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第40奉仕 ラウィニウム帝国への侵略者が現れました

「ハァ!!!」


 ムルス様はその黄色い刀身を魔姫(マキ)に向かって勢いよく一振り。

 魔姫(マキ)にクリーンヒットした。


「わっあち!! ……な〜んだ……熱い刀身だけど……子供騙しじゃーん!!」

「キャハハハハ!!!」


「笑って刀身を受け止められるのも……今のうちだ!!」


 ムルス様の刀身が……青い炎で染まっていく……!

 それと同時に、熱気も強まっている!


「わっ……この!! 余の可愛いお目々が乾いちゃったじゃない!!」


 ムルス様の剣撃を、魔姫(マキ)は何処からとも無く取り出した両刃の両手剣で防ぐ。


「ッ……!? 両刃の剣!? どこからだ!?」


「さぁね! 教えるわけないでしょ〜!!」

「ふんッ!!!」


 魔姫(マキ)は両手剣を振り上げて、ムルス様へと降ろす。

 勿論、ムルス様は炎の刀身で受け止める。


「くっ……重い……!」

「そこらの魔姫(マキ)とは一味違う、と言うのか……!」


「当たり前でしょ!!」

「私は恐怖の魔姫(マキ)なんだから!!」


 思っているよりアホなんだろうか。


「…………自ら正体を名乗ってくれるとは」

「間抜けでありがたい!」


「うっさい!! 【漠撃波(ファルスム・モニトゥム・ボンバルダティオニス)】!!」


 青い衝撃波が、ムルス様に向かって放たれる。


「くっ……! 『守備(プラエシディウム)』!!」


 スキルでバリアを出し、防御をするムルス様。


「身構えても無駄よ!! これは防御貫通なんだから!」


 青い衝撃波がムルスのバリアを突き抜けて行った!!


 くっ……! まずい!! ムルス様と言う高い戦力が!!

 俺もこの戦闘に参入したいが……レベルが高次元すぎて中々入る隙を見極められねぇ……!!


「隙ありよ!! 『打撃(イクトゥス)』!!」


 隙を見出したミノは銀色の肉球を模したガントレットで、魔姫(マキ)へと攻撃する。


「あっ……しまっ──」


「全く……妹の尻拭いをするのは誰の役割だと思ってんだ」


 だが、そのガントレットを新たに現れた魔姫(マキ)はいとも容易く、ヌンチャクで防御した。


「へっ?」


「ぱ……パウォル!! おっそいわよ!!」


 パウォルと呼ばれている魔姫(マキ)は、男性で、両手の甲に丸い穴が空いており、外が黒く、中の布が赤いマントを着ていた。

 黒い髪に、青いメッシュが入っていて、神父のような服装にチェーンを巻きつけていた。

 青い瞳に、眼鏡を掛けていて、眼鏡をカチャッと鳴らして位置を調整している。


「うるせー。ごちゃごちゃ言うな」

「雑魚のくせに煽りグセのせいで敵をパワーアップさせちまうんだから」


「くっ……パウォル酷い!!」


「キーキー喚くな。うるせぇよ」

「さて……お前ら、どうやって死にたい?」


 その言葉に一番反応したのはミノだった。


「はぁ?」


「今諦めてくれれば、死に方くらいは選ばせてやる」


「そう簡単に諦める訳ないでしょ!!」


 激昂したミノは、その身体能力を活かして、一瞬でパウォルに近づき、打撃を繰り出す。


「ばっ……ミノ!! 近づくな!!」

「そいつらからは戦っては行けないと、本能が戦闘を拒否してる!!」


 俺がそう言った時にはもう、手遅れだった。


「はぁ!? そんなの知らな──」


 ミノは顔をパウォルの大きな手に掴まれてしまっていた。


「全く……馬鹿は困るねぇ」

「お互い苦労させられてるだろ? 馬鹿には」


 くっそ……手出しできない。

 ミノを人質に取られているも同然だ……!


「痛っ……離しなさいよ!!」

「頭ッ……割れるうう……! 離して!!」


「ハァ〜〜〜……『フォルミド・カンピ』」


 ミノに呆れて、ため息をつくパウォル。

 そのスキル名を言った瞬間に、パウォルの掌から黒い煙が立ち上った。


「ミノーーーーッ!!!」


「うっせぇ……そんなにこいつが恋しいか?」

「…………お前、良く見たら……ライン家の人間か」

「しかもこれは……中々希少な……」

「過半人獣か……」


 過半人獣……? なんだそれは……!!


「ミノをお離しください……!」


 少しばかり冷静になった俺は、口調を正す。


「なんだ……? お前、雰囲気……話し方がさっきまでとは違うな」


 こいつ……鋭い……!


