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モブNo.226∶「そのためには。ウィリベルト。お前は不要なのだ」

 警察と傭兵ギルド回収班が到着すると、ウィリベルト・ヨーキヌル伯爵令息は自分が海賊を倒したところに僕が現れて横取りしたと喚き散らした。

 が、当の海賊達が『俺達はこっちのカーキー色の船の旦那にやられたんだ。そっちのキンキラは俺達がやられてから現れて、カーキー色の船の旦那に俺達を退治した手柄を寄越せって言いやがったんだ。録音もある』と証言した。

 それに加えて、来てくれた警察とギルド職員がまともだったこと、さらには僕と伯爵令息、両方のレコーダーの内容が、海賊達の話と全く同じという決定的な証拠があったこともあり、身柄の引き渡しと機体の回収はスムーズだった。

 

 僕はいったん、ギルドのアスティトア支部に戻り、『マラグマンタ海賊団』の捕縛と、伯爵令息の逮捕の報告をした。

 すると、

「ありがとう御座いますウーゾスさん! コレでゴミが1つ減りました!」

 と、受付嬢さん達が歓喜の雄叫びを上げたのは本気で驚いた。

 本音なんだろうけど、言っていいことじゃないと思う。

 報酬の方は本拠地であるイッツ支部で受け取るようにしているので、それからはゆっくりしながらイッツへの帰路についた。

 

 イッツに到着し、駐艇場に船を止めると、そのままローンズのおっちゃんのカウンターに向かう。

「ただいま」

「おう。帰ったか。馬鹿がいて大変だったらしいな」

「居るとは思わなかったよ……」

 伯爵令息のことはおっちゃんも当然知っており、今回のことも、アスティトア支部から連絡を貰ったのだろう。

「まあ。依頼は完了という扱いになっているからな。まずは詳細だ」

 そういって、今回の報酬明細の詳細を見せてくれた。

『正規報酬∶50万クレジット』

『拿捕・改造中型貨物船∶3546万クレジット』

 つまりは『マグラマンタ海賊団』の船。

『拿捕∶改造小型戦闘艇∶1488万クレジット』

 こっちはウィリベルト・ヨーキヌル伯爵令息の船だ。

 そのため合計が5084万クレジットになった。

 正直、正規の報酬より拿捕した船舶の買取の方が稼ぎになる。

 拿捕船舶買い取り(これ)がなく、公爵閣下が孫を騙った男を成敗してくれていなかったら、僕はいまだに借金を返済出来ていなかっただろう。

 僕が情報データマネーで報酬を受け取ると、おっちゃんの大型端末(デスクトップPC)にメールの着信音がなった。

 おっちゃんはそれを眺め、

「アスティトア支部からの報告書が届いた」

 と、書類(ホロ・ペーパー)を差し出さしてきた。

 アスティトア支部から送られてきた、今回の騒動の顛末は、なかなかに凄いものだった。

 まず『マラグマンタ海賊団』は通常の懲役刑。

 殺人行為をしていなかったことと、情報提供者の名前を素直に喋ったことが、懲役刑ですんだ理由だという。

 彼等は大人しく刑に服するつもりらしい。

 そして『サザンクロス号』の情報を彼等に漏らしたのは、平の宇宙港職員だったそうだ。

 安月給にパワハラ上司、ムカつく同期や舐めきった後輩。色々鬱憤が溜まっていたところに、『マラグマンタ海賊団』と知り合い、情報1回で約150万クレジットほど貰っていたそうだ。

 彼等以外には売って居らず、被害が小規模で済んだのは幸いだったそうだ。

 さらに、『マラグマンタ海賊団』は地元警察の刑事部長にも賄賂を渡していたことを話したそうだが、これが一番の問題だった。

 この刑事部長は、複数の小規模な海賊から賄賂を徴収していたらしい。

 そして、大規模の海賊団を追っているという理由で、賄賂を贈ってきた小規模な海賊団は見逃してやっていたという。

 恐らく大規模海賊団からも賄賂を貰っているだろうと推測され、現在公安委員会による取り調べの最中らしい。

 ちなみに傭兵達は、この一連の癒着とは一切関係なく、マジモンの怠惰と賞金アップ狙いだったそうだ。

 しかしその傭兵達の行動が、今回の癒着を招いたといってもいいだろう。


 そして問題のウィリベルト・ヨーキヌル伯爵令息だが、成果の横取りを強要し、僕を殺す意志があったことは僕と奴のレコーダーから判明したはずだが、なぜか何の罪にも問われなかった。

 傭兵が他者を殺害しても問題にならない状況は、通常の正当防衛は当然として、

『国家主導による戦争への参戦』

『貴族同士の闘争に参戦した場合』

『犯罪者との交戦』

 があり、奴はこのどれにも当てはまらないはずだ。

 どうやら、奴の父親である伯爵が色々手回ししたのだろう、現在は実家の領地に呼び戻されたという話だ。

 僕としては非常に腹立たしいが、どうしようもない。

 銀河大帝国(このくに)はまだまだ腐っている部分が多いようだ。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

