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第2奉仕 家族が現れました

「固有スキル名『アンキラ』分類、呪縛系。内容、メイドにできる事はなんでもできる」

「…………なるほど?」


『アンキラ』とはなんの事かは分からないが、書いてある内容だけ見れば強そうではある。

 だが、肝心のメイドにできる事なんて、雑用くらいだろう。

 そこで、俺は一つの結論に至った。


「これ、ハズレじゃね?」

「う……嘘だぁぁ……」


 俺だって時を止めて好き放題やったり幸運になってラッキースケベ引いたりしたいんだけど!! なんで俺がされる側なんだよ!!

 おい!! 神!! 聞いてるんだろ!! やり直しだやり直し。俺が飽きるまでガチャを引かせろ!!


 だがしかし、何も反応はない。

 諦めてそのスキルを受け入れて、俺は周囲を見渡す事にした。

 そこで俺は、悍ましい物を見つけてしまった。


「うげっなんじゃこりゃ……」


 それは、裸の女性だ。

 ただ、眠っていて、三角座りの体勢のまま、氷の結晶の中に囚われているように見えた。


「ルミナ〜入るわよ〜」


 扉の前でこの部屋に向かって呼びかける声が聞こえる。

 言葉が分かるのは、転生特典みたいな物だろう。今は一旦、何故か理解できる程度でいい。


 その時、俺はまた急な頭痛に襲われたのだ。

「ぐっ……頭……痛ってぇ……」


 流れ込んできた情報は、案の定、扉の前の者についての情報であった。


 リノル・クラリス。ルミナの母親で今年で23歳。

 優しい母親で、好きな事は料理。

 ただし、彼女の作る料理は劇物。


 …………まぁ、なんていうか……

 いいご趣味をお持ちのようで。


「なに?お母さん」


「お母さん……?どうしたの?ルミナ」

「お母様、でしょ?」

「ご飯、できてるわよ」


 要件は、ただ一つ。俺にご飯ができた事を伝えに来ただけだったらしい。

 彼女が去る後ろ姿を見て、ホッと一息をつく。

 

 もしバレたら、大変なことになりかねない。


 ……うん?バラして良いんじゃないか?


 仮に、もしバラしてみたら自分の子ではないと知ってヒステリックを起こすかも知れない。


 試しに俺は、バラした場合の簡単なシミュレーションをして見ることにした。


「お母さん、俺はあなたの子供、ルミナでは無く異世界から来た転生者なんです」


「なっ……何を言ってるの? ルミナ……あなた、何か辛いことでもあったの? 相談ならいつでもお母様に言ってちょうだい」


 駄目だ。精神病院送りにされる。即落ち2コマかよ。


「ボーッとしてどうしたの?」

「まぁいいわ。早く下にいらっしゃい」


 俺が中々来ない様子に、痺れを切らしたのか、一階から俺を呼ぶ声が聞こえる。


 自称分析家の俺は、勿論この状況にも分析をする。


 いち早くルミナの性格を読み取らなければ……

 失敗はゲームオーバーに繋がる……!!


 これが分析家俺の結論である。


 俺の部屋は2階にあるらしい。この家、この部屋の広さからも相当な金持ちの家と見受けられる。


 俺は下からの呼ぶ声に、階段から落ちないよう、ゆっくりと階段を降りる。


「お姉様、遅い。早く席に着いて」


 誰かをお姉様と呼ぶ、黒髪で短髪、ツリ目で美しく青い瞳を持った幼女。


 …………誰?


 俺は体から流れてくる情報を読み解き、目の前にいる幼女の詳細な情報を知った。


 目の前にいるのはアオ・クラリス。

 どうやら、お姉様とは俺の事だったらしい。


 そして、ルミナの情報から引き出した、大正解の答えとは……


「…………ごめんなさい、アオ」


 そう、この短く淡白な一言だ。

 五歳児らしくね〜可愛げのない性格だぜ……


「……それだけ?」


「はい」


「お姉様はいつもいつもそうやって淡白に──」


「まぁまぁ、良いじゃないか、アオ。さぁ、食事を始めよう」


 アオを抑制した黒髪のオールバック、そして緑色の目をした優しい様な厳しい様な顔をして、軍服の様な物を纏った目の前の男はトルマ・クラリス。この世界での父だ。


 情報の限りでは、優しくユーモア溢れる父親らしいが……どうなんだろうか?

