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第28奉仕 頂上まで辿り着きました

 登山中、見上げると、豆粒サイズのレオンの姿が見える。


「お坊ちゃま、私たちが襲われてる事も知らずに先に登ってしまったようですね」


「そうらしいな。まぁ、気づいてたらあのドリュアスくらい、ちょちょいのちょいと倒してただろうしな!!」


「ええ。何処に行かれたのでしょうか?」


「分かんねぇ……けど、頂上に向かえばいい話だろ!!」


「まぁ……そうですね」


 頼む。もう厄介事はいらない。頼むから何事もなくあってくれ。


「ピィア! ピィア!!」


「……お鳥様のご来客なようです」


「今度の敵は鳥かァ!! よし!! 俺がぶっ飛ばしてやる!!」


「怪我はしないように」


「任せとけ!!」


 あの鳥は……あぁ、レオンが毒を弾いてた鳥だ。

 真上から降らすのは厄介だが……まぁ、マナなら大丈夫だろう。


「ピャアァア!!」


 あぁ……聞こえる。鳥の断末魔が。


「ルミナ! 良い方法を思いついた!!」


「なんですか?」


「俺のシャベルにルミナの糸を結びつければ、7thで一気に飛べるんじゃねえか!!?」


「確かに……やってみる価値はありますね」


 だが……重量とかバランス云々で落ちるんじゃないか……?


「よし……結んだな?」


「はい」


「行くぞ!!!」


 マナは本気の7thでジェット噴射を最大にまで高める。


 速え……!! 気を抜いたら振り落とされそうだぜ……!


「結構上昇したが、まだ世界最強は遠いな!! まだ豆粒サイズだぜ!!」


「そうですか……この山、どれだけ高いんですか……?」


 あまりもの速さに、上を向くことができない。耐えるのが精一杯だ。


「さぁな!! おっ、世界最強が気づいたようだぜ? 凄い速度でこっちに向かってきてる」


「マジですか?」


「大マジ」

「世界最強が支えてくれるなら、すぐに頂上だぜ!」


「それは……助かりますね」


 そう少しだけ話している内に、二人を引っさげた過保護な世界最強が遥か上空から一瞬で俺らまで到達する。


「何があった! ルミナ」


「お坊ちゃま、慌てないでください」


「いや……心配だし」


「モンスターに襲われただけですよ。ちゃんと撃退しましたから」


「そうか……まぁ、ならいいんだ」


「全く……お坊ちゃまは心配性ですね」


「……そうか? まぁいい。僕に乗っていけ」


 レオンはホバリングしながら背中を向ける。

 その背中に乗っていたセレナさんは、息を切らしていた。


「…………乗る所がありません」


「糸を僕の体に結んでくれ」


「分かりました」


「ルミナー、俺も結んでくれ」


 ジェット噴射で擬似的にホバリングするマナの体とレオンの体を糸で結ぶ。


「飛ばすからな! ちゃんと掴まってろよ!!」


「分かりました」


 ッ……すっごいスピードだ……!!

 ヒエッ……思ったよりも高い……!!

 命綱が糸とかどんな罰ゲームだよ!?


「ルミナ、空気が薄くなってきた。そろそろ頂上だ」


「そんな事も分かるんですか……?」


「あぁ」

「着地するぞ。衝撃に備えろ!」


「分かりました」


【糸の引力】を使って……俺の足を地面に着くようにするんだ……!


 紫色の糸が人骨を貫通して地面へと突き刺さり、着地を安定化させた。


「ふう……なんとかなりました」


 うわ、人骨滅茶苦茶落ちてる。

 マジでここで敗れて死んだ人間も居るんだな……

 あんまり骨を踏まないようにしよう……


「俺もだ!!」


「それは良かった……ほら、オウロ、セレナさん、降りて」


 レオンが気を失いかけていたオウロと、息を整えたセレナさんを降ろす。


「……ありがとう、レオンさん」

「……さらばだ」


 セレナさんはレオンにそう言葉を投げかける。


「あぁ、頑張れよ」


「……すまない」


「え?」


 唐突に謝罪をするセレナさんに、勿論困惑するレオン。


 ドスッ。


 次の瞬間には、レオンの幼い首筋に注射器を刺されていた。

 それを発射した小さな弓は塵となって消えた。


「……は?」


「お坊ちゃま!!」


 オウロが慌ててセレナとレオンの間に割ってはいる。


「セレナ……さん? 何を……」


 なぜ裏切りを……?


「……睡眠薬……注入するタイプなんだが……流石、世界最強と言った所か」


 俺は一度思考を捨てて落ち着き、オウロさん同様レオンに近づく。


「…………お坊ちゃまから離れてください」


「何故こんな事をしたんですか……!!」


 オウロの声からは怒りが顕著に溢れ出していた。


「……私は、私の手で復讐を果たしたい」

「でも、世界最強が居ると……そいつが終わらせてしまう」

「だから眠らせた。」


「もう、御託は要りません! 【氷刃(グラキエス・ラミナ)】!!」


 オウロさんは足から氷の刃を三枚飛ばす。だが、セレナのスキルの方が火力も相性も良かったのだ。


「『(アルクス)』、【燃える(アルデンス)】、【自動照準(アウトマティカ・ディレクティ)】」


 瞬時に全てのセットを終わらせるセレナ。俺たちに無数の弓を向ける。


「あんたらじゃ……私には勝てないわ。精々最強が起きてから来るんだな」

「……まぁ、来ないのが最善だけど」


 息も切れ切れ、もう時期意識を失うであろうレオンは最後の抵抗か、言葉を吐いた。


「ッ……ふざけるな……」


「お坊ちゃま……」


「そんなの……僕は許さない……! くらえ……!【咆哮波(ウンダ・ルギトゥス)】!」


 レオンはまだ子供だ。信じていた相手に裏切られたというのは、さぞかし頭に来たのだろう。

 そこで、広範囲の衝撃波攻撃を繰り出した!


「ッ……!」


 衝撃波ッ!? まずい……落下する!

 オウロと……マナ! 二人を糸で俺に寄せて……近くの陸地に……

 近くの崖に着地しなくては……!!

 死ぬ……!!


「だッ!!」


 俺は二人を抱えて、頂上より少し下にあった崖の草むらに落下した。


 草むらに落ちれた……良かったぁ……死なずに済んだ……


「なんとか助かりましたね……二人とも、大丈夫ですか……?」


「いってぇ……俺は大丈夫だぜ……」


 頑丈なマナ。それとは対照的に、オウロさんは腰を擦っていた。


「痛た……腰が……」


「オウロさん、大丈夫ですか?」


「い、いえ……気にしないでください。私はここまでです」


「おじいさん! 諦めるんじゃねぇよ!!」


 それに、マナは応援を投げかけた。勿論、俺もだ。


「そうですよ。頂上からここまでは近い方ですから、足場になりそうなものを探しますか?」


 だが、オウロの意志はとても固かったのだ。


「……いえ、私はここまででございます」

「お二人は頂上へ登っておいてください」


「……でも、オウロさん──」


「私の心配は必要ありません。人間ではなく、従者になりなさい、ルミナ様」


 …………


「……分かりました。行きましょう、マナさん」


「お、おう!!」


 俺はメイドとして大事な事を忘れていたらしい。

 そうだ、俺はメイドだ。主に従ってなんぼだった。

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