【サイド∶ヨーキヌル伯爵家。第三者かみの視点】

 

 ヨーキヌル伯爵の領地である惑星クラウォール。

 その中にあるリゾート別荘地・カーベルタ。

 そのカーベルタの中でも、一番豪華な別荘の食堂レストルームに、ウィリベルト・ヨーキヌル伯爵令息の姿があった。

「いやはや、助かりましたよ父上。植民地の平民に卑怯な手段でやられてしまって逮捕された時は、ひやひやしました」

「あまり無茶なことをするな。揉み消すのも大変なのだぞ」

 その対面には、ちょび髭(トゥースブラッシュ)を生やした、ウィリベルト・ヨーキヌルの父親であるジョルジュ・ヨーキヌル伯爵が沈痛な面持ちで座っていた。

 ウィリベルトは分厚いステーキを切り分けて口に運び、咀嚼したあとに赤ワインと共に胃に流し込んでから、父である伯爵に顔を向けた。

「わかっていますよ。なればこそ、俺を撃ち落とした植民地の平民にはきっちり裁判を受けさせて、慰謝料と新しい機体の代金を払わせないといけません。まあ、こちらが被害届けを提出しないかわりに、一生上納金を払わせるようにしてもいいかもですがね」

「それもいいが、ほとぼりが冷めるまでは別荘ここで大人しくしておけ」

「では、あの植民地の平民は父上が処理してくださるのですね」

「まあ。そうだな」

 父親の言葉に満足したウィリベルトは、再度ステーキを咀嚼し、ワインを飲み干した。

 すると父親である伯爵が、新しい赤ワインのボトルを開け、ウィリベルトのグラスに注ぐ。

「ところで、今後の我がヨーキヌル家の対応だが、皇帝陛下につくことにする」

 そういうと、伯爵はグラスに残っているワインに口をつける。

「現在、反皇帝派の者たちは先の反乱で大きく数を減らしている。そして民衆のなかにいる反帝国主義のテロリスト達は、民衆に人気のある皇帝陛下を後回しにし、反皇帝派の貴族や、ネキレルマに残る悪徳貴族達を襲撃しているらしい。幸い我が家は領民達に対して、圧政や重税を課すなどしていなかったおかげで皇帝陛下の一派だとみなされ襲撃をされなかった。ならばこのまま、皇帝陛下の一派になっておけば、無闇には襲撃をされないだろう」

 伯爵はそこで話すのを止め、ステーキを切り分けて口に運び、咀嚼し、赤ワインでステーキを流し込んだ。

「で、邪魔な連中がいなくなれば、父上も政治の中枢に入り込めるわけですか」

「そうなるな」

 そういいながら、ウィリベルトは伯爵のグラスに、先ほど伯爵が開けた赤ワインを注ぐと、残ったステーキを口に運んで咀嚼し、自分のグラスの赤ワインで流し込んだ。

 ウィリベルトがワインを飲んだのを確認すると、伯爵は表情を変えないまま、ウィリベルトにとっては信じられないことを口にした。

「そのためには。ウィリベルト。お前は不要なのだ」

「父上。私はこのヨーキヌル伯爵家の跡取りなんですうぐっ!」

 ウィリベルトが、父親の言葉に対して、なにをいっているのかと反論しようとしたとき、急に喉を掻きむしりながら床に転がり、血を吐いた。

「恨むならこの父を恨め。お前の育て方を間違い、矯正もしてやれなかった。そしてこの様な苦しむ方法しか取れなかったこの私をな」

 伯爵は、息子が苦しむ光景を、静かに見つめていた。

「ハハヴエッ! ダレカッ!」

 ウィリベルトは必死に母や使用人を呼ぶ。

 が、母はおろか、使用人の1人も現れない。

「エリザベスも使用人も居らぬ。皆今夜は街のホテルだ。ヨーキヌル伯爵家は次男のジルベルトに託す。お前がこの別荘で病死したから。ということにする」

「ちち……うえ……たひゅけ……」

 ウィリベルトは伯爵に手を伸ばすが、その手が掴まれることはなかった。

「お前の行動は目に余りすぎた。庇うことももう限界なのだ。ヨーキヌル伯爵家を守るためにも、お前はこの別荘で大人しくしていてくれ」

 伯爵は沈痛な面持ちのまま、我が子が苦しむ様を、我が子が息絶えるまで見守っていた。

毒は、注射器をコルクに差し込んで入れました。

古典的


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 うーむ「ゴミが一つ減った」って受付嬢。ゴミって海賊?それとも伯爵令息?多分後者だろうなぁ・・・ 扱いが海賊以下の伯爵令息。恐らく評判は伯爵本人まで聞こえていたんでしょうね。最終的には家を守るため、と…
公に処罰されると家の恥になるもんね〜 内々に処理するマトモ(貴族として標準レベルという意味)な お方が出てくるとホッとするね。
この方法で当主が身内の始末付けたら 司法や捜査は基本行わ無い。とか有るんやろうな。 死人が良い人だったら、勝手にやる人が出る…と。
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