 

 アオがこんなにも俺に辛辣な理由、少しずつ情報から読み取れて来た。

 アオは俺に嫌悪感を抱いているらしい。

 だが、流れてくる記憶はアオと不仲になる様な出来事は何もなかったのだ。


 そんな考え事をする、俺の前に複数の食器が並べられる。


 …………なにこれ。

 見たことない……異世界ならでは過ぎるな。


「……お母様、本日のメニューはなんですか?」


 流石に、謎の物を口に運ぶ勇気は俺にはない。

 だから、作成者に聞くのだ。


「今日はドラゴンのお肉にクラーケンのスープとマンドラゴラと人参のサラダよ」

「ドラゴンのお肉高かったんだから、よく味わって食べてちょうだい」


「はい、わかりました」


 俺には今、悪寒が走っている。

 

「……これ、お母様が作ったのですか?」


「いいえ、いつも料理人が作っています」


 一安心だ。


 リノルが作ってないとわかると、俺の心は一気にワクワクへと変わる。


 ドラゴンの肉!? クラーケンのスープ!?

 本当に、異世界ならではの食事だな……


 日本と外国とじゃ味覚が合わなくて不味い。みたいなのは聞いたことがあるが、はたして、異世界の食文化は日本人には合うのだろうか?


 ………………どれ。

 物は試しだ。食べてみよう。


 この世界では驚くべき事に、現代で見るようなまんまのスプンがあるらしい。

 それで、俺が少し扱い困っているのが、この槍状の食器なのだ。

 考えるに、恐らくは現代で言うフォークなのだろう。


 ……ドラゴンの肉、見た目はただの分厚い肉だな……


「お姉様、食べないの?」


「い、いえ。今口にいれます。アオはせっかちですね」


 震えながらドラゴンの肉を口に運ぶ。

 中々に肉厚だ。噛み切れない。

 こんな美味いの、初めて食ったかもしれねぇ……!!


「お姉様。なんかいつもと違う……」


 ア……アオ!余計な事を……!

 弁解をしなくては……!


「へぁっ。ふ、普通ですよ……?」


「あら、アオも、そう思う?私も今日のルミナは何処か変だと思うのよ」


 リノルまで!


「そうだな……ルミナ、どうかしたのか?悪い夢でも見たか?」


「特に何も見てませんよ。夢なんて見てません」


「どうやら、気の所為のようだな。さぁ、アオ、リノル。冷めない内にご飯を食べ切ろう」


 ほっ……なんとか、怪しまれずにすんだ。

 精神病院行きだと言われたら、たまったものじゃない。


「お父様、このお野菜上げる」


「コラ。アオ、好き嫌いしないの!」


 俺は黙々と料理を食べ進める。

 どうやらこのドラゴンの肉とかクラーケンのスープとか一見ゲテモノに聞こえる物は俺の胃袋を掴んだらしい。

 止められない止まらない。


「ルミナ。御行儀が悪いわよ」


「あっごめんなさい、お母様」


 また注意された。どんだけ厳しい家なんだ……?


 そこへちょうど良く、ゲームのチュートリアルの様に再び俺の頭へ情報が来る。


 クラリス家。有能なメイドを育て上げてきた名家。作法に関してとんでもなく厳しい。


 ……なるほど。だから俺の食べ方が汚くて注意したのか。

 このルミナと言う娘。作法も礼儀も完璧なのか……


 育て上げられすぎだろ! まずいな……礼儀とか作法は情報が出るが……

 応用したり実践したりが難しいぞ……


「ご…………ご失態を失礼しました」


「ルミナ、言葉遣いが変よ。やっぱり熱でもあるのかしら」

「やっぱり熱でもあるのかしら……ちょっとおでこ出して」


「へ?あっ……はい」


 リノルは髪を上げた俺を見るやいなや、すぐさま額に額をくっつけた。


 美女にこんな事されて、男ならば誰だって顔は赤くなる。

 勿論それは俺も例外ではなかったのだ。


「……やっぱり熱があるわ。今日は暖かくして寝てなさい」


「は、はい!」


 だが、俺を転生者とは知らないリノルはその熱を病気だと勘違いしたようだ。

 俺は幸運な事に、少しだけの一人の時間を手に入れた。


 心の中でガッツポーズを決め、ここから先に困らない様に、先に情報を引き出しておく。


 酷い頭痛に悩まされながらも、俺は鏡を見つけ、思う。

 そう言えば今の俺はどんな姿なんだろうか?


 美少女である事を願いながら、鏡を覗き、姿を確認する。


「おお……おおおお……!! これが……これが、今の俺か……!!」

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