第6奉仕 レムス家に着きました
俺がメイドとして家を出て働く、1日前の事だった。
リノルもトルマもアオも忙しそうだった。
何故かは知らなかったし、聞かされてなかった。
「お母様。少し、お──」
「ごめん。今お母様忙しいから!!」
「…………そうですか」
トルマもそれを言ってたぜ。実の娘の事がそんなに嫌いか?
俺は家族に話しかけるのは諦めて、自室で眠ることにした。
にしても、この家はマジで広いよな。お城だろもう。
俺がこの家の広さに驚愕している時に、またアオが俺に向かって来て、俺に話しかける。
「あ、お姉様。パーティの準備が終わりました。お食事処に来てください」
「え? パーティ?」
「え? あっ」
俺がアオについていき、ドアを開けると、そこにはたくさんのご馳走とそれを囲む両親の姿があった。
そのご馳走の中には、俺の好きなドラゴンの肉がてんこ盛りであったのだ。
初めに声を上げたのはリノルだった。
「ルミナ!! おめでとう!!」
「…………」
「意外と、驚かないんだな!! さ、席に座って! ご馳走を食べようじゃないか!!」
トルマが俺を席へと誘導し、俺はそれに従い座る。
「…………ごめんなさい。お母様お父様」
「ん? アオ、なんか言ったか?」
「いえ! なんでもございません!」
なるほど……忙しそうにしてたのはこれが原因か!
まぁ、取り敢えず俺を嫌ってなさそうで一安心だ。
「ありがとうございます。お母様、お父様。アオもね」
「いや……私は何もしてな──」
俺はアオの言葉を遮って発する。
「それじゃあ、席につきましょう?」
「……わかりました。」
皆が席に着くと、トルマが木製のコップを掲げて口を開く。
「それじゃあ、ルミナの旅立ちを祝して!」
「「「「乾杯!!」」」」
そう言えば俺は今までパーティを経験したことがない。
俺が思っていた以上に、パーティと言うものは楽しいみたいだ。
「私なんかにこんなパーティ……良いんでしょうか?」
「良いのよ。なんせ暫く顔を見れなくなるもの。今日くらいメイドの事を忘れて楽しみましょ!」
「……はい!!」
「お父様、このお野菜あげます。」
「なんだ? アオ、まだ好き嫌い治ってないのか?」
「お父様好きじゃないんですか?」
「俺は野菜はあんまり好きじゃないんだが……」
「あ! お父様って一発ギャグがあるんだよ! 二人とも見たこと無いでしょ! すっごい面白いんだから!」
リノルはそう言い出して、トルマに無茶振りを振る。勿論、俺はそれに便乗する。
「見てみたいですね」
「私も!」
「そうか? それじゃあ見てろよ? お父様の一発ギャ──」
そうして、時間はあっという間に過ぎていった。
ちなみに、トルマの一発ギャグは死ぬほどおもんなかった。リノルだけ爆笑していた。
「はぁ〜…………今日は楽しかったなぁ」
自室に戻り、ベッドにダイブして呟く。
そのまま疲れ尽きた俺は眠りに堕ちた。
さて、今日は旅立ちの日だ。
「じゃあね。ルミナ。元気でね」
「暇ができたら帰ってこいよ〜!!」
「ありがとうございます。アオは……どうしたんですか?」
「見送りたくないって」
「……そうですか」
「あ! はい! これ、プレゼント」
リノルから金色に輝いた謎のネックレスを手渡される。
「……これは?」
「宝石を入れられるネックレスよ。5歳の時に渡した宝石でも入れて」
「…………わかりました。大切にします」
「お父様、お母様。ここまで育ててくれて本当にありがとうございます。それでは、行って参ります」
俺は目を疑った。
本当に異世界の移動手段として、馬車は常套手段なんだな、と。
「うん。行ってらっしゃい」
「男に気をつけろよ〜!!」
二人の姿が、どんどん小さくなっていき、次第に豆粒サイズとなっていく。
やはり、実家を離れるのはどこか寂しい気持ちがある。
十年も一緒に暮らしてたからな。
ご主人様? の家に着くまで暇だな。読書は俺に合わないし…
寝るか。寝てばっかりだな。俺。
「──ミナ様」
「ルミナ様!!」
俺を呼ぶ声に、俺は夢から釣られて起こされる。
「はっはい! どうしましたか?」
「着きましたよ。ここがレムス家です」
「荷物を持って降りてください」
俺は馬車の運転手さんに叩き起こされ、寝起きでおぼつかない足を動かし、馬車を降りる。
「ここまで運んでいただき、ありがとうございました」
あの奥に見える豪邸が、どうやらレムス家らしい。
今度の豪邸は、お城みたいなものでは無く、館みたいな感じの豪邸だ。
そこで、門の前で一人の子供と、それに付き添うおじいさんが見える。
まあ、この家の子供、と言った所だろう。
そいつらとはまた後で挨拶をして、今は俺の主である「レオン」様への挨拶が最優先事項だ。
リノルから言われた情報によると、世界最強で見ればわかる、とのこと。
正直、そんな奴にメイドなんて要るのかとは思うが、まあ、これも仕事だ。
どんな人なんだろう、かっこいい男性かな、かわいい女性かな?
主人様の姿を思い浮かべただけでも、ワクワクするぜ。
それにしても、あの老人、重装備だ。明らかに重そうな甲冑を被っている。
それと対照的に、子供の方はかなりの軽装だ。
何処へ行くのか、まるで分からない。
暫く様子を見ていると、重装備の老人が不審者を見る顔でこちらへと近づき、話しかける。
白髪で執事服を纏った糸目のおじいさんだ。明らかに厳格そうだ。
「あの……あなたは、どちら様でしょうか?私はオウロ・リーダムと申します」
「はい。今日からレムス家のレオン様に専属する、メイドのルミナ・クラリスでございます」
「ク、クラリス家!? クラリス家って、あのクラリス家ですか!?」
そんなに驚くことか?やっぱりクラリスって有名な家なんだな……
おじいさん……オウロさんに続き、子供の方も俺の方へ歩み、オウロさんに話しかける。
「ん?なんだ、そのメイドは」
外側が黒く、内側が赤いマントを背負い、黒く半袖の軍服、短パン姿のとても小さい少年。金髪で普通に何処にでも居そうなヘアスタイルで、赤い目をきゅるんとさせた、幼い時特有の可愛さがある少年だった。
「あ、お坊ちゃま、この方は本日配属のクラリス家から来たメイドでございます」
鋭い目をした少年は、無茶振りを放つ。
「そうか。ならお前もついてこい」
目の前のお坊ちゃまと呼ばれる少年は、発言から分かる通り、凄くワガママなのだろう。
そんなお坊ちゃまが、今から何処へ行くのだろうか。
「え!? 正気ですか! お坊ちゃま!! 例えあのクラリス家と言えど、装備もないんですよ!?」
「失礼、装備ならここに」
俺はカチャ、と音を鳴らしながら腕を動かして小手を見せつける。
「装備って……ただの小手ではないですか……」
「そうですが、これだけで充分でしょう」
「行くぞ、オウロ、新人メイド」
「いえ、お坊ちゃま。私はレオン様の専属メイド故に、そのお願いを聞き受けることはできません」
俺は主になるであろう「レオン」に挨拶をしなければならない。
だが……何処にいるかわからん。そこで、俺は目の前の少年に聞いてみる事にして。
「恐縮ですが、お坊ちゃま。レオン様の居場所は御存知でしょうか?」
「レオンとは僕の事だ」
「…………」
「えええええええええええーーーーッ!?!?!?」




