モブNo.225∶『舐めるな! 植民地の平民風情があっ!』
その瞬間、ウィリベルト・ヨーキヌルがなにをいったのか理解出来ず、頭が真っ白になってしまった。
とはいえすぐに復活し、その発言を解析、理解した。
つまりは、以前イッツでやっていた横取り行為をしにきたわけだ。
当時はローンズのおっちゃんが居らず、本当に酷かった。
そして今回、現場にやってきた理由は、イッツの時のやり方が通用しないからだろう。
当時のイッツ支部の受付は本当にヤバい受付嬢ばかりで、こいつみたいな奴のいいなりだったり、嬉々として僕に嫌がらせをするのばかりだった。
僕が依頼完了の書類を提出すると、堂々と報酬を減額したり、もしくは別人の手柄に書き変えたりした。
『後から減額の指示があった』とか、『あんたみたいなのが依頼を達成できるわけないでしょう?』とかの理由をつけて。
たとえそんなことをやらない受付嬢に渡しても、横から奪い取ってやられたこともある。
殴ってやりたくもあったけど、それではコチラの負けになるし、上層部に訴えても、『彼女がそんなことをするわけないだろう』とか、『お前が嘘をついているんだろう』とかいわれてとりつく島がなかった。
しかし現在のイッツ支部や、ここアスティトア支部ではそんなことは出来ない。
なので現場を押さえて横取りしようとしたのだろう。
『どうした? 早く俺に寄越しな!』
ヨーキヌルは苛ついた様子で命令をしてくる。
しかしこいつは気がついてない。
僕は当時も、『やる』とはひと言もいっていない。
ギルドのカウンターでの横取りが成功していたのは、ギルド建物での武器の使用禁止(緊急時除く)、多勢に無勢、上層部の受付嬢贔屓があったから成功していた。
「寝言は寝ていってください。それより、明らかに海賊を救いに来た貴方は、『マラグマンタ海賊団』の仲間で間違いないみたいですね」
『なんだと? この俺が小物海賊の仲間だと? ふざけるな!』
さらに、こいつを含めた馬鹿どもは、現場で奪うときには、取り巻きと一緒に自分達の息のかかった警察を必ずつれてくる。
クズとつるむ汚職警官とはいえ正規の警官を攻撃出来ないため、仕方なく従っていた。
「警察にも傭兵ギルドにも、すでに連絡してあるから、大人しく捕まった方がいいですよ」
『おい平民……この俺に喧嘩を売っているのか?』
「事実をいっているだけてすよ」
この『マラグマンタ海賊団』が物凄い大物で、たまたま出くわしたとか。大勢で退治にきたとかなら、軍に目をつけられたくないので、くれてやっても構わないのだけれど、キチンと受けた依頼であり、完遂しているものを奪われるのは腹が立つ。
ローンズのおっちゃんが来てからは、受付や現場にくる警察がまともになったので、本当にローンズのおっちゃん様々だ。
しかし今回は、取り巻きもいなければ、汚職警官もいない。
恐らく、首都でやらかしたせいで、取り巻きも汚職警察も離れていったんだろう。
まあ、汚職警官さえいなければ、連中を宇宙の塵にしてやることは出来たとは思う。
そのチャンスが初めてやって来た。
『俺は女王階級だぞ? いまだに騎士階級の貴様が敵うと思っているのか!?』
「最終勧告です。貴方が海賊の仲間でないなら立ち去ってください。そして、どうしても海賊を捕縛した手柄を寄越せというなら、海賊の仲間として捕縛もしくは撃墜します」
『舐めるな! 植民地の平民風情があっ!』
ウィリベルト・ヨーキヌルは顔を真っ赤にしながら怒鳴った後、通信を切った。
☆ ☆ ☆
【サイド∶ウィリベルト・ヨーキヌル】
何故この俺が植民地の平民にコケにされないといけない!
しかも! 女王階級である俺より遥かに格下の騎士階級なんかに!
中央の連中は、つまらないミスで俺を追放しやがった!
おかげで取り巻きも協力してた汚職警官も逃げやがった!
おかげで恥ずかしくてイッツには戻れない。
仕方なくアスティトアなんて所に来るしかなくなってしまった。
とはいえここの傭兵達とはウマがあった。
ショボイ海賊を放置して賞金を吊り上げ、美味しくなったころにぶちのめしにいく。
このスタイルは非常によかった。
惜しいのは傭兵ギルド、アスティトア支部の受付嬢共だ。
俺の横に侍らせてやってもよいと考えるほどの見た目の奴らが多いので、その許可を与えても誰一人近寄ってこない。
イッツでは群がって来たというのに!
しかも植民地の平民は、しばらく見ないうちに貴族への礼儀も忘れたらしい。
丁度いい♪ あいつを叩きのめして、全財産を献上させるか。
「この俺との実力の差というものをわからせてやる!」
俺が奴の後方に回り込むようにして距離をつめると、案の定、奴は逃げ出した。
実に無様な姿だ!
十分にいたぶってから落としてやる!
「そらそらどうした? 逃げないと死ぬぞ! まあ、女王階級の俺から逃げられるならな!」
所詮奴は騎士階級。
さっきから、こちらのビームをギリギリでしか避けられていない。
この程度の奴など、俺の敵ではない。
「そらそら、逃げろ逃げろ!」
ふはははははははははははは!
昔の貴族がやっていた人間狩りというのはこんな感じだったのだろうな!
さて、そろそろ遊びは終わりにするか。
俺の自慢の船『サウザンドバースト』に搭載された秘密兵器『チャージブラスター』を食らわせてやる!
ヨーキヌル伯爵家令息であるこの俺に逆らったことをあの世で後悔するがいい!
システムを起動すると、黄金地に青をあしらった自慢の船の先端に、太めの砲身があらわれる。
照準に奴の薄茶色の汚い機体を捉え、エネルギーのチャージを開始した。
この『チャージブラスター』は、エネルギーチャージ中でも、機体の動きが制限されないのが最大のメリットだ。
チャージはすぐに完了し、俺はすぐにトリガーを絞った。
青白い極太のビームが、真っ直ぐに奴の船に向かっていく。
そのビームの斉射が終了した時には、奴の船は跡形もなくなっていた。
「ふははははははははははは! 見たか! これが実力の差というものだ!」
俺が勝利を確信した瞬間、船に激しい振動がはしり、船内が警告の赤い光でいっぱいになった。
船の安全装置が働き、船の全てが停止した。
★ ★ ★
相手がおかしな兵器を出してきた時は焦ったけど、『撃墜騙し』にあっさり引っかかってくれて助かった。
操縦席を撃っても良かったけど、どうせならいままでの迷惑料もいただいた方がいいだろう。
貴族の乗る船なら高級品だろうしね。
に、しても随分キンキラキンで派手な船だな。
戦場なら死ぬほど目立つだろうなあ……。
まあ、戦場で見たことないけどね。
そろそろ警察と傭兵ギルドの回収班が到着するだろうし、ウィリベルト・ヨーキヌルが言い逃れ出来ない程の証拠もあるので安心だ。
裏の諸々の事情は次話で……
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