第9奉仕 大蛇を討伐しました
金属音!? どんだけ硬いんだよこいつの鱗!!
「お坊ちゃま、オウロさん。離れていてください」
「分かった。言っとくけど、僕はお前が死にかけても助けを求められるまでは何もしないからな」
「ありがとうございます、お坊ちゃま」
姿を現した大蛇は泥が付いた白い体で、頭にサークレットを付けている。その赤い目は宝石の様に硬化していて、その牙は猛獣の様に鋭かった。
サークレットの合間から見える赤い第三の目は、ギロリと俺の事を見つめる。
「さて……どう調理致しましょう」
「キシャア!!」
大蛇は考えなしにそのまま俺へとその巨体で体当たりを仕掛けてくる。
そこに、俺は両手の糸で右方向、約10mほど離れている木に二本の糸をくくりつけ、そこへと引き寄せさせる。
「【糸の引力】」
大蛇が木から降りてきてくれたお陰で大分やりやすくなった。
それにしてもだ。こいつに俺の技は通らない。そのため、まずは鱗を剥ぐ手段から見つける事にした。
「キシャアアア!!」
再び突進を仕掛ける大蛇に、俺は頭上に枝がある事を確認し、両手の糸を引っ掛け【糸の矢】で上空にぶっ飛ぶ。
「ふぅ……とても単調で助かります」
狙いは……背骨!!
上空に舞い上がったと同時に、また別の糸を一本ずつ両手から操り、大蛇の鱗と鱗の合間に突き刺す。
「っ……ここです!」
【糸の矢】
「はぁ!!」
手応えは……ある!!
「グギシャアア!!」
どうやら、常にこの大蛇の鱗が硬いわけではないらしい。スタミナの消費スピードが早いとかのデメリットがあるのだろう。
「お、お坊ちゃま……ルミナ様、凄い強いですね……このまま行けば余裕で倒せるんじゃないですか?」
「いいや、まだだ。ここから沢山の実力者が挑戦し死んだ理由が出てくるぞ」
このまま横腹を切り刻んで──
「うぐッ!!」
何も見えない攻撃で俺は弾き飛ばされてしまい、ゴロゴロと沼に落ちる。
顔についた泥を視界と呼吸を確保する為に払い落とし、立ち上がる。
「プーー……ピッシャア!!」
「……紫色の……霧……?」
吸わないほうがいい。そう思った頃には、既に吸ってしまっていた。
次第に手足が痺れて、俺の動きが麻痺する。
これは……やはり……
「……毒……!」
手足を動かしづらくなった為、合計十本の糸を体を無理やり動かす為に使った。
それに、この毒は手足にだけは効き目が早かった。つまり生物を生きたまま丸呑みする為の毒だ。
こっからの攻撃はスキルの【糸】だ。
「おお、あのメイド、毒が既に回っているだろうに立つか……やるな」
「……参ります」
俺は硬度をMAXにした【糸】で結界を作り出す。あの大蛇が十分に動けない程度の結界。あの大蛇が突っ込んだら、まず間違いなくスパッと切れるだろう。
だが俺が攻撃する時は軟度をMAXにする。
舞台は整った……ぶっ殺す。
まずは……三つある内の一つの目を潰す……!
「【糸の矢】!!」
狙いは……右目だ!
「ハァーーッ!!!」
「ギギャーーッ!!」
その時、大蛇の第三の目が光の波を発生させた。その波は、徐々に収束していき、早くなっていく。
波動攻撃の予兆か……!!
【糸】を足場にして、再び上空へ!!
「ハァ……ハァ……ここでの最適解……今度は【糸の矢】ではない…!」
俺は【糸】で大量の白い糸を上空に出現させ、何重にもまばらに層を作って重ね、その糸をまっすぐ、大蛇へと向ける。
【糸の雨】!!
糸たちは、雨を模して、大蛇に振り注ぐ。
有効打……ではあったが……
貫くまではいかないか……!!
