モブNo.221∶「何処かで見たことがあると思ったら、お前ジョン・ウーゾスか! なんだあ? 痩せれば女にモテるとでも思ったのか?」
☆ ☆ ☆
【サイド∶アーミリア・フランノードル・オーヴォールス】
王宮の広い庭の中央にある四阿に、私と彼、オリバー・レイミス・オーヴォールスは、向かいあって座っています。
テーブルには香り立つ紅茶とケーキが置いてあり、近くには3人ほどのメイドが控え、ワゴンも置いてあります。
「どうかしましたか? アーミリア陛下」
少し難しい顔をしていた私に、オリバーがにこやかな様子で私に声をかけます。
「いえ、今回貴方が提案して発布した勅令は本当に大丈夫かな……と」
この度私は、彼の提案した
『貴族同士の勝手な闘争・戦争の禁止』という勅令を発布しました。
彼の父親であり、宰相のテリー・ランゲイス・オーヴォールス侯爵や、惑星防衛艦隊総司令官のソーロック・マウストン中将等賛成多数により、発布することができました。
生前の大叔父様が何度か提唱していたのも後押しになったと思います。
「大丈夫ですよ。これで争いは起こりにくくなるでしょうし、勃発しても介入して止める事ができます」
「でも、貴族達が私の命令を聞かなかったら?」
しかし、貴族の中には私が年若いのもあり、侮って見ている者も多く、その結果が先の反乱だったと考えます。
それに、いままでは大叔父様が居たから抑えられていた貴族達が、大叔父様が亡くなった事を好機と捉え、反乱を起こす可能性だってあります。
「その時は、反乱軍への対処と同じでいいのですよ。それに、そんな時は民間から義勇兵を募ればいいのです。陛下の支持率は、帝国市民や植民地民からはもちろん、旧ネキレルマ星王国の市民からも高い。そして反乱を起こすような貴族は総じて民衆に嫌われています。そんな連中相手なら、民衆は絶対に陛下の味方になってくれます」
私が不安なのを見て、オリバーが励ましてくれます。
「それに、この勅令は間違いなく反皇帝派貴族達の動きをある程度は抑制出来るでしょう。その間に、ネキレルマ宙域を安定させてしまえば、対処をするにも余裕がでてくるということです」
彼は自信ありげにそういうと、優雅に紅茶を飲んだ。
その自信が何処から来るのかはわかりませんが、その仕草や表情は、彼の祖父であった、アルティシュルト大叔父様にそっくりでした。
★ ★ ★
皇帝陛下の勅令によって延期になった、カスルスカ伯爵とデリュウクス伯爵の両陣営からの依頼を受けるのを止め、小規模な海賊退治の依頼を受けることにした。
―――――――――――――――――
業務内容:海賊団『マラグマンタ』の捕縛もしくは殺害証明。
業務期間:無期限。
出没宙域∶カラカンデ宙域
推定規模∶小規模。民間用中型貨物船を改造。小型艇は未確認。
報酬∶50万クレジット
備考∶貨物船・貨客船を主に襲撃。乗員乗客に被害は無し
―――――――――――――――――
小規模な海賊なら、依頼の条件はこんな感じだ。
小型艇を使わずに襲撃しているのは珍しいけど、今までいなかったわけじゃない。
なので、とりあえず気楽に、でも油断や慢心は絶対にしないようにする。
まずはゴンザレスのところに情報をもらいに行くことにした。
が、ゴンザレスに情報をもらいにいったものの、ギルドの依頼書にあったぐらいの情報しか無かった。
まあ、被害の出てるカラカンデ宙域を探せばいいだろうとのことだ。
そのカラカンデ宙域は、観光地として有名だ。
その理由は、『エンジェルリング』と呼ばれるリング型恒星があるからだ。
正式には発見者であるルドルフ・ノルスヴァル教授の名前を取り、『ノルスヴァル・リング型恒星』という。
平たいドーナツ状で、直径は9.6億kmで穴の部分の直径は4.6億km。
胴回り? は幅も太さも5億kmある。
どうやってこんな恒星が出来たのかはいまだに解明されていない。
『古代文明が創造した』とか『そんなものは不可能だ』とか『ブラックホールが関わってる』とか『あんな物があるはずはない幻覚だ』とか『神が創り給うたのだ』とか、様々な意見が交わされ、調査もされたが、結局分からずじまいで、恒星としてキチンと熱は発しているし、安定もしているため
『たしかにあの空間にリング型恒星は存在する』事だけが事実として残った。
そこから一番近い有人惑星である惑星アスティトアでは、『エンジェルリングドーナツ』なる、この恒星を模したお菓子が売られていたりする。
僕はまず手始めに、その惑星アスティトアの傭兵ギルドで情報収集をすることにした。
ここ、惑星アスティトアの傭兵ギルドの受付ロビーは、白で清潔感をだしているイッツ支部とは違い、ダークブラウンをメインにした落ち着いた雰囲気を出しているうえ、床もカフェラテ色の絨毯張りだった。
受付ロビーにあるベンチも、革張りだったりする。
例えるなら、イッツ支部は役所か病院の受付。
アスティトア支部はホテルのフロントの様だった。
僕は受付に近づくと、絶望に打ちひしがれた。
受付が全員若い女性だったからだ。
受付は組織の顔だから、見た目がよい人を採用するのは当然だ。
だが、色々トラウマがある僕にとってはうんざりする状況だ。
まあグダグダいっても状況は変わらないので、意を決して声をかける。
「いらっしゃいませ。傭兵ギルド・アスティトア支部へようこそ」
僕が声をかけたのは、黒髪に一本三つ編みおさげの、ザ・委員長といった雰囲気の女性だった。
「すみません。イッツ支部から来た騎士階級のウーゾスといいます。依頼に関する情報をいただきたいのですが」
「かしこまりました。ライセンスの提示をお願いします」
彼女の指示にしたがい、腕輪型端末を検査機にかざす。
この検査機を通さないと、依頼も受けられないし、報酬も手に入らない。
この検査機・チェッカーはかなり優秀で、汎用端末ツールなり腕輪型端末なりを板にかざすと、身分証明書のチェックと同時に、顔認証・眼球の虹彩と眼球血管・端末を持っている手から指紋・静脈・DNAまでチェックできる。
「はい。確認できました。イッツ支部のジョン・ウーゾス様でお間違いないですね。提供する情報は、海賊団『マラグマンタ』のものでお間違いありませんね」
「はい」
受付嬢は僕を睨むこともなく、笑顔できちんと対応してくれた。
まあ……これが普通だよね。
今回僕が受けた『マラグマンタ海賊団討伐の依頼』は、全ての支部で情報の閲覧、依頼を受ける事が出来るようになっている。
本来なら、この宙域での事案なのだから、地元の人間が解決するべきだろうが、この支部の傭兵達はショボイ依頼は無視する傾向にあるのかも知れない。
「残念ながら、こちらもあまり有力な情報はありません。ショボくて報酬が安いからと受けてくれる方が少ないんです」
受付嬢は少し困った顔をする。
するとそこに、誰かが声をかけてきた。
「何処かで見たことがあると思ったら、お前ジョン・ウーゾスか! なんだあ? 痩せれば女にモテるとでも思ったのか?」
絡んで来たのは、司教階級に上がったあと、首都に拠点を移したはずの、ウィリベルト・ヨーキヌル伯爵令息だった。
モブが元に戻りたいと考える、原因の一部の登場。
何故か杉田智和さんの声で想像してしまいました。
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします




