見ても初配信にしては出来過ぎなくらいの大成功だもの。わざわざここで欲張る理由もあんまないでしょ」
ヴァン兄貴はあいも変わらずゴーレムの身体をあれこれといじくりながら使えるアイテムがないかを漁っていた。ふと、何かの留め具が外れたような、ガキンという鈍い音が響く。
「あっ――であります」
「あっ、ごっめーん。色々ガチャガチャやってたら本格的に壊れちったわ」
微塵も申し訳なさを感じさせないヴァン兄貴の棒読み台詞と共に、ポロリとゴーレムの頭が外れ、首から下と分離する。その時、残されたゴーレムの身体がまばゆく輝き始める。
「何の光ィ!?」
驚くヴァン兄貴の目の前でゴーレムの身体――その胸部から突如として何かが飛び出した。それはゴーレムの身体を光らせていた光源そのものであり、黄金色をした大型のコップのようなものであった。飛び出したそれはちょうどジョンの目の前に落ち、彼は恐る恐る手を伸ばして拾い上げた。
「輝く黄金の杯……これは聖杯か!?」
「まさか……『偽聖杯』か!? 馬鹿な、さっきの今だぞ!?」
「えっ、さっき胸に何かが生まれそうって言ってたのこれのこと!?」
ジョン、ノストラダムス、そしてヴァン兄貴の3人が驚く中、ウルトがスカウトタンマツを操作していた。が、うまく行かなかったらしく、首を横に振りながら3人へと話しかける。
「――ダメだ。キレー牧師と連絡が繋がらない。こちらのタンマツに異常は見られないということは、向こうが今繋がらない状況にあるということらしい」
「ひとまず僕達で回収して保管するしかない、か? 少なくともこんなダンジョンの真ん中に放置したままよりかは……マシだろ、多分……ジョン、管理頼んだ」
「私がやるのかね!? まあ、別に構わんが……タンマツのストレージが狭くなるな、全く」
ヴァン兄貴に管理を押し付けられ、ボヤキながらもジョンはタンマツに『偽聖杯』を収納し、彼らはダンジョンを脱出した。ウルトの予想通り、既に掃討してある部屋にモンスターが追加で現れることもなく、彼らは無事に帰路へつくことができた。




