【伝説】
「ロキ、こっちも倒しましたよ、って何やってんですか二人で抱き合って!」
ソラに引き剥がされた。その時にはエリアはもう泣き止んでいた。
「ふふ、いや何少しシオンを困らせたくなってな」
「生意気ですねあなた。レイは友達に出来ないタイプです」
「レイに同年代の友達いないだろ。それよりお前ら三人で倒せたのか。なかなかやるな」
「ご、ご主人様酷い……。か、かなり苦戦しましたがあそこに縛ってあります」
レイの言う方を見るとドルチェは気絶してる上に、手錠らしきもので手足を縛られていた。あれはレイのスキルか。
「……こっちは、死んでる?」
「ああ。とりあえずドロール政府と連絡を取ってこいつらを引き渡さなきゃな」
そして俺はドロール政府と連絡を取り、アルフレッドの遺体とドルチェを引き渡した。
最初、アルフレッドとドルチェが闇ギルドであるという証拠がなかったため俺たちが罰せられそうになったが、アルフレッドとドルチェの服から闇の帳簿が見つかったため、なんとか大丈夫だった。
俺たちは懸賞金を貰い、話し合うため再び近くのギルドへと戻ったが、既にギルド内はアルフレッドとドルチェの話で持ちきりになっていた。
「あのアルフレッドが死んだってのは本当か!?」
「てかドルチェも政府に捕まったらしいぞ!」
「二人とも闇ギルドだったって話だ! てか奴隷商会の奴らも捕まったらしいぞ!」
こんな感じだ。俺はシャドウに色々と行動に出ていることを知られないために、奴らを倒したのが俺たちであることは政府に伏せてもらった。
俺たちも席に座り、これからのことを考える。
「さて、これからだけど……俺たちは闇ギルドを倒さなきゃならない」
「ええ、そうですね。残ってる幹部みたいなのは三人。どうしましょう?」
「……マリーがいいと思う」
マルロがそう言った。
なんかマルロがそういうの言うの意外だな。
「まぁマリー以外の奴は見たこともないしな。けどあいつがどこにいるかわからんしなぁ……」
「別れてからあまり時間が経っていないから、地道にこの大陸を探すしかないと思う」
「それもそうか」
時間がないってのに、やべえな。こうしてる今もガラムでは着々と奴らが準備をしてるはずだ。
「どうするかな。エリアはどうするんだ? 俺たちと一緒に来るか?」
「それも考えたが、私は一度故郷に帰ろうと思う。皆に仇を討った事を報告するつもりだ」
「そうか。そういや故郷ってどこなんだ?」
「ブルナーラ大陸だ。小さな片田舎さ」
「ふぅん」
エリアってブルナーラ出身だったのか。
しかし……どうしようか、手詰まりだ。
「あ、もしかしたらマリーに会えるかもしれませんよ」
「どう言う事だ? ソラ」
「マリーってギルガメッシュを探してたんですよね? さっき、マルロと二人で歩いてた時ギルガメッシュの墓があるって話を聞いたんです」
「ギルガメッシュの?」
なんだ、あいつここでは有名なのか? 俺もマルロも全然知らなかったのに。
「ええ。馬車を使って一時間ほどのところのようです。どうやらこの大陸ではギルガメッシュは悪者のようですが」
「悪者? ああ、そういえば昔ダマルティもそんな事言ってたな……」
「ギルガメッシュに関する事ですからマリーがいてもおかしくありません」
「確かにな。じゃあ行ってみるか」
「ならば私とはここでお別れだな」
エリアが少し寂しげな目をしながらそう言ってきた。
「そうだな。まぁ俺らが危険な時には助けに来てくれよ?」
「もちろんだ。すぐに行くさ。では、また」
「ああ」
そう言って、俺たちは別れた。馬車を借り、赤き墓標というところへと向かう。
「あ、そういえばマルロ。エルフ族ってなんだ? 奴隷市場でなんか言われてたんだが」
「……それは何千年も昔にいたと言われる異種族の子孫の事だと思う。ほとんど滅びて、人間と交配していった結果今ではもう私たちと何も変わらないのだけど。たまに耳の長い子が生まれるとそう呼ばれてるみたい」
