第20奉仕 ファウス=トゥルス王国へ向かう事にしました
はぁー……レオンのリブラ上げや仲直りの為の仲裁人、そして戦闘試合を終わらせたってのに……
休みがたった1週間……? ふざけるなよ、クソが……
そもそも、なんで『退魔の秘薬』なんて探さなきゃ行けねぇんだよ。
主人の命令は絶対なんて制度、誰が決めたんだよ。ぶっとばすぞ。
はー……疲れた……荷解きも終わったし、少し退屈だな……
隣の部屋に遊びに行こっとゲッヘッヘ……
「ミノ様、おじゃまします」
「……勝手に部屋に入って来ないで欲しいわ。用件は何?」
「遊びましょ?」
「帰って」
「そこをなんとか……」
「帰って。」
「はい……」
分からないなぁ……乙女心。
シンプルにまだ知り合ってから期間が短いのもあるんだろうな。
ニコルの方にも訪ねてみるか。
と言うことで。俺は164号室を三回ノックする。
「は〜〜い……ふぁ〜〜……なあに?ルミナちゃん……」
「遊びませんか?」
「いいよ〜〜……何する?」
こっちはミノとは対照的に、随分と友好的だ。まあ、流石にこればっかりはミノがちょっと変なのだろう。
「ニコルさんは、なにがしたいですか?」
「僕〜〜?お昼寝」
「お昼寝……ですか」
「一緒に寝ますか?」
「え、いいの〜?」
「それじゃあ、ルミナちゃんを抱き枕にしてもいい?」
「ええ、良いですよ?」
「それじゃあ、僕の部屋に入って入って〜」
「はい、お邪魔します」
ニコルの部屋はとても清潔感で溢れていて、可愛らしい家具も、かっこいい家具もなく、ただただ質素だった。
「意外ですね」
「何が〜〜?」
「ニコルは、もう少し家具がごちゃっとしてるか汚れてると思ってました」
「失礼だな……寝具ならあるよ」
ニコルは少し腑に落ちない顔でベッドの上にあった抱き枕を掲げる。
「でも、今日は、ルミナちゃんが抱き枕になってくれるんでしょ?」
「ええ、いいですよ」
「やった〜〜」
「じゃ、早速来て〜」
ベッドの上で手を広げるニコルに、俺は飛び込まずにニコルの横で横たわる。
「……つれないなあ」
ニコルは後ろから手を回して抱きつき、俺を抱き枕にする。
「あ〜〜……気持ちいい……ぷにぷにしてる。髪もいい匂いだネ」
ニコルはお腹をふにふにと触り、堪能する。
「……止めてください、くすぐったいです。あと匂い嗅がないでください」
「ええ〜〜〜いいでしょ〜〜」
「同性なら別にいいってわけじゃないんですよ」
「まあ、それもそうだね〜〜……ふぁ〜〜……」
「やはり、眠いのですか?」
「そうだね〜〜……ぐうーー……すうーー……」
「え?寝たんですか?」
返事はない。振り向けばニコルとぶつかり、起こしてしまうだろう。
俺は自室へと戻る事にした。
ガッシリと掴んだ腕を離そうとするが……中々離れない。女子とは思えない馬鹿力だ。
「ふぬぬ……ふう……どんな力なんですか」
ニコルの抱き枕を抱かせて、俺は部屋を去る。
はあ〜……なんか、どんと疲れた。
あの二人と仲良くしようとすると任務前に精神の体力が切れるし、やることも無い……
クオンの任務まであと一週間か……いっそのこと、先に終わらせてしまおう。
「お坊ちゃまー。どこですかー?」
「ルミナ、呼んだか?」
俺の後ろからレオンの声がする。さっきまで居なかったはずだ。
「……なんで後ろに?」
ビビったぁ……なんでこいつ後ろに居るんだ……?
