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1-2 ダンジョンライバーに、なりにいこう。②

ダンジョン講習を終え、探索者の卵となった4人の前には、4つのレンタル【タンマツ】があった。それぞれ別の会社によって開発されたものらしく、外見のデザインや細かいUIが異なっていた。ダンジョンライバーを管理指導する探索者ギルドからは、ライバー1人につき1台【タンマツ】が貸し出される。この【タンマツ】を手に入て配信用のチャンネルを作ること、それこそがダンジョンライバーを始める第一歩である。【タンマツ】一つずつを手にとって比べながら、藤倉が門楠へと振り返る。


「ここにあるタンマツってそれぞれ全部得意分野が違うんだよな。確かメンバーの得意分野をバラけさせた方が強いって話だったっけ、門楠?」


「強いというか、生存確率が高いだったな、父さんの話が確かなら。まあ多少の偏りがあってもちゃんと生き残るヤツはいるらしいぞ。ただ、少なくともアイドルタンマツを使ってるチームの生存率は高いって話は覚えてる」


「門楠の両親は探索者ギルドで探索者のサポートの仕事をしているんだったな。それならダンジョン講習の内容よりもより現場の実情に近い情報が得られるわけだ」


「とは言っても、ダンジョン講習の内容もあまり大きな差は無かったぞ青本。僕の視点からすると、むしろダンジョン講習の信頼度が上がったくらいだ」


「まあ、私はこの4人ならどんなことが起ころうと乗り越えていけると思うがね。というわけで私はウィザードタンマツにしようか」


「あっ、ドサクサに紛れてずるいよ桐谷! じゃあ俺はアサルトタンマツね!」


「そもそもこのメンバーだ。器用貧乏が4人揃ってるなどというオチなんて無いだろう。だからオレはスカウトタンマツにする」


「オイちょっと待て青本その『だから』は話が繋がってないだろ! というかしれっと僕がアイドルタンマツ確定かよ!」


「や、だってアイドルタンマツを使ってるメンバーが居るほうが生存率高いんでしょ? とゆーかアイドルタンマツ持ちは配信で歌ったりするじゃん。そういう意味だと一番適任なのは門楠だって」


「ああ、【歌ってみた!】アプリか……クソッ、確かに藤丸はともかく他二人に任せたらマズイ未来しか見えないな!仕方がない、僕がアイドルをやるしかないのか」


「何なら門楠は歌だけじゃなくてギターも弾けるだろう? そういう意味では明らかに配信映えすると前々から思ってたんだよねぇ」


「なるほどそうかそういうことだったんだな桐谷! お前と青本が事あるごとに僕がギターを弾くのをせびってたのは最初から僕にアイドルをやらせるつもりだったってことかよ!」


「でもその甲斐あってかちゃんと見せられるくらいの腕前になったんだからいいことじゃないか」


「お前達は気楽でいいよな青本、僕は今からでもアイドルやってるところをクラスメイトに見られたらなんて言われるか心配で仕方がないんだぞ……」


「まあまあ、【歌ってみた!】アプリは優秀って話なんだし門楠の腕前なら悪いことにはならないでしょ」


【歌ってみた!】アプリ、これはアイドルタンマツ専売の配信サポートアプリである。藤倉が言っていたように一般的な共通認識のレベルで、アイドルタンマツのアプリの中でも群を抜いて優秀なアプリとして知られている。切り抜き作成機能こそないが、歌を配信に乗せるための機能はほぼ完全に網羅した上でストレスフリーなUIを備えている。更に、楽器を弾きながら歌えばその音声を探知して自動でカラオケ音源から不要な音を削除する機能や、配信上に乗せる際に歌や映像を分析し自動でエフェクトや演出を乗せる機能などが存在する。これらの機能により、単純にライバーの歌配信を好む者だけでなく、歌そのものよりも【歌ってみた!】アプリによる演出を楽しむ視聴者も現れ、【歌ってみた!】アプリそのものが配信における一つのジャンルとなりつつあった。それ故に、アイドルタンマツを使用する者はよほどの理由がない限り【歌ってみた!】アプリを使用することが当たり前になっており、また当然のようにライバーの歌配信はあたかも戦場のような激しい競争を見せていた。


ぶつくさと文句を言いつつタンマツの初期設定を進める門楠に、桐谷はそれを気にするようなそぶりすら見せずニコニコと笑いながら話しかける。


「じゃあこれで全員のタンマツも決まったことだし、今度は配信に向けた諸々の設定をしないとだね。門楠、手伝ってくれないか? こういう実務的なものに一番詳しいのは君だろう?」


門楠は軽くため息をついたあと、タンマツに落としていた顔を上げ、微笑を浮かべながら桐谷へと振り向いた。


「はいはい、順番にな? 僕だって自分のタンマツは初めてなんだから、まずは勝手がわかってからみんなのフォローに入るよ」

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