第34奉仕 壊れた小手の新調をしに行きました
「ん……」
ここは……王宮の客室……?
夢……だったのか?
「ルミナ……目覚めたか」
「お坊ちゃま……おはようございます」
「その……ごめん」
「一応、再生を試みたんだけど……ダメだった」
「炭からじゃ、とても……右腕までしか治せなかった」
俺の右腕は見事なまでに治っていた。それどころか、艶を増していた。
だが、左腕はというと、第一関節から下が存在せず、包帯でぐるぐる巻きにされていた。
夢……じゃないのか。
レオンの目元が腫れている。
「いいえ、お坊ちゃまが謝る事ではないですよ。それに、右腕だけでも治せたのも奇跡です」
「マナさんは?」
「マナは……ぐっすりと眠ってるよ」
「こっちはちゃんと治せたんだけどな……」
「そうですか……良かった……オウロさんは?」
「オウロはセレナとどっか行った」
「お見舞い用の花を買ってくるとかなんとか」
「そうですか……」
「お坊ちゃま、私たちも出かけましょう」
「え? 何をしに行くんだ?」
「私の義手を作りに行くんですよ」
「それ……僕も必要か?」
「偶には付き合って貰いますよ。護衛の護衛をしてください」
「…………しょうがないな」
「ありがとうございます」
義手……義手を作ると言ってもねぇ……
なんかいい感じの店ねぇかなぁ。
「お坊ちゃま」
「なんだ?」
「義手でいい店を知りませんか?」
「知るわけ無いだろ。僕は怪我とは無縁だし」
「そうですか……そうですよね」
「一から探しましょうか」
「うん。そうしよう」
町中は本当に賑やかだ。
肉屋が野菜も合わせて売っている。
俺は別に元々主夫だったわけではない。だが、言わせてもらおう。
なんてお得なんだろうか。
「あ、お坊ちゃま、山の主のソテー、食べたかったですか?」
「食べたかったが……命が第一だ」
「そうですか」
「………………『退魔の秘薬』は?」
「…………あ」
「…………戻りましょうか」
翼を生やしたレオンに【糸】を引っ掛けて一緒に飛行する。
そう言えば、装備も無くなってしまったな。
新調しなければ……
「着地するぞ!」
「了解です」
【糸の引力】で簡単に着地する。人骨はもう踏まれまくって原形をとどめていない。
歩くたびに、人骨が擦れ合ってガラガラと音が鳴る。
「……ふぅ……相変わらず、人骨が見るに堪えない程ありますね」
「あぁ……秘薬を探しに行こう」
「はい」
「どうやら『退魔の秘薬』は巨大な木人形の檻の中……らしいですが」
「木人形と言えばやはりドリュアスですよね。山の主の中でしょうか?」
「……行ってみるか」
「はい」
俺らは山の主と戦い、命を落としかけた戦場へと戻ってくる。
「ここ……ですが……」
なんだ……? この惨劇があったような……
山の主の大半が消し飛んでいる。
残っているのは枝に引っかかっている金でできている、カギの形をしたネックレスだ。
「鍵の形をしたネックレス……?」
「それしかないですね」
「…………秘薬はどこだ?」
「……山の主と一緒に消し飛んだ……とか」
「……それならしょうがないか……」
「それか、これが『退魔の秘薬』とか……」
「薬が鍵なわけ無いだろ」
「山から降りるぞ」
「わかりました」
……これが本当に退魔の秘薬なら、俺の腕治るんじゃね?
いや……治るとは限らないか……試すのは辞めておこう。何かあったら怖いしな。
「よっ……と。ルミナ、降りろ」
「はい。お坊ちゃま、その鍵のネックレスをください」
「いいが……何に使うんだ?」
「お坊ちゃまにこれをつけてあげます」
「そうか……ありがとう」
俺はそれを右腕で受け取ると、そのままレオンの首にかける。
「似合ってますよ、お坊ちゃま」
「では、義手を作ってくれる店を探しましょうか」
「武器屋とか、あればいいんですけどね」
「あぁ。確かあるぞ」
「そうなんですか? 先に言ってくださいよ」
「ごめん。『案内』」
「なんですか? それは」
「僕の視界に行きたい場所への案内が見える」
「まぁ、戦闘に使うのは難しいスキルだ」
「そうですか」
「それでは早速、案内して貰いましょうか」
「あぁ。こっちだ」
『ソムニウム・スンムム』
「あ…………?」
いつの間にか、空が紫色になっている。それに、レオンの姿も忽然と消えた。
「こっちだ」
「誰……ですか?」
「こっちだ」
…………怪しい。怪しすぎる。
ガンジーが助走をつけて殴るレベルで怪しい。
……悪意は感じないのが不気味さを増している。
「こっちだ」
「……行けばいいんでしょ、行けば」
少し進んだ突き当たりを乗り越えた先に、その姿はあった。
右目が二つあり、鋭い紫色の目をした少年。
白髪で短いポニーテールをし、軍服とケープに身を包んだ少年だった。
「やぁ……久しぶり、ルミナ」
「久しぶり……?」
何言ってんだこいつ? 俺とこいつは初対面だが……
イカれてんのか?
いや……外見からしてイカれてるわ。
「ん……?あ〜、初対面だったか、ごめんごめん」
「はぁ……」
「俺は『魔姫』、モルペウスだよ」
「ふ〜ん……魔姫……えっ魔姫!?」
魔姫……それは幼い頃にリノルから聞いた事がある。
確か──
「ルミナ、出会ったらまず逃げなきゃいけないのはなんだっけ?」
「はい、魔姫です」
「そう、よくできました!じゃあ、魔姫って何?」
「魔姫は……人間に被害を与える未知の存在です」
「そう、その通り」
「花丸あげちゃう」
──だとしたら俺、相当なピンチじゃねえか!?
「あ〜、そう怯えなくても大丈夫だよ」
「別に俺は人肉を喰らうとか、そんなん無いし」
「あ〜……こほん」
「……?」
「お前に左腕をやろう」
「はぁ?」