「呼ばれたから……だな。何か用か?」
こいつ怖……
「はい。暇です、1週間も待ちきれません」
「……そうか。お父様とオウロに、もう出発すると言う事を伝える。行くぞ」
レオンはくるりと振り返り、クオンの部屋へと向かう。
「はい」
だが……クオンの事だ。また如何わしいことをしているんじゃないか……?
するなら今度こそはミウとしていてくれよ……!
「お父様、少し宜しいでしょうか」
「おお!! なんだ、レオン!」
ほっ……良かった。何もしてない。いや、それはそれで心配だな。
「ルミナが、もうファウス=トゥルス王国へ行きたいと」
「そうか!」
「オウロを足に向かうと良い!!」
「わかりました。ルミナ、行こう」
「はい」
オウロさんは、もう準備を済ましているのだろうか。
そこだけが心配だな、俺は。
「オウロ」
「ただいま」
レオンがオウロの名を呼ぶと、オウロは瞬き一つの間にレオンの前に現れた。正に従者の鏡だ。
この世界の人たちは瞬間移動がデフォなのか?
いや…この二人がバグってるだけか。
「この館を出てファウス=トゥルス王国へ向かう」
「なっ……早すぎやしませんか? もう少しだけ時間を置いても……ルミナ様もお疲れでしょうし……」
「提案をしたのは私です」
「わかりました。準備ができ次第、外へと向かいます」
「わかった。ルミナ、先に出ておこう」
「わかりました」
俺らは外へと出る。腕を組んでオウロを待つレオンに、俺は質問を投げかける。
「…………お坊ちゃま、何か怖いものはありませんか?」
「急にどうした? なんだ、その質問」
「いえ……少し、気になっただけです。答えなくてもいいですよ」
「…………僕は、最強だぞ? 怖い物なんかあるわけ無いじゃないか」
「……そうですか、そうですよね。失礼しました」
「…………」
レオンと話すことがない。
どうしようか……
「…………」
……変な空気になってしまった。
どんな話題を振ろう……困ったな。
「…………お坊ちゃま、なんか言ってくださいよ」
「えっ急だな……」
「そうだな……それじゃあ、お父様とお母様が──」
「お坊ちゃま、準備が整いました」
レオンの言葉を遮って、オウロさんは俺らの前に現れる。
「お、オウロ、来たか。よし、行くぞ、お前ら」
恐る恐る、前のトラウマを蘇らせないために俺はオウロさんに質問を投げかける。
「……あの〜……オウロさん、どうやって移動を……?」
「どうやってって……『滑走』で滑って行きますよ?」
「んっんん……オウロさん、ゆっくり、馬車で行きませんか?」
「ええ……? ルミナさんはゆっくりな旅がしたいんですか?」
ここは、なんとか良い感じの言い訳を……
「その……お恥ずかしながら……二人との思い出を沢山作りたくてですね……」
「ルミナ様……! このオウロは、感涙を流さざるを得ません!」
「……そうですか、早く馬車を持ってきてください」
「はい! ただいま!!」
ほっ……なんとか言い訳が成功した。
「二人とも、何をやっている? 行くぞ」
馬の居ない馬車に乗ったレオンは出発を急かす。
「お坊ちゃま、ルミナ様から馬車を使って行きたいと要望があります」
「馬車? オウロが引いていけばいいじゃないか。そっちの方が速いだろ?」
当たり前かのように言うレオンに、オウロは筋の通った反論をする。
「し、しかし、お坊ちゃま、それでは私の体力が尽きてしまいます」
「そうか、それじゃあ、休み休み行こう」
だが、速さを優先するレオン。
「左様でございますか……それでは、行きましょう」
そんなレオンに、オウロさんは折れてしまった。
「……オウロさん、なんか……ごめんなさい」
「いえ……気にしないでください。お坊ちゃまの無茶にももう慣れましたから」
オウロも大変だなぁ……可哀想に。
「オウロ、ルミナ。行くぞ」
「はい」