「へぇ、異種族なんてのがいたのか。なんで滅びたんだろな?」
「たぶん……戦争」
戦争か。いつの時代もそんな感じなのかな。そうやって人間だけが生き延びたってことは、人間が一番強いってことか……いや、業が深いのか。
そんな会話をしていると馬車は目的地に着いた。赤き墓標なんて言われてるからてっきり何か赤いのかと思えば、普通の平原にポツンと一つの小さな墓が置かれているだけだった。
そこには、いつかどこかでみた古代文字で何かが書かれている。
「ギルガメッシュ=デリオラーって書かれてる」
マルロがそう答えた。どうやらギルガメッシュの墓で間違いないようだ。
「それにしても何もないですね。私はてっきり壮大なお墓かと思ってました」
「まぁでも一応大罪人的な扱いらしいし。墓があるだけでもいいんじゃね」
「それよりご主人様が言ってたマリーとかいう子、どこにもいないですね」
「うーん、そうだな。何もないみたいだし、帰るか?」
「くえっ!」
帰ろうとしたその時、アポロンが何かに気づいたかのように鳴く。
「なんだどうした」
「くえっくえっ」
「お、おいおい墓を勝手に掘っちゃ駄目だぞ」
なんとアポロンがギルガメッシュの墓を勝手に掘り起こした始めた。こんな行儀悪いやつだったか?
すぐに止めようとしたが、触れようとすると炎を吐いて来るので止めるに止められない。
「……アポロン。何かを見つけたのでは?」
「まさかぁ。超能力者じゃあるまいし」
「まぁ見てみましょうよ」
しょうがないのでそのまま放っておくと、少しして、アポロンが掘るのをやめた。
何か見て欲しい様子だったので俺は穴を覗くと、そこにはなんと時の石版があった。
「えええ!? な、なんで!?」
「くえっ」
「なんですかロキ急に」
「と、時の石版がある!」
「ええ!?」
俺は直接手で触らないように気をつけながら石版を取り出した。そこには円の絵が描かれている。
「これってまさか、ギルガメッシュの時代にいけたりして」
「ありえますね」
「レイはとりあえず触ってみればいいと思います!」
「シオンに任せる……」
「よ、よし」
ということで俺は触ってみた。身体が光る。この吐き気にもそろそろ慣れてきたな。
少しして視界がブラックアウトすると、次に目を覚ました時、そこには斧で薪を割っている一人の男がいた。見たところ中年の農家だろうか。
俺たちが現れた瞬間、彼はびっくりして飛び跳ねる。
「おわっ! なんだお前ら! どこから来たんだ? スキルか?」
「あ、すんません。そんな感じです。ところで今って太陽暦何年ですか?」
周りを見た感じ草木は生い茂っているし、世界崩壊はしてないみたいだけど。
「あ? なんだ太陽暦って? いや、なんか政府どもがそんな事言ってたな。まぁいい、今は創歴1804年だ」
「そう、れき……」
確かそれって、太陽暦より前の歴史の数え方だ。てことはここは過去! 800年近くも昔か……。
「なるほど。あと、この近くで一番近い街を教えてもらっていいですか」
「街? 街なら近くにサーミル街ってとこがあるが、今は行かない方がいいぜ」
「行かない方がいい? なぜです?」
サーミル街があるってことはここはドロール大陸か。つーかサーミル街ってそんな昔から同じ名前なのかよ。
「ほら、ついこの前『血の三日間』とか言われた戦争があったろ? 今、それの事後処理中だからな。下手に行くと巻き込まれるぞ」
「血の三日間……?」
なんだっけそれ。どっかで聞いたような気がするぞ。えーと。
「確か、マリーがギルガメッシュに向かって言ってた」
「ああそうだ。って事はやっぱりここはギルガメッシュがいる時代か」
「ん、お前らギルガメッシュって奴と知り合いなのか?」
「いや、知り合いってほどでもないんですけど、ちょっと用があって」
「そうか。けどそりゃ難しいだろうな。ここだけの話だが、戦争を起こしたのはそのギルガメッシュって奴らしいぜ。今下手に奴の仲間だと疑われるとたぶん奴隷にされちまう」
