モブNo.231∶「あーあー。前方の戦闘艇の搭乗員の方。こちらはバイパスルート警戒中の傭兵です。所属と目的をお聞かせ願えますか?」
イッツを出発してから2週間。
ゴンザレスの情報通り、海賊の手がかりはなに1つ見つけ出すことができないでいた。
まず最初の手段として、エドネイア宙域近隣のサービスエリアやコロニー、惑星上の繁華街など、様々なところで海賊の痕跡をさがした。
海賊の痕跡というのは幾つかあり、その1つは、普段見慣れない連中が、一仕事おえたあとの打ち上げ的なものをしていないか、飲食店に聞いて回ることだ。
もちろん、海賊と結託している店や、海賊側がサラリーマンや肉体労働者を装っていたりすることもあるから一概にはいえないけどね。
ほかにも、宇宙港の入出記録や浮遊している小惑星の調査、宇宙港周辺の住民への聞き込みなどがある。
この全部をチェックしても、何一つ手がかりが出てこなかった。
こうなると、今回の海賊は相当に組織立って略奪行為をしている可能性が出てきた。
大銀河帝国は、現在までに判明・発見している、人類が生息できる惑星のある宙域の7割を国土にしている。
つまり、帝国以外の国はまだまだ存在しているということ。
現在帝国は、他国への侵略を停止しているが、今までの歴史からいつまで続くのか? 信用できるのか? と疑念を持たれるのは当然で、帝国に対して何らかの手段を行使している国もあるだろう。
その国の何処かが、通商破壊作戦をしているのかもしれないとすると、これはかなり厄介だ。
尻尾を出すこともなかなかないだろうし、犯行の手際もいいはずだ。
幸いなのは、現在の帝国には大使館制度がないことだ。
かなり昔には帝国にもあった制度らしいが、十何代か前の皇帝が廃止し、全て追い出してしまったらしい。
今代の陛下は、平和のためにも復活させるべく尽力はしているそうだ。
ともかく、このままでは埒が明かない。
こうなったら、貨物船について行く手段をとるしかない。
傭兵側から考えると、無料で勝手に護衛がつくんだからいいじゃないかと思うけど、向こうからすれば意味は違ってくる。
普通に護衛として雇った場合、護衛は平穏無事に仕事が終わることを望むけれど、今回の僕みたいな事情で護衛をやらせてくれと言う輩は、『自分達が捕まえたい海賊をおびき出すための囮になれ』っていわれているわけだから、嫌がられるんだよなあ……。
こうなったら、出航する貨物船にこっそりついて行くか、自分が出会うまでふらふらするしかないか……。
☆ ☆ ☆
【サイド∶マリー・フレイアフィル】
反帝国主義者達からもたらされた、彼等の中での過激派が、ターゲットとして始末してきた悪徳貴族のリストの内容を見た翌朝。
目を覚ました私は、いまだに失意のドン底にいた。
タイアス様を殺した2人のうちの1人、トミー・カルボネ子爵子息は、悪徳貴族であった父親のアルハンドラ・カルボネ子爵と共に、反帝国主義者の殲滅派閥の者達の手で殺害されてしまった。
タイアス様を直接手にかけた、しかも他人の成果を横取りするような卑怯な手段で!
だからなんとしてでもこの手で殺してやりたかったのに!
しかしそれは叶わず、私は一晩泣き喚き、いつの間にか疲れて眠っていたらしい。
とはいえこのまま落ち込んでいるわけにはいかない。
タイアス様を殺した人間はもう1人いる。
そいつは、傭兵のジョン・ウーゾスという男で、タイアス様が動けなくなったところを攻撃した卑怯者のトミー・カルボネ子爵子息と違い、タイアス様と一騎打ちをし、見事に勝利した実力者であり、しかもタイアス様にとどめを刺さなかった。
しかしこの男がタイアス様を行動不能にしなければ、タイアス様は死ななかったのだ!
そのことを思い出し、私はその男をいつか討つべく、気合をいれ、任務を遂行することに決めた。
そうして日々の通商破壊任務を遂行していると、とてつもない朗報が私の元に飛び込んできた。
私達の協力者から、傭兵が私達を探して嗅ぎ回っているという情報がもたらされた。
通商破壊任務とは、つまりは海賊行為に間違いないので、司法の手が伸びるのは当たり前であり、賞金がかけられるのも当たり前だ。
だが、その嗅ぎ回っている傭兵が問題だった。
協力者の送ってくれた画像に映っていた傭兵は、最初の資料より多少痩せてはいるものの、タイアス様の命を奪ったもう1人の人物、ジョン・ウーゾスに間違いはなかった。
私は部下達にこのことを伝え、奴の動向を探らせた。
私達は通商破壊任務の最中。
その私達の任務を邪魔するのなら、それが何者であろうと排除する必要がある。
私は歓喜に打ち震えた。
ようやく……ようやくタイアス様の仇討ちができると!
★ ★ ★
結局、見つけ出せるまでふらふらする方を取った。
貨物船への勝手な尾行は、下手をしたら海賊の一味と判断されてもおかしくないからね。
とはいえこれは、ちょっとした苦行に近い。
何しろ、何にもない宇宙空間を、なにかがあるまで、しかもずっと警戒しながら飛び続けないといけないからだ。
とはいえ本当に無目的ではなく、エドネイア宙域のバイパスルートを往復する感じだ。
本当に当てもなく飛んでいたら、何処に行ってしまうか分からないからね。
一応地元警察と宇宙港には、傭兵ギルドを仲介して、僕が警備のために往復することを伝えてある。
こうしないと海賊と間違えられるからね。
そんな苦行を、約3日ほど繰り返した4日目の昼過ぎ。
そんな僕の眼の前に、明らかに怪しい感じの戦闘艇が5機飛んでいるのを見つけた。
僕はすぐに警察と宇宙港に連絡し、商船の護衛機かどうか確認した。
すると、『はぐれた護衛機はなし。どの宇宙港からも、戦闘艇5機は飛び立っていない』とのこと。
とはいえ先ずは警告からだ。
もしかしたら別の宙域から、小惑星帯やブラックホールを避けてきたのかも知れないからね。
「あーあー。前方の戦闘艇の搭乗員の方。こちらはバイパスルート警戒中の傭兵です。所属と目的をお聞かせ願えますか?」
僕がオープンチャンネルでそう尋ねたところ、彼等はなにも返さず、散開行動を実行した。
この瞬間、彼等が例の通商破壊任務らしい海賊団だと判明した。
「仇」…あだ・かたき
「敵」…てき・かたき
「仇」と「敵」は似ているようで実はニュアンスが異なるそうです。
「仇」は個人的な恨みや復讐感情を含むことが多く、「敵」はより客観的な対立関係を指します。
例えば、ビジネスでの競合他社は「敵」ですが、特定の個人に対して強い恨みがある場合は「仇」を使うのが適切だそうです。
仇:個人的な恨み・復讐感情がある場合
敵:客観的な対立関係・競合関係の場合
切りが良いので切りました
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