モブNo.224∶「ようし! 情報通りだ! 行くぞ野郎共! ぬかるなよ!」
宇宙港と警察に、『サザンクロス号』が海賊に狙われていると通報したところ、なぜそんな情報を知っているんだと疑われてしまった。
が、録音していたおじさん達の音声のおかげで、疑いを晴らすことが出来た。
積荷に工業製品用24金のインゴットが100kgあるのは事実で、急遽追加になったもので、知っている人間はわずかだそうで、その辺りからおじさん達と繋がっている人物が割り出せそうだ。
さらに、この金塊には配達期限もあるらしく、下ろすわけにも、フライト時間の変更も出来ないらしい。
地元の警察か軍か傭兵に護衛を頼んだらどうかと提案したが、宇宙港の人いわく、
『警察は現在大規模な海賊を警戒していて、小物に割く人員はない』
と、返され、軍には、
『済まないが今は余裕がない』
と、いわれたらしい。
地元の傭兵は、小物相手だとやる気ゼロ。
だから別の支部の傭兵に依頼が来たともいえるのだけれど。
とはいえ僕があからさまに護衛につくと、怪しまれて出てこなかったりする場合もあるだろう。
仕方ないので、正午に出航する『サザンクロス号』の後を、こっそりついて行くことにした。
銀河標準時で正午になった時、サザンクロス号は予定通り出航した。
僕はそれから5分経過してから出航。後を追いかける。
『サザンクロス号』の目的地は惑星タイラウアー。
なのでまずは、惑星タイラウアーに一番近い所に移動出来るゲートに向かうことになる。
ゲートまでの到着時間は約6時間。
ゲートを抜けてからは約3時間。
合計9時間のフライトだ。
『サザンクロス号』から一定の距離を保って自動航行に移行する。
これで少しは負担が減るだろう。
出航してしばらくは何事もなかった。
そして、ゲートまでの時間が約半分になった時に、レーダーに反応があった。
その時点では、『マラグマンタ海賊団』かどうかはわからなかったが、すぐに判明してしまった。
その理由は、
『あーあー前方の客船『サザンクロス号』に告ぐ。聞こえるか! こちらは『マラグマンタ海賊団』! お前さんに積んでいるお宝をいただきにきた! 撃墜されたくなかったら今すぐ停船しろ!』
と、オープン回線の音声だけで停船を呼びかけてきたからだ。
その声は、『チキンと酒のみせ』の隣のテーブルと、海上の貨物船の盗聴器付き発信器から聞こえてきた、『社長』と呼ばれていたおじさんで間違いなかった。
それにしても、いきなり攻撃せずに、投降を呼びかけるだけ、人道的といえば人道的だ。
とはいえ、海賊が出てきたなら、ここからは僕の仕事だ。
☆ ☆ ☆
【サイド∶『マラグマンタ海賊団』第三者視点】
マラグマンタ海賊団所有の海賊船『コズモフリッパー』のブリッジで、髭面の男がニヤリとした笑みを浮かべながら、部下達に発破を掛けていた。
「ようし! 情報通りだ! 行くぞ野郎共! ぬかるなよ!」
「「「「「イエッサー!」」」」」
彼等は同じデザインの作業服を着込み、個人に違いはあるが全員が髭を生やしていた。
その中で、部下に発破を掛けた男がマイクを掴むと、
「あーあー前方の客船『サザンクロス号』に告ぐ。聞こえるか! こちらは『マラグマンタ海賊団』! お前さんに積んでいるお宝をいただきにきた! 撃墜されたくなかったら今すぐ停船しろ!」
と、停船命令を出した。
もちろん相手はそれに従う必要はなく、速力をあげた。
マイクの男、船長であり海賊団の頭はニヤリと笑い、
「止まらねえか……。ようし。2・3発掠らせてビビらせてやれ!」
「了解!」
と、命令すると、収納してあった2連装の砲塔が船体の左右に2基づつ、船体の下部に1基の、計5基10門が姿を現した。