「奴隷?」
ちょ、ちょっと待てよ。この流れ確か聞いたことあるぞ。そうだ、ダマルティに聞かされた昔話か! あの通りならギルガメッシュ側についたこの大陸の人たちが奴隷にされてるってことか。
「じ、じゃあそのギルガメッシュは今どこにいるんです?」
「噂じゃサーミル街に監禁されてるらしい。まぁドロール監獄がサーミル街にあるからそう言われてるが、わからんな」
「なるほど。ちなみに、今俺が聞いた事と同じような事聞いてくる少女とかいませんでした?」
「ん? よくわかったな。派手な服きた女の子が二日くらい前にきて、この話をしたらすぐサーミル街行っちまったよ。危ねえって言ったんだけどな」
確実にマリーだ。どうやら、ビンゴだったみたいだな。
「わかりました。ありがとうございます! よし、じゃあ俺たちも行こう!」
「わかりました!」
「おいおい、お前ら俺の話聞いてた? 死んでも知らねーからな」
「ええ、大丈夫です! ご主人様は無敵ですから!」
「はぁ?」
おっさんの呆れた声を背に俺たちはサーミル街へと向かった。流石に街の景観は俺の知ってる街とほとんど違った。
街に入る前に兵が槍を持って検閲している。どうやら、本当に物騒な雰囲気のようだ。
「なんだ貴様らは。と、というかなんだその竜は? とにかく今は戦後処理中だ、部外者は街には入れんぞ」
取りつく島もないな。こうなったら、野蛮だがしょうがない。
「強行突破だ。発動、部分支配!」
「なっ! うっ……」
俺は二人いた兵士を殴って気絶させた。
「いやぁ、完全に悪者ですね私たち」
「正義の為には、仕方なき犠牲……」
「くえぇ」
「ほら急ぐぞ」
そのまま街の中へと入る。軍服らしき物をきた人たちが往来している。どうやら本当に戦争があったようだ。
俺たちの服は周りと比べてもめちゃくちゃ浮いているので度々人々の目線が刺さる。
度重なる職務質問から逃れつつ、俺たちは人の流れを見て監獄を発見した。もちろんここにも監視兵は腐るほどいたが何やら様子がおかしい。
「三番隊は第二地下へ向かえ! 五番隊は――」
隊長らしき人物が忙しなく指示を出している。どうやら牢獄内で何かがあったようだ。
辺りを見渡すと、ツルのようなものが建物内に見える。間違いない、マリーだ。
「ロキ、どうしますか」
「マリーが中にいるんだ。行くしかない」
「わかりました、なら強行突破ですね」
「その、通りだっ!」
俺は走り出して監視兵に蹴りを加える。
「なんだ貴様らは!?」
「悪いが寝ててくれ!」
「ぐわっ!」
次々と監視兵を気絶させて建物の中へと入って行く。
進んでいくといたるところで兵士たちが倒れていた。マリーにやられたみたいだ。その跡を追うようにして俺たちも奥へと向かう。
当たり前だが監獄だけあって中にいるやつらはどいつもこいつも人相が悪い。
そして、しばらくして俺たちは最も地下深くの牢へと辿り着いた。
そこにはマリーと一人の男が牢を挟んで向かい合っていた。
「ふん、お前らも来たのか」
男はこちらを向くと、そう言ってきた。
彼の白い髪は肩に届くほど長く、そしてその重々しい声とは裏腹に整った凛々しい顔をしていた。年齢は、三十代ってとこか。
「あー! シオン! なんでこんなところにいるのっ!?」
マリーが驚いた顔をしてそう言ってくる。
俺は今、どんな顔をしているんだろう。
マリーは、『シオン』の俺としてはそんな悪い奴には思えない。けど『ロキ』としての俺から見れば、シャドウに従う倒すべき敵だ。
「マリー、俺はお前に会いにきたんだ」
「えっ? 何々っ? もしかしてシオン、私のこと好きになっちゃったとかっ?」
「殺して良いですかあの女」
「レイは黙っとけ。いや、ひとつ聞きたいことがあるんだ。マリー、お前はエデンを復活させるつもりなのか?」
「……あれ? シオンて、いつの間にそこまで深入りしてたのかな……?」
にこにこしていた顔が一転、感情がないかのように無の表情へと変わった。




