11−1 獣道 (1)
翌朝、大司教、バルダッサーレ・ディ・ステファノが講堂でこれからの説明をした。
「ハインリヒ殿下には先に王都に進める様に、幹線道とは異なる連絡道をお進みいただきます。王都までは我々の修道兵も護衛いたします。聖女テティス、パートナーのヨハン殿下、アドバイザーのヒルデガルド女史にはポーレット領へ向かっていただきます」
当然、聖女の方には凱旋パレードが必用になる。個人的にはいらないイベントだけれど、聖女という権威をこれからも利用する為には、体制側には必要な事だ。
ヨハンの兄、ハインリヒ王子が去った後、大司教は私達に告げた。
「ヒルデガルド女史にはしばらく我々の修道女を護衛に付けます。ハインリヒ殿下からお国に連絡が行き、そちらから人員が着くまではお供いたします」
ここは私が謝意を告げるところだろう。
「お手数をおかけして申し訳ありません」
「いえ、しばらくは聖女テティスの護衛に従える事、修道女達も喜んでおります」
は・は・は…乾いた愛想笑いしか出来なかった。例えばセシリア・ストーナーがあれ程増長していた件、周囲がこんな扱いをしていたのではないだろうか。早く落ち着いてヒルダお姉ちゃんに厳しいご指導を受けたい。きっと整ったお顔で私を冷たく見下してくれる筈だ。身の程を知らせて欲しい。
私達の馬車は車列の先頭で、その前を4騎の修道兵が先導していた。昼食は行きと同様、西部教会の修業場で取った。変な祝福イベントは無かった。無い方が気が楽だけれど。とは言え、世話をしてくれる修道士・修道女達が恭しい態度を取る。こんな扱いでは背中に汗をかいてしまう。
ヨハンがそんな私をみて薄ら笑いを浮かべて言った。
「お前はシュバルツブルグ皇帝の妃になる女なのだから、もっと大袈裟な扱いばかりになるのだぞ?今から慣れておけ」
「今のところそのシュバルツブルグの皇帝になる男が普通の兄ちゃんだからその実感が無いのよ」
「何ならもっと不遜な態度をとってやろうか?」
「今でも十分不遜でお腹いっぱいだからいらない」
食事中にヘカトンケイルのブリアレオスは修行場の外で待機していたが、私達が馬車に乗り込む前にこちらに顔を向けた。だから私は、小さく首を振った。
馬車に乗った後、ヨハンが口を開いた。
「ヘカトンケイルが何か言ったか?」
「何も。ただ、この先馬車が止まった時は外に出ないでヒルダを守ってくれる?」
「馬車の外で状況を見る。なんなら後続の護衛に守ってもらう」
「…その方が良いか」
同じ馬車に乗っているヒルデガルドがやはり恐る恐る口を開いた。
「何のお話し?」
「世間話だ。こいつにとってはな」
「ヨハン…もうちょっと言い方が…」
「だけど、食後の世間話程度の事だろう?お前にとっては?」
「まあ、何も問題なく終わらせるけどね」
ヨハンは微笑んだが、ヒルデガルドには分からない話だった。
「その、問題が起きると?」
「ヘカトンケイルはテティスに問うた。こいつはいらんと答えた。だから問題ないと言う事だ」
そう話していた時に、馬車が止まった。
「じゃ、前に出ないでね」
そう言って私は馬車から飛び降りた。
4騎の修道兵の前には武装した一群が立ちはだかっていた。
「やはり王家と西部教会はつるんでいたのだな!王家の出した偽りの聖女候補を聖女に選ぶとは!では、その偽りの聖女に何が出来るか見せてもらおうか!」
彼等の前に道路の横の獣道を通って魔獣の群れが現れた。二つ首、三つ首を持つ犬で、その頭の高さは大人の男の目線ほどもあった。
「こんな風に、セシリア・ストーナーにサイクロプスを与えたのね?」
「そうだ!王家と西部教会が癒着して偽聖女を選ぶ事が分かっていたから、我々も正当な聖女に力を与える必要があったのだ!」
私の心の中で、可愛い顔をしたセシリアの顔が憎悪に歪み、真っ黒な闇に溶けていった。
「そう、ラッセルが彼女を闇に堕としたのね…」
「お前等王家の狗が不正で彼女を絶望に堕としたのだ!今こそその報いを受けろ!」
「そう、報いを受けたいのね」
口上を述べていた男は手を振り下ろし、周囲の男達が何らかをこちらの前に投げた。何かがべしゃっと地面に広がり、魔獣達は走り始めようとした。その犬達の前に四周の空中から人の体より太い水流が落ちて来た。やがて水は魔獣の群れを飲み込み、渦を巻いて空中に舞い上がった。
「ちょっと、ヨハン殿下!何、あれは!?」
「テティスは聖魔法師である以前に水の魔女なんだよ。だからこんなのは食後の軽い運動みたいなもんだ」
「いや、人が扱える魔法の量を越えてると思うけど!?」
「あいつが化け物なのは分かってるだろう?こういうもんだと思っておけ」
…後ろでヨハンとヒルデガルドが世間話をしている…こちらが魔獣対策で大変だというのに、こいつらも呑気過ぎると思う。自省を願いたいです。
多摩動物公園のサイト、激重でしたね。
小泉某と小谷某の対談が◯フートップ下に掲載されていましたが、プッチンさんが戦争するのは『被害者意識』とか『欧州は国境が野山だから移動しても違和感がない』等という事を言っていました。むしろ『我々は被害者だ』は扇動政治家がよく使う手口なので、彼が本気でそう思っているとは思えませんね。ちなみに、『俺とプッチンはバイ◯ンの被害者だ』は某国扇動政治家が役者大統領との公開対談で発した言葉です。その論法でロシア寄りの和平案を通そうとしましたが、カメラの前で役者大統領に『あんたは誰と同調してるんだ?』と切り替えされたのは皆さんの知るところでしょう。