大蛇の第三の目からの波動攻撃は、【糸の雨】が終わる頃には既に終わっていて、照らされたマングローブが枯れてパラパラと崩れ去ってしまう。
何という危険性だ……!
次はその第三の目を貰う!!
【糸】でその辺にあった手頃なサイズの岩を持ち上げ、第三の目へと向けて、ヨーヨーの様な軌道で下から上へぶつける。
「【糸の独楽】!!」
くっ……第三の目だけ特別に硬いのか……?
ヒビは入った、後二、三発で砕ける!!
「キシャアアア!!」
勿論、大蛇は抵抗をするが、すればするほど【糸の結界】に皮膚を切られている。
そのまま俺に殺されとけ、クソゲー大蛇!!
「キシャアアア!!」
大蛇は最後の抵抗と思わしき、大量の泥を勢いよく頬袋から吐き出して質量攻撃を繰り出した。
まずい、分析している暇がない。
動かないと生き埋めだ!
「くっ……【糸の矢】!!」
【糸】を駆使して上空へ!!
「はぁ……はぁ……免れた……」
「はは……ラウンド2……って事か?随分と小さくなったようで……」
小さくなったと言えど、まだまだ全然人を余裕で呑み込めるサイズではある。
更には向こうは小さくなって小回りが利く……スピードも上がっているだろう。
対照的に、こっちは糸で無理やり体を動かしているだけだからどんどん満身創痍になっていく。
参ったな……手足の自由が利かなくなってきた。
かくなる上は……
「【糸の捕縛】……!」
小さくなった大蛇は、残像を残しながらビュン!と避け、俺の視界から消え去ってしまった。
くっそ……避けられたか……!
「キシャアアア!!」
大蛇は俺の後ろ、左斜め後ろから突っ込み、大きく口を開け、俺の左腕を奪おうとする。
「ぐっ……!」
あっぶねえ!!
腕が飛ぶ所だった……!
「んっ!」
【糸】で反撃だ!切り裂いてやる!
俺の振るった糸は、肝心の大蛇には当たらず、マングローブの木々を切り裂いた。
大蛇は再び、残像を残して何処かへと消え去る。
「なっ……!」
動きが速すぎる!まずい、次の攻撃が来る!!
……なんちゃって。
木から飛んだ大蛇は俺目掛けて飛んでくる。
とても単調だ。単調すぎて、読み切ってしまった。
他のマングローブから六つの【糸】が飛び出し、大蛇を四方八方から突き刺して拘束をする。
「【糸】で罠って……少しお約束過ぎましたか?」
「プシャア!?」
「さて、こっからは調理の時間です」
【糸】を螺旋状に交差させ、回転を加えて、二対の槍を大蛇の目の前で作り出す。
ギイイイイと甲高い音を立てながら、回転速度を指数的に上げていく。
「【糸の螺旋】!!」
「ギッギギ……」
「硬化して耐えますか……無駄ですよ。あなたはもう逃げられません。チェックメイトです」
「ギッ……グギャアアア!!」
豪快な血飛沫を上げて大蛇は【糸の螺旋】に敗れ散った。
う〜わ最悪……顔面とか服にべっとりついたんだけど……
その時、俺の体からゴポゴポと、肺が血で満たされる音が聞こえる。
「ガハッ……?」
……? 吐血……? 毒はそこまで強力な物じゃ……
俺は口を右掌の付け根で拭う。
その手には赤い鮮血以外に、紫色の液が付着していた。
ふと、大蛇の死体に目を向けると、大蛇の死体にもべっとりと紫色の液体が付いているのがわかる。
……毒袋も貫いちまったか……
駄目だ……もう……動けない……
……死んだか……もう終わりか……
短かったけど、楽しい2周目だったぜ……
俺は少しふらふらと立ったまま、意識を失うにつれて、前に倒れた。