船体の上部にないのは、元貨物船の構造上の理由らしい。
そのうちの下部の1基が旋回し、『サザンクロス号』を照準に捉えたとき、レーダー観測手が声を上げた。
「右舷方向から機影! 機種は小型戦闘艇、数は1!」
「なんだ。たった1機か。警察か? 軍か?」
「警察のマークも軍のマークもないから、多分傭兵です!」
「この辺の傭兵共は、大物しか狙わないとか言い訳してるだけの腰抜け集団のはずだからな、別の所から出稼ぎに来たってところか」
機影と聞いて最初は驚いたが、相手がたった1機であることに安堵した。
「ようし! あの蚊蜻蛉はさっさと撃ち落とせ!」
「了解!」
頭の命令で右舷の砲塔が動き、傭兵の船を狙った。
彼等はすぐに片がつくと考えていたが、そうはならなかった。
「駄目です頭! ことごとくかわされちまう! だんだん近づいて来ます!」
「馬鹿野郎! よく狙って撃て! ミサイル迎撃用のレーザーはどうした?」
「どっちもやってますよ! クソッ! なんで当たらないんだ!」
すると突然、振動と轟音が響き渡る。
「2番と4番の砲塔がやられた!」
「なにい? 相手はたった1機だぞ??!」
「お頭! 獲物が逃げます!」
「さっさと追え! 逃がすな!」
彼等はエンジンをふかし、獲物である『サザンクロス号』を追いかける。
「頭! 薄茶色の奴が張り付いてきてます!」
「無人機を発進させて引っ剝がせ!」
「了解!」
彼等は無人機を発射し、敵戦闘艇を排除しようとするが、いつまで待っても撃墜の報告はこない。
それどころか、さらなる振動と轟音が響き渡る。
「頭! メイン噴射口が全部破壊されちまった! このまま稼働させ続けたら船が爆発しちまう!」
「なにぃ!?」
部下からの報告に、頭は苦虫を噛み潰したようような表情になり、
「ええい! ちくしょう! エンジン止めて降伏信号を発信しろ!」
悔しそうにしながらも、獲物より部下と自分の命を優先した。
★★★
『サザンクロス号』を追いかけようとした『マラグマンタ海賊団』の船のメイン噴射口を全部破壊したところ、相手の船から降伏信号が発信された。
僕はそれを確認すると、すぐに警察と傭兵ギルドに連絡し、回収をお願いした。
『サザンクロス号』には、海賊は押さえましたと連絡を入れておいた。
あとは警察と傭兵ギルドが来るのを待つだけだ。
すると、『マラグマンタ海賊団』から通信がきた。
『……おめえ、何もんだ?』
今度は画像付きで、現れたのは髭面の『社長』らしき人物だった。
「ただの傭兵ですよ」
『階級は?』
「騎士階級ですよ」
『社長』の質問に、僕は正直に答えた。
なのに何故か、
『馬鹿言うな! 動きが違うぜ! 自慢じゃねえが、俺達は全員元はある貴族の私兵で、戦闘にはそれなりの自信がある。その俺達が手も足も出ないってだけで、騎士なんて階級じゃねえ!』
と、怒鳴られてしまった。
どう返答すればいいのか悩んでいると、レーダーに反応があった。
警察と傭兵ギルドかなと思ったが、反応は一つだった。
すると通信がはいり、
『おー終わってる終わってる!』
現れたのはウィリベルト・ヨーキヌル伯爵令息だった。
なぜこの人がこんなところにいるのか?
嫌な予感しかしないが、一応聞いてみた。
「なにか用で?」
すると彼は、いい笑顔を浮かべながら、
『決まってるだろ? そいつ等を寄越しな。賞金は俺が貰ってやるぜ!』
と、ほざいた。
この海賊団は悪党ですが、非道・外道な行為(船の乗員皆殺しとか人身売買etc…)はやりません
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