1-22 輝く星の下で ②
事前の調査の甲斐あってか、最初に動いたのはウルトだった。
「まずは足元を固めさせてもらおう」
そう言って彼は両手を合わせ、その両手のひらの間から猛烈な勢いで水流を発射し始めた。通常の水流ではないらしく、それはフロア・スペクターの影響下にある地面を泥濘にすることもなく、足場となる硬い地面に固めていた。しみじみとウルトの動きを眺めていたヴァン兄貴が問いかける。
「……どっから出てんのそれ?」
「さあ?」
「さあ!?」
そんな会話をしている間、遂にフロア・スペクター自体もその水流によって身じろぎ一つ取れない程に固められ、ウルトはその罠モンスターの無力化に成功した。ゴーレムは焦る様子もなく攻撃体制に入った。
「まさか動きを止める前にフロア・スペクターが止められるとは思わなかった――のであります。ですが、ニンゲンさんのお世話がしたいというワレワレのケツイは硬いのであります! 大人しくお世話されるのだ――であります!」
そう言ってゴーレムは地面に叩きつけようとしているのか、身体を反らしながらその両手を大きく振りかぶった。
「おっと、それは見過ごせないな。差し込ませてもらおう」
ウルトはゴーレムの攻撃動作を確認するやいなや片手に光輪を生み出し、それをゴーレムの顔面へと投げつけた。ゴーレムにダメージこそないものの、彼女の視界が一時的に塞がる。その隙にウルトは両手から小さな光の矢を放ち、ゴーレムの両手に装着されていた、攻撃用らしき機械にそれぞれ命中させる。
「あややややや! 【妨害】はやめてほしいのであります~~~! ですが、この程度で止まるワタシではない――のであります! 【アースクエイク】を食らうのであります! ダメージがあっても回復するまでお世話するのでありますよ!」
ウルトの妨害に姿勢を崩しながらも、関節の機械を軋ませながら強引に両手を地面に叩きつける。だが、何も起こらない。両手の機械から薬莢が排出され、中身の詰まった鈍い音が響く。
「なっ!? まさか不発――でありますか!?」
「隙ができたな! ならばゆけ、ドラグーンファングよ! 範囲を【拡大】して叩くとしようか! ダメ押しだ、限界稼働を食らうがいい!」
ノストラダムスが叫ぶと共に光刃が彼の背中から展開され、戦場に残された敵を取り囲む。配信によって貯蔵された余剰魔力が注がれ、ドラグーンファングの光刃が更に煌々と輝く。だがサハギンは怯むどころか勝ち誇ったように叫んだ。
「馬鹿め! そのような範囲攻撃など、【潜行】すれば当たりはせんわ!」
「あいにくと追尾式だ、地面に潜った程度で逃れられはせんぞ!」
「怖いか人間よ! 己の非力を――えっ」
地面に【潜行】したサハギンにドラグーンファングが追尾し、その光刃が深々と突き刺さる。暴れるサハギンがドラグーンファングによって空中へ運ばれ、そのまま地上へと叩きつけられる中、ノストラダムスは的確に手にした光刃でレイスとゴーレムを刻んでいく。更には空中に浮かせた光刃で追撃を加えたが、その魔力の光はレイスには【霊体】故にすり抜けてしまい、ゴーレムにも【装甲】で弾かれてしまった。結果としてサハギンの傷は深かったが、レイスとゴーレムにはさして損害を与えられていなかった。だが、それ自体は織り込み済みであったのかジョンがすぐさま追撃に動く。
「あいにくと、交渉の余地のない相手にも慣れているんでね! 動かれる前に手早く片付けるとしよう! 【コンセントレイト】【クリティカル】【ブレイブ】【インパクト】多重起動! 【土竜】の一撃で終わりにさせてもらおう!」
ジョンが操作するブラックオーの両目に、強化されたアサルトタンマツの魔力が注ぎ込まれる。特に意味もなくその脇に潜り込み、アイドルタンマツのカメラアプリを【シャッターチャンス】の補助を加えて操作しながらヴァン兄貴が叫ぶ。
「へぇっへへぇ……いつもの頼むぞ、ジョン! 折角の見せ場だ、事前の作戦通りぶっ放しちまえよ!」
「無論だとも、遠慮なく使わせてもらおう!」
ジョンは配信による余剰魔力をブラックオーに注ぎ込み、その膨大なエネルギーによって両目だけでなく頭部もまばゆく輝き始めた。それを見たサハギンが懲りた様子も無く叫ぶ。
「馬鹿め! それは先程と違い、個別追尾型ではなく広域放射攻撃! 【潜行】すればそんなもの当たりはせんわ!」
「ふっ、地中に逃げる相手を確実に仕留める方法は何だと思うかね? 潜む大地そのものごと焼き払うことさ!」
「怖いよ人間は! 己の非力を嘆く――!!」
ブラックオーが頭部から見るからに高出力の光線を発射し、敵陣を一息に薙ぎ払う。虚勢を張っていたサハギンは跡形もなく消滅。ゴーレムの【装甲】は赤熱し、内部の機械にもダメージが通ったのか動きは先程と比べぎこちない。レイスもその【霊体】を焼かれ消滅寸前となっている。だが、まだ戦場に存在し続けていた。ブラックオーの装甲の下、ジョンの頬に冷や汗が伝う。
「まずい、討ち漏らしたか……!」