「ダメだ。こいつは売る」


「ハッ!! 天下無敵の魔姫(マキ)さんが人身売買で小銭稼ぎかよ!!」

「聞いて呆れるぜ!! そんなの、どっかに強盗に入ればそれで終わりだろ!!」


 マナは冷や汗をかきつつ、パウォルに煽りを入れる。


「…………だから?」


「だから……ミノを離せ!!」


「無理だな」

「そもそも、そんな安っぽい挑発に乗るほどアホではない」

「それに……この体は物好きが好む。変態に売り、資金を稼ぐ」


「くっ……!」


「お前ら! そこのメイドと赤髪だ!」


 俺だ。パウォルは俺とマナを指名している。


「力も、この馬鹿のような勇気も持ち合わせないお前は、何を持ち合わせるんだ?」


「なっ……」


「何を持ち合わせるんだ?」

「……断言しよう」

「お前には何の価値もない。芸もない、知恵もない、守備の力も……」


「くっ……」


「周りを良く見てみろ?」

「そこの軍人皇帝は人間ながら我が妹と対等に打ち合っている」

「この獣人は馬鹿全開だったが、勇気がある」

「お前やその後ろの赤髪の奴はどうだ?」

「余にビビって近づいて来ないではないか」


「これは……分析を──」


 俺の反論を遮り、パウォルは無理難題を言葉にする。


「なら、余の動きを見切り、余を倒してみせよ」


「は? 何言って──」


「【オディウム・リンゲレ】!」


 パウォルの左手から、とても白く、なんの汚れもない純白な弾丸が放たれる。


 なっ……純白な弾……?

 小さいぞ……?

 いや、良く考えろ俺……!

 どういう訳だ、あいつらの発言を今一度良く考えて──

 あ、駄目だ。間に合わない。

 死──


「4th.『アンニア=アウレリア』!!」


 俺が目を瞑った頃には、マナが俺を守ってくれていた。


「うッ……マナ!?」


「なァに悩んでんだよ!! ルミナ!!」

「答えは簡単だろ!!」


「……え?」


「全部の攻撃を避けて、あいつらをぶっ飛ばす!!」

「そうだろ?」


「……簡単に言うな」

「よし! 行くぞ!!」


 顎に手を当てていたパウォルに向かって、マナは走り出す。


「あれで防げる……か」 

「面白い素材だ」


「【糸の結界】!!」


 紫色の合金糸で、俺は結界を張り巡らせる。


「……褒めてやる。中々に洗練された技だ」


「黙れ!!」

「【水糸の刃】!!」


 パウォルに向かって、水の【糸】を数発、撃ち出す。


「……残念だな。先程のクオリティは消えた……あの技だけを極めたというのか」

「哀れなり……ルミナよ」


「なっ……お前……! 俺の名前をどこで……!」


「そんなのどうでも良いだろう?」

「来ないのか?」


「あぁ…俺は罠を張るタイプのアタッカーなんでな!!」

「【糸の捕縛】!!」


 合金での捕縛だ! 脱出されるわけがない!


「ほう? これも中々に洗練されし技……」

「だが、無力だ」


 パウォルは、俺の合金の糸を軽々と腕力だけで破壊した。


「なっ……」

 それは合金の糸だぞ……!?

 いとも容易く切られちゃ困る代物なんだよ!!


「よもやこれまでか……つまらん」

「お前の出番は無さそうだな。てか、何故来た? メトゥス」


「なっ……もう一体……!?」


 俺の背筋に冷や汗が流れ落ちる。マナの動きも止まっている。


「………………」


 メトゥスと呼ばれた少年は、黒い靄が素肌に纏わりついており、軍服にパウォル同様のマント、それにガーターベルト? にブーツを履いていた。


「失せろ。メトゥス」

「お前が居るとつまらん」


「…………余はここに居ちゃダメ?」


「あぁ、お前には役割があるだろ」

「行ってこい」


「………………はぁい」


 パウォルにそう言われ、渋々とメトゥスは去っていった。


 良かった……去ってくれた。

 さっきのは本当に何だったんだ……?

 まるで……まるで、眼球に蜘蛛の足が這うような気色の悪い感覚は……?


「さて……軍人皇帝ももう、戦闘不能のようだ」

「見てみろ」


 パウォルに言われるがまま、俺らはムルス様を見る。


 ムルス様の刀身は燃えておらず、ただの剣となっていた。その剣を杖代わりに、片足立ちから立とうとするムルス様。

 だが、手足が生まれたての子鹿のように震えて、立つことすらままならない様子だった。


「あらぁ! 手足が震えて、顔が真っ青になっちゃってるわよ!!」

「温めてあ・げ・る♡」

「キャハハハ!!!」

「滑稽ね!! あんなに意気揚々と余に突っかかってきたのに、最終的には手足を震わせて顔面蒼・白!!」

「恥ずかしくないの〜? キャハハハ!!!」

「その剣の鞘を杖にしないと、もう立てないおばあちゃんになっちゃった?」

「大丈夫? 支えて上げようか?」

「キャハハハ!!!」


 勝ちを確信し、煽りをヒートアップさせる魔姫(マキ)

 それとは対照的に、パウォルは冷静な分析を続ける。


「まぁ……持った方と言うべきだな」

「あの軍人皇帝は強い。恐るべき事に、人間の域を越えて我々、魔姫(マキ)の域に踏み込んでいる」

「何という女だ……」


「うるっせぇ!!」


 俺は恐怖を断ち切らせ、怒りに任せて合金糸で大雑把にパウォルへと刃の基本攻撃をする。


「……もはや技に頼らない大雑把な糸の斬撃」

「堕ちたな。獣に」


「ハァアアアア!!」


 更に苛立った俺は、何を思ったか、パウォルへと突進する。


「正気を保てなかったか。愚者よ」


「ゴッ……!」


 パウォルはそんな俺を簡単にヌンチャクで弾き飛ばす。


 こいつ……顎に……人間の急所に……


「さらば。獣よ」


 くっ……視界が……霞む

 くそ……こんな……呆気なく終われるか……よ……

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