第39奉仕 交渉が始まりました
そう言えば、この国の風貌は何処もかしこもスチームパンクって感じだぜ。
工場から発せられた煙が息巻いている。
「あなたは……軍人さんかしら? 軍服を着てるし……そうよね?」
「失礼、私はラウィニウム帝国の皇帝。ムルス・ウルティムスであります。以後、お見知りおきを」
まるで従者のようなポーズをとるムルス様。
この人が皇帝!?
あ〜まぁ、戦場に立つっていう皇帝も……居るっちゃ居る……のか?
いや、居ないだろ。多分皇帝はそんな戦闘職じゃねぇだろ。
もっと……後ろの方で指示とか……するもんじゃねぇのか?
「あら! これは失敬……私、レムス王国の国王の代わりにこの国へやって来ました、王妃のミウ・レムスです。こちらこそ、よろしくお願いします」
「私の後ろに居る者は私の従者ですので、お気になさらず」
「了解致しました。王妃陛下、こちらでございます。足元、お気をつけください」
「ありがとうございます」
護衛の俺らはムルス様に連れられていくミウに続いて行く。
黒い城の中は甲冑を被った近衛兵がわんさか居て、内壁すら黒い石で作られていた。
……すげぇ。中に甲冑がある。
かっけぇ……ファンタジーでの漢の夢が目の前にある!!
かっけぇ〜〜〜〜……!!!
「こちらです、王妃陛下」
「失礼します」
客室はやはり黒やグレーを基調の内装だ。だが、一番良いのは黒と白のタイルを交互に置いた床だろう。
すっごいかっこいい!! 厨二病に爆刺さりすると思う!!
俺には刺さった。
「そちらのソファーにお座りください」
ミウはソファーに導かれたが、俺らは護衛なので、偉そうにソファーに座ることはせず、ただミウの後ろについた。
「わかりました」
「さて……今日、ここに来たのは挨拶だけではないのでしょう?」
ムルス様はミウの目論見を見抜いていたようで、揺さぶりをかける。
「……流石、広大な国を治めただけありますね」
「人の内側を読むのも容易い。と言うことですか」
「ええ。挨拶だけではありません」
「それでは、何をしにここへ?」
「貿易交渉です」
貿易交渉……? 地理……うッ頭が……
「ほう。我が国からは何が欲しいと?」
「武器が欲しいと言う所存でございます」
「武器? それはまた何故?」
「国王陛下によると、国民の自衛手段として欲しいとの事であります」
自衛手段必要なのか? 結構安全そうに見えるが……
まぁ……足りないのかな? 武器。
武器って結構消耗品な面あるしなぁ。
「なるほど。では、こちらからは食料品を要求しよう」
「食料品……ですか?」
「あぁ。武器十個につき食料品五十キロだ」
結構多い要求だな。
これでは不釣り合いじゃねえか?
「……少し、武器と食料品の割合が不釣り合いではありませんか?」
そうだミウ!! 言ってやれ!!
「…………ほう?」
「では、貴殿は武器十個につき、何キロの食料品をくれると言うのですか?」
「武器十個につき、五キロの食料品でどうでしょう」
いやそれは少なすぎるだろ!!
なんだ? こいつ交渉を某人間讃歌アニメから学んだのか!?
ケバブ屋じゃねぇんだぞ!!
「少ない。四十キロだ」
「二十キロで……」
「三十」
「三十! 交渉成立!」
最初から最後までケバブ屋だったな……
「それでは、これで話は終了ですか?」
「まだ要件はあります」
立ち上がろうとするムルス様を、ミウは言葉で引き止め、再びソファーに座らせる。
「……なんですか? 話してください」
「はい。同盟の提案です」
同盟……? おお、中々ワクワクする提案だなぁ。
転生系では結構あるあるでベタな展開だ!
まぁ、相場は俺が国の当主なんだろうけどな。
「同盟……か」
「一体何故?」
「ここ最近は魔姫の目撃情報が指数的に上昇してきているのです」
「それに、集団で行動をしている魔姫も出てきていると情報があります」
「そうなると、魔姫の同盟だとかその様な集団があると考えても良いでしょう」
「その為、我々レムス王国としては貴国と同盟を組みたいのです」
「今現在、その同盟とやらに参加している国は幾つありますか?」
その質問をされた途端、ミウの顔はわかりやすく曇った。
「いえ……それは無いのですが……」
「それなら、当国が貴国と同盟に参加する意義はない」
「貴国よりも当国は戦力が多い。同盟を組めば当国の負担が増えるのみだ」
そんな事無いと思うがな……
戦力の更なる増強とか、期待できるだろ、多分。
「……そうですか」
「では、以上で提案は終わります。ありがとうございました」
「ありがとうございました。王妃陛下はレムス王国へ帰国なさるのですか?」
「はい。私たちは暫し観光をしてから帰ることにします」
「わかった。お気をつけて──」
貿易が終わろうとしていた時だった。その時に、突然、扉がバタン!!と勢いよく開いた。
「その貿易!!!」
「ちょっと待ったぁ!!!!」
誰だ……? てかそんな結婚式に割り込む感じでこんな所来るなよ。
黒髪にピンクのメッシュを入れた三つ編みの女の子だ。ノースリーブのパーカーを着ているが、胸辺りまでしかパーカーの布が無く、下に着ていた競泳水着のような物が見えている。
スカートを履いていて、その下にはガーターベルトを履いていた。
そして特筆すべきは、その腕だった。様々な色、形、瞳孔の目の各々がギョロギョロと動いており、瞬きのタイミングも違うのだ。
「…………私はムルス・ウルティムス。貴様は何者だ?」
「えー!? まさか名前だけで余の名前を知ろうとしてんの〜!?」
「全く釣り合ってないんですけど〜!!」
……見た目にそぐわず、メスガキって奴か?
典型的……と言える見た目ではないが。
「いや……その腕に生えている無数の目。言われなくとも分かる。魔姫だな?」
「ハァ?? 人間如きが余の正体を知ろうとか、生意気なんですけど〜!!」
「……もう良い。話にならん」
「ムルス様よォ……俺たちも加勢するぜェ!!」
マナの提案に、ムルス様は少し嫌そうな表情となったあと、また真顔になり、その提案を叩き切った。
「……助太刀は無用だ」
「ええ!?」
「魔姫一人くらいなら、私で対処できる」
「ハァ〜? ?私が? 人間に? 負ける? ないない!! あり得ないんですけど〜」
ッ……なんだ? この違和感は……?
背中が痺れる様な……悪寒?
どういう事だ……? そう言う固有スキルか……?
皆は何もそんな物は感じていないみたいだが……
「それに私は人に迷惑を掛けるのが似合わない者なんでな」
ムルス様がその刀を鞘から抜くと、それはただの刃ではなかった。黄色く燃える刃だったのだ。
熱ッ!? こんな距離離れてんのに、ここまで熱が……!?
「いざ、参る」




