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11−3 ポーレット領

 ティモシー・ポーレット侯爵は領主の館の門外にて私を出迎えた。そこで跪き、私の手に口づけた。

「我が聖女テティス様、公式に聖女と認められた事、心からお祝いいたします」

「ありがとう。ですが、次の危機が迫っております」

「伺っております。少しお休みいただいた後、お話をお聞かせ願えますか?」

「もちろんです」


 もちろん、ポーレット侯爵は聖女審査の内容を尋ねる事はしなかった。そういうしきたりは私より熟知しているのだろう。


 その後、会議室で修道兵も混じって状況説明が行われた。持ち込まれた王国西部の地図を指し示しながら、修道兵が報告をした。

「北西部コーンウォリス領付近の王国領外にて魔獣の群れの移動が観測されておりました。獣道を群れて移動する様から、犬系の魔獣と思われておりました。聖女審査終了に合わせて行動するには個体数と移動速度の点から犬系が選ばれたと思われ、現地では速度が劣るもっと大型の魔獣も扱っている可能性があります」

ポーレット侯爵がこれに答えた。

「この周囲では西部教会による魔獣の間引きが行われているから、オルトロスやケルベロスに襲い掛かる様な大型の魔獣はいないだろう。その点からしても充分な戦力が投入出来ると考えたのだろう。実際、西部教会ならともかく、西部の領主ではオルトロスやケルベロスの群れに対抗出来ない」

「西部教会からも各地の教会を経由して早馬を出しますが、侯爵閣下からも早馬をお願いします」

「早馬と共に、証拠の魔獣の移送も近隣の領主に働きかけて第二騎士団の拠点まで運ぶ手配をしよう」

「よろしくお願いします」

「聖女テティス様は本件、何かお考えはあるでしょうか?」

ポーレット侯爵から話を振られても、私の答えは決まっている。

「基本的には王家の意向に従いますが、サーバント川の渡河には立ち会った方が良いと考えております」

「そうしていただければ王家の臣としては助かります。無理のない範囲でのご助力をお願いします」

「ええ、お気遣い感謝します」


 こういう情勢なので、晩餐には周辺に領地を持つ貴族達は呼ばれなかった。しかし、晩餐の席では私の聖女就任を祝福する説法の為だけに聖堂のダニエル・コロンボ司教がやって来た。

「この世の万物に母なる愛を注ぐ聖女テティス様に、この世の生物を代表してこのダニエルが聖女就任を祝福させていただきます」

この世、つまりこの地に万物を持ち込んだのが偽ウトナビシュトを作った人々である以上、この祝福とやらはつまりこのささやかな人類のテリトリーを守る力の一つとしての聖女を彼等が認定する意味がある。


 …重責過ぎる。


 天の端に位置すると思われるこの世界、その人類のささやかな灯を私如きに守れというのだ。そもそも、ダニエル司教が聖堂に私を呼んだのが、あの設備を見せて魔力が使えない場所がある事を悟れという意味だったとしたら、私は落第点だった。


 ダニエル司教は食べ物も食べずに帰って行った。晩餐は和やかなものだったが、皆の心の中に次なる危機が控えていた為、会話はあまり弾まなかった。翌朝、出発前に嫡子ハリソンを空腹状態で診察する事を約束して宴は終わった。


 私達は長旅になる為、軽い朝食を取った。その後にハリソン・ポーレットの体内の状態を診たけれど、右手の先に若干血行が悪い部分がある以外に酷い障害は見当たらなかった。

「右手を一日何度かお湯などで温める方が良いと思います。特に冬の間は気を付けてください」

「ありがとうございます。さすがに聖女様は細かい事を診ていただける。聖女様にこうしてお会いできたことを神に感謝すると共に、護衛が万全で無かった事をお詫びします」

「その件は相手もある事ですので。次にどなたかを護衛される時は隙のない護衛をされる事を期待いたしますわ」

「ご期待に沿える様、努力いたします」


 ポーレット領内を移動する際は、市街地では馬車の扉を開けて手を振る様にした。ポーレット領は西部教会と関係が深く、それ故他の領地より聖女信仰は盛んだった。とは言え、のんびり進む状況ではない為、農村部などは速度を上げて通り過ぎた。


 そんな中、来るべき危機に備えて情報交換をする必用があった。

「ヒルダ、ヴァイツゼッカー内で麻薬などを用いて魔獣を大人しくさせる様な研究はされていたのか?」

「あまり聞いた事はないわ。私が聖魔法の研究・教育の部署に属していたから疎いという事はあるでしょうが、それにしても魔獣を薬品でコントロールするというのは聞いた事がないの。魔獣を捕らえておく必用はあるし、その魔獣をどうやって連れて来るかという問題があるから」


「まあ、捕らえる方法は大体想像出来るがな」

「何か方法はある?」

「手懐ける必要がある。そうなると幼生を捕まえて人間に慣れさせる事が必要だろう」

ヒルデガルドも私も身震いを起こした。

「母子を見つけて母親だけ殺すと言う事?それをやろうとすればどれだけ人間側の被害が出るか…」

「魔法と毒の使い方だろうな。母親側を鎮静剤を使ってから毒で息の根を止めるのか、それともいきなり毒で殺すのか」

私は顔を顰めた。そりゃあ女としては子を奪う為に殺されるなど、どんな強い未練が残るのか、考えただけで胸が痛み眩暈がする。


「ただ、ある程度数が出せるとしたら、すでに繁殖の実用化が出来ているのかもしれないな」

これにはヒルデガルドも私も顔を顰めた。魔獣を繁殖させる為に何らかの人工の方法で魔獣の子供を作る。まあ食べる為に鳥やら牛やらを繁殖させているので、それが魔獣になっただけなのだが、


 ポーレット領の隣の領地の領主の館に着いた時、既に日は沈み始めていた。

 あと2日で今年は終わります。コミュニティFMで長年放送されていた夜の番組も終了します。DJさんが脳梗塞になった模様です。脳梗塞だと1ヶ月入院、もし障害が残るならリハビリ入院が3ヶ月くらいかかるみたいですが。しばらく安静にして、またどこかでお声が聞ければ良いな、と思っています。

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