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第35奉仕 謎の左腕を貰いました

 いや……確かにこれから義手を作りに行こうとしてたけど!

 何故知っている……?


「ほら、左腕を差し出せよ」


 モルペウスは俺に左腕を伸ばす。


「いや……遠慮しときます。知らない人から物を貰うなとか言われてますし……」


「俺ら知人だろ?」

「ほら、こっち来いって!」


「い……いや……」


「……なんだ?俺の空間にひび……?」


「ルミナ!!」


「お坊ちゃま!?」


「なっ!? ……彼、中々やるようだ……」

「俺の空間に入ってくるだけじゃ飽き足らず、世界を破りやがった……!」


「『痺弧雨媽(グランス・トルペンス)』!!」


 宙に浮いたレオンからモルペウスへ、弦がしなやかに射出される。


「チッ……じゃあね、また会おう、ルミナ」


 だが、弦が当たる前にモルペウスは消え去ってしまった。


「なんだったんだろう……あの人」


「ルミナ……魔姫(マキ)の知り合いとか居るのか?」


「いえ、いません。ただの不審者ですので、気にしないでください」


「そうか……って、ルミナ……その左腕……」


「えっ? あ〜……」


 あいつ……! 左腕置いていきやがった!

 これが吉と出るか凶と出るか……

 それはわからんが、まぁ……一旦は義手を作らなくて良くなったと考えるか。


「……お坊ちゃま、一旦客室に戻りましょう」


「だが……いいのか? ルミナ」


「何がですか?」


「クラリス家伝統の小手だよ。特注しに行かなくていいのか?」


「あぁ、確かに」

「行きましょう、武器屋」


「うん」

「今度こそちゃんとついてこい」


「わかりました」


ーーー到着ーーー


「ここだ」


「なるほど……ここが」


 ……ん?

 左腕に文字……? が浮かび上がってくる……?

 紫色だ。文字化けしたように読めない。

 なんだ……? これ。

 読めないのに意味が分かる……?


『三秒後、店内から強盗が現れる』


 強盗……? そんなん、出てくるわけ……


「なっ……なんだお前らは! 自警団か!?」


「…………」


【糸の捕縛】


「ウワァ!? なんだこの糸は!? おい!! 離せ!!」


 ぐるぐる巻きになった強盗三名を、店先に置く。


「……よく気づいたな」


「あぁ……たまたまですよ、たまたま」


「たまたまなのか? まぁ、ルミナが言うならたまたまか」


 どういう訳だ……?

 本当に浮かび上がってきた文字と本当の事が起きた。

 未来を予知する腕……?

 いや……そんな…チート能力、貰って良いのか……?

 ……いや、いきなり実戦に投入はできない。

 しっかり性能を見なければならないな。


 まず……俺の意志で予知は可能なのか。

 可能なら何処までの範囲でできるのか。

 どれ……二秒後、何が起きる?


 ………………何も出てこない。

 なら……三秒後! 何が起こる!!


 ……何も出ない。

 なんなんだよこの腕!! 使えねぇな!


