第29奉仕 助けに来ました
「……【糸の矢】」
俺は頂上へ向けて、【糸の矢】で飛び抜ける。
「えっ!? ちょっ……速っ……待ってくれよ!!」
「クソッ……7th、最大出力!!」
……レオン、大丈夫かな……
セレナもセレナで何か禍々しい感情が溢れていた。
殺気とか……そう言う類の感情が。
よし……頂上だ。頂上に辿り着いた。
「お坊ちゃま、お坊ちゃま! 大丈夫ですか?」
俺はレオンの体を揺さぶる。
「……う……」
「……眠ってるみたい……ですね」
「良かった……」
「お〜い! 大丈夫か!」
少し遅れて来たマナもレオンの事が気になっていたようだ。
「ええ。眠ってるだけみたいです」
「そうか……それは良かったな」
さて……セレナは何処に行った?
いや……セレナは後回しだ。俺らがこの山に登ったのは『退魔の秘薬』が欲しいから、それだけだ。
「マナさん、私は『退魔の秘薬』を探します」
「え?」
「あなたは? どうするんですか?」
「俺は……どうするか……」
マナは少し悩んで、顎に手を当てた後、答えを出す。
「俺は……ルミナに同行する」
「……分かりました。一緒に『退魔の秘薬』を探しましょう」
「ああ!!」
とは大見得切ったのもいいけど……頂上、なんにもないぞ?
あるとすれば人骨と森か……
森……か。
まぁ、森奥にあると仮定するのが妥当だろうな。
「行きましょう。森奥へ」
「そうだな! セレナも森奥に行ったんかな?」
「さぁ……まぁ、相当な強者みたいですし、大丈夫でしょう」
それに……油断していたとは言え、世界最強に睡眠薬をぶち込む……
中々の強者……洗練されし者。
う〜ん……仮に戦闘になったとして、勝てる気がしない。
「……おい、聞こえるぞ」
マナは唐突に、何かが聞こえると言う。もちろん、俺には何も聞こえていない。
「何がですか?」
「戦ってる音だよ!」
「この音は……ドリュアスか……」
「なるほど。それなら、山の主とやらがセレナさんを攻撃しているのかもしれません」
「そうだな! よし、その地点に向かうぞ!!」
「はい」
……徐々に音に近づいて居るのが俺でもわかる。
セレナ……本当にあの人は俺たちの敵なのか……?
訳アリではあるんだろう。だからこそ、真に敵か決めづらい……
「……ルミナ? どうして、足を止める?」
「マナさん、私たちがこれから踏み込むのはプライベートな空間です」
「……本当に、向かってもいいんでしょうか」
「それは…確かに、セレナは出会って間もない、なんて言葉で表現できない程だが……」
「セレナが死んじまったら、意味ねえだろ!!」
「セレナさんは私たちに『己』を見せたくないでしょう」
「『己』を見せるくらいなら死を選ぶかもしれない」
「……それは」
俺はマナの目を見てしっかりと言葉を口にする。
「………………本当に、向かいますか?」
「……向かわないなら、どうするんだよ」
そんな反撃、予想外だった。
何をどうしたら、セレナは傷つかない?
そこで導き出された答えが、これだった。
「……何もしない」
「……はぁ?」
「あくまでも、私たちの目的は『退魔の秘薬』です」
「…………わかったよ。探すよ!」
……それでも、心配ではあるが……
…………いいや、今はただ、探す事にただ集中しよう。
「マナさん、『退魔の秘薬』はどの様に伝わってるんですか? 場所とか」
マナは少し目を閉じてから、思い出したかのように答える。
「……木人形の巨大な檻の中、らしいぞ」
「檻の中……ですか」
檻……やっぱり、あのドリュアスを倒さないと出てこないのかな。
どうする……どうする、俺。
セレナとドリュアスの戦う声は段々と近づいてきた。弓を構える音と、枝がメキメキ伸びる音、両方が近い。
「『弓』!」
「シャィア!!」
「くっ……」
セレナさんは山の主の攻撃で吹っ飛び、俺の真横にあった木に激突した。
「セレナさん!? 大丈夫ですか!?」
「うッ……来たのね。来ないでって言ったのに」
「い……いや、違くて……」
俺が言い訳もする暇もなく、口を開く。
「それなら、どっか行って」
「分かりました。行きましょう、マナさん」
「お、おう!」
「じゃあな! が……頑張れよ!!」
セレナの少し離れた所で、俺は口を開く。
「……さぁ、まずは考えましょう」
「え? 手当たり次第探せば良いじゃねえか」
「それだともし戦闘になった時、体力を消費した状態で戦闘じゃないですか」
「……それもそうだな」
「檻の中……少しモコッとしてる所を探せば良いんじゃないでしょうか?」
「どうしてだ?」
「檻って高さが無いとダメじゃないですか、だから高さがあればそこにあると考えたからです」
「でも……やっぱり、あのドリュアスを倒さないと出てこないんですかね?」
「……そうだろうな。やっぱり、あのドリュアスを倒すしかねぇよ!!」
「……そうですね、ですが、まずはセレナさんの様子を見ましょう」
「あぁ。そうだな!!」
ーーーセレナーーー
「はぁ……はぁ……はぁ……」
『弓』が全然効かない。
手応えが全く無い。
「キャシャシャシャ!!」
「何……笑ってんだ……」
「『弓』!」
【遠距離射撃】……!
でも、その矢は復讐対象に当たる前に……
パキンッ。
と、折れてしまう。
「ッ……クソ!!!」
こいつ、なんで弓効かないんだよ……!!
【燃える弓】!!
「キーシャア!!」
もちろん、炎もそれの前に掻き消される。
私は地に膝をつき崩れる。
「……こんなの、無理ゲーじゃないの……」
私は復讐途中で山の主に手も足も出ずに殺された。
それが運命とでも言うのか……?
そんな運命、私は絶対に認めない!!
「『弓』!!」
【燃える弓】、【自動照準】!!
「『弓』!!」
くッ……! はは……我ながら、凄い衝撃だ……
これだけの物量……流石の奴も一溜まりもないだろう……!
「キィー……シィア!!」
聞こえたのは無情な現実の声だった。
「…………」
こいつ……こいつッ!!
なんで……なんでなんでなんで!!なんで『弓』が効かないのよ……!!
何度も何度も、何度も何度も何度も弾きやがる!!
「キャッシャア!!」
攻撃の声!
どこだ? どこからだ?
「……ッ! 下か!!」
【隠密】!
「キィヤァ!!」
空を切る音がする。予想外の枝伸ばしだろう。
「なっ……」
【隠密】してるのに……なんで場所がバレて……
あっ……やばッ……これ、死んだ……
ッ、…ごめん、ごめんごめんごめんごめん! お母さんッ……!!
目隠しの下から熱いものが自然と溢れ出す。
……?
なんでまだ生きて……?
「……間に合いましたね」
……この声は……世界最強のメイドの……?
「よォ!! 助けに来たぜ!!」
「……ハハッ……マジかぁ」
「それじゃあ、いっちょ逆転と行こうぜ!!」
私は力尽きた足腰をもう一回だけ奮い立たせた。
「……お願い、私がトドメを刺す。力を貸して」
「……承知致しました」
マナの息を吸う音が聞こえる。
「それじゃあ、行くぞ!! 第二ラウンド開始だ!!」