 俺が左腕の使い方に苦戦していると、中から、ムキムキでいかにも鍛冶屋っぽいオヤジが現れる。

 茶髪で水色の瞳をして、ひげを顔いっぱいに生やしたダンディな男だ。


「おお! 盗賊を捕まえてくれてありがとう!!」

「お礼をさせてくれ!!」


「え……えっと……お礼、ですか?」


「あぁ!! 俺の店にある武器を一つ無料でやる! どうだ!」


「あ〜……いや、特注の武器が良いんですよ」


「おう! なんだ!」


「小手です」


「小手……? あんた、名前は?」


「名前……? ルミナ・クラリスです」


「やっぱりか!! 武器屋なのに特注品が小手だからそうじゃないかと思ったぜェ」


 この人のノリ、ちょっとついていけないな……


「はい。自分の意思に合わせて動く糸……まぁ、素材が合金だと嬉しいです」


「なるほどなァ……クラリス家の小手の設計書何処にやったかなァ……」

「まァいいや。まずは採寸させてくれ」


「わかりました」


 オヤジは、メジャーのような物を持ってきて、それで俺の手の大きさや太さを測る。


「ふむふむ……なるほどな!!」

「これなら、一般のSサイズで大丈夫そうだな!!」

「よし! 三日くらいしたらまた訪れてくれ!」


「わかりました」


「またな!!」


「はい」


 手を振っているオヤジに一礼し、王宮へと戻る。


「お坊ちゃま、客室に戻りましょう」


「あぁ。わかった」

「なぁ……ルミナ」


「なんですか?」


「その左腕、本当になんともないのか?」


「え?」


「ちゃんと機能してるか?」


「ええ……まぁ……」

「あ、そうそう。この腕、偶に紫色の文字を浮かべるんです」


「紫色の文字を浮かべる……?」


「はい。いつ見せるかはこの腕次第みたいですが……」


「はぁ……その文字が出てくると、どうなるんだ?」


「未来が予知されます」


「……そんなんできんの? 凄いな……」


「はい。ですが……」


「ですが?」


「ちょっと……腕が気紛れすぎですね」


「初めて聞くな。腕が気紛れって」


 ……条件とかあれば助かるんだがな。

 完全に気紛れっぽいんだよなぁ。

 まぁ、いいか。

 元々の腕に機能が増えただけだ。

 無問題だろう。


 部屋に戻ると、傷が治ってしっかり元気なマナが俺の自室のベッドに座っていた。


「おお……どこ行ってたんだ? ルミナ」


「義手の調達に行ってました」


「義手……? それ義手なのか!?」


「いえ、生身です」


「……ん??」


 まあ、誰でもそんな反応になるだろうな。仕方ない。


「謎の存在に途中で出会いまして」


「謎の存在……」


「まぁ、ですが大丈夫でしょう」


「そうか……それなら良いんだが」


「それより、マナさんは?」


「絶好調だぜ!!」


「それなら良かったです」


 そんな時、俺らの背後からちょっとだけ嬉しそうな、声の抑揚があるセレナの声が聞こえた。


「皆、ごめんなさい」


 なぜ後ろから……?

 あぁ、レオンが言ってたな。花を買いに行ってると。


「私の復讐の為に裏切っちゃって……本当にごめんなさい」


 俺は別に大丈夫の意を、振り向きながら伝える。


「いえいえ、別に良いですよ。セレナさ──」

 ──目隠しがない。

「誰ですか?」


「えっ」


「セレナさんは両目を失ってて、目隠しをしてるんです! あなたは誰ですか!?」


「…………セレナだよ」

「宝石が私の右目になってくれてるんだ」


「宝石が……?」


 確かに、彼女の左目は閉ざされている。だが、右目が紫色で、光を反射していた。


「うん。何言ってるかわからないだろうけど……」

「本当なんだ」


 へぇ……この世界の宝石はそんな事もできるんだ。

 じゃあ俺が貰ったこのネックレスも何か効果があったりすんのか?


「…………オウロさんは何も言わないんですか? いつまで花を突き出してるつもりですか?」


「おや……これは失敬」

「私は戦闘をしていません。故に、怪我は何処にもありません」


「でも……腰は?」


「お坊ちゃまが治してくれたのですが……年ですかねえ?」

「骨が柔らかくなっているような気がします。」


「そうですか。安心です」


 一通り、話を終えた所で、レオンが口を開く。


「さて。ルミナの小手ができた後は、僕らはレムス王国に帰る。マナとセレナもだ」


「なんで俺らも?」


 至極真っ当な疑問をレオンにぶつける。


「お父様からそう言われているからだ」


「……まぁ、いいか」


「この国に留まる時間はあと3日しかない」

「皆で思い出でも作ろう」


「おうよ!!」